学習塾の閉校・譲渡手続き完全ガイド|不動産賃貸契約・FC加盟解約の注意点とスケジュール

早いもので今年もあと2か月で終わりです。
※今回の記事は、学習塾の譲渡・・・または閉校を考えていらっしゃるオーナー様向けの内容です。
学習塾の運営において、撤退や事業譲渡という選択肢が頭をよぎったとき、多くのオーナーは、どのような一歩を進めていければいいのかわからない状態になってしまいます。
「今の生徒をどうするか」
「講師や社員にはどうやって言おう」
「ここを引き払うのにどうやってやるんだろう」
「売却価格をいくらにするか」
「売れるのだろうか、売れなかったらどうしよう」
「連絡はどこに最初にすべきだろうか」
「誰に相談したらいいだろう」
といった考えが、頭の中にいろいろよぎってくると思います。しかも昨日と同じ自分を装いながら講師や生徒とあいさつを交わし、業務は行うもののどこか心が乗り切れない日々が続いてしまいます。
とても生々しいお話ですが、CROSS M&AのK部長も皆さんと同じ経験をしていますので、想像でモノ言っているわけではありませんし、皆さんのお気持ちは重々理解しております。
現場を知る立場から断言すると、事業承継や閉校を検討し始めた段階で最も優先して確認すべきなのは、少々ドライかもしれませんが、売却額の交渉でも生徒募集の締め切りでもありません。
契約書の中に潜む「期限」と「費用」のルールの確認です。
ここを誤ると、事業譲渡によってまとまった資金を得られたはずが、想定外の更新料や解約違約金、原状回復費用によって相殺され、最悪の場合は手元に一銭も残らないばかりか持ち出しが増えてしまうという事態に陥ります。
限界を感じて次のステップへ進むと決めたなら、まずは書類棚の奥底に眠っている契約書を引っ張り出すことから始めましょう。
本記事では、学習塾の譲渡・閉校を検討する際に必ず押さえるべきチェックポイントと、失敗しないためのスケジュール戦略について詳しく解説します。
■ 1. 最初に引っ張り出すべき「2つの契約書」
学習塾の事業譲渡や閉校を進めるにあたり、第一に着手すべきは以下の2つの書類を手元に準備することです。
・フランチャイズ(FC)加盟契約書(FC加盟塾の場合)
・不動産賃貸借契約書および重要事項説明書
日頃の教室運営に追われていると、開業時に交わした契約書をじっくり読み返す機会はほとんどありません。書類棚の奥底にしまい込んであるケースが一般的でしょう。しかし、これらの契約書に記載されている文言一つひとつが、今後の撤退・譲渡コストを大きく左右します。
書かれている条項を確認し、少しでも解釈に迷う文言や不明な点があれば、CROSS M&Aまでご相談ください。
弁護士などに相談するまでのことではありませんので、
必要なコスト以外は安易にかけないようにしましょう。
また、CROSS M&Aにご相談されたとしても守秘は当然のこと、費用はかかりません。ご安心ください。
さて、書類を準備出来ましたら、まずは内容をじっくり確認しましょう。
■ 2. 不動産賃貸契約の内容とFC契約内容チェック
事業譲渡や閉校において、最もトラブルになりやすく、かつ金銭的ダメージが大きいのが不動産賃貸契約です。
特に注意しなければならないのが
「更新時期」
「解約予告期間」
「原状回復(スケルトン戻し等)の規定」
の3点です。
具体例を挙げて説明します。
例えば、3年ごとに更新が必要な賃貸物件で教室を運営しているとします。今年がちょうどその3年目の更新年にあたるとしましょう。
オーナー自身は「来年の2月を目処に第三者へ譲渡を完了させたい(あるいは閉校したい)」と考えていたとします。しかし、契約書をよく確認してみると、今年の11月が不動産の更新月に該当していた!!
この場合、どのような問題が発生するでしょうか。
11月に数十万円単位の更新料を支払い、そのわずか3ヶ月後の2月に譲渡や撤退を行うことになります。譲渡時期が数ヶ月ズレるだけで、払わなくても済んだはずの更新料を丸々支払わなければならず、手出しの資金が大幅に増えてしまいます。
さらに厄介なのは、FC加盟塾の場合、不動産契約とFC加盟契約の締結時期が近いことが多い点です。
つまり、不動産の更新時期とFC契約の更新時期がほぼ同じタイミングで押し寄せてくる可能性があるということです。
今が10月、更新料を支払わなくて済むようにするためには、いますぐ撤退、いますぐ解約をしたいところですが・・・・・おそらくそれは、契約上も実務処理上も無理だと思います。
譲渡にしても撤退を決めて閉校するにしても一か月でやり切るのは、会社まるごと譲渡がとんとん拍子で進んだとき・・・ぐらいですが、それでも1か月で仕上げるのは、どのようなプロが携わっても時間オーバーになってくるでしょう。
そして、、、
仮に事業譲渡が成功し、譲渡益として数十万円〜数百万円を得られたとしても、直前に不動産の更新料とFCの更新料(あるいは解約費用)を二重で支払っていれば、手元に残る利益は大幅に削られます。場合によっては「譲渡したのにトータルで赤字」という本末転倒な結果にもなりかねません。
このように書きますと、ずんと重い気分になってしまうかもしれません。
しかしながら、ここで現実を知っておいてもらわないと、かえって譲渡をご検討されている方は、いろいろな意味で損をしてしまうのです。
どうか我慢して読み進めてください。
■ 3. 譲渡・撤退を決断した後に組むべき4ステップのスケジュール
契約書の内容を把握したら、次に行うべきは「逆算によるスケジューリング」です。感情や希望的観測で動くのではなく、契約上の期日から逆算して明確なタイムラインを設定します。
◆ ステップ①:譲渡打診ができる「ギリギリの月」を設定する
まずは、事業譲渡に向けて買手を探したり、FC本部やマッチングプラットフォームを通じて打診を行える限界の月(期限)を設定します。だらだらと買手を待ち続けるのは、固定費が発生し続けるため非常に危険です。
再度、ここで言うところの「限界の月(期限)というのは、あくまでも買手を探す限界です。
買手候補が見つかった後でも打ち合わせ、現地見学、トップ面談、DD実施、基本合意書、譲渡契約書、不動産契約の前の保証会社の審査、FCであればその契約、実際の不動産契約、いろいろな契約の解約と新規契約など、
売手であるオーナーと、買手がそれぞれに動き、それぞれに連絡ををして、手続きを進行させる必要があるのです。
買手を見つけるまでの期間、及びその契約までの期間、そして各種契約を解約したり新規契約したりする期間、引継ぎの期間と、どう考えても一か月で成しえるものではありません。
この段階で、もし来年の2月には・・・または3月の年度末には・・・
そのようにオーナーが考えるお気持ちはわかります。
しかしながら、以下もご確認いただければ、一瞬にして目が覚めると思いますが、大急ぎでやらないと間に合わなくなってしまいます。
◆ ステップ②:譲渡不成立時の「撤退(閉校)月」を設定する
万が一、設定した期限までに買手が見つからなかった場合、いつの時点で譲渡を諦め、完全に閉校・撤退するのかという「撤退月」をあらかじめ決めておきます。
出口(撤退日)を明確にしておかなければ、損切りができずに赤字を垂れ流すことになります。
これがとても難しい判断になります。
譲渡なのか、閉校なのか、
閉校という判断の場合には、閉校に向かってどんどん処理を進めていく内容になるのですが、
譲渡になるかもしれないし、ダメだったら閉校・・・
このパターンです。これが最も難しく、神経が磨り減る思いをされるかもしれません。不動産契約の解約申し入れは、原則、一度出したら「やっぱり解約しない」ということは出来ません。
例えば、3か月前通告であれば、しっかりと3か月前に不動産会社が定める方法(たいていは書面)で通告しておかなければいけません。
同時に、「もしかするとこの教室が譲渡になるかもしれません」ということも添えるのですが、事業譲渡の場合、巻き戻し契約といって次の人とは新規契約を結ぶ必要があります。
会社まるごとの株式譲渡の場合は名義変更措置が取れるのですが、事業譲渡の場合は、新規になります。
つまり、旧オーナーは解約、新しい方(個人でも法人でも)は新規契約を締結することになります。
そうすると、
「次の人はどんな人だろう」
「審査が通る人(法人)だろうか」
「支払いは大丈夫だろうか」
これは不動産会社及び物件オーナーが懸念するところです。
したがってほとんどは保証会社の審査を通していくことになります。保証会社の審査は、新規で申込を行う次のオーナーが、不動産会社に「申込書」を提出しなれば、審査そのものが始まりません。
こんな感じの人で、こういう名前で、こういう連絡先で、年収はこのぐらいで、資産はこんな感じ、、、といいうような口頭で言ってくることで、はいわかりましたと審査する保証会社はどこにもありません。
さらに不動産契約には連帯保証人を求められるケースがとても多いため、
最初から関門が大きく感じられることでしょう。
ここでお気づきかと思いますが、不動産契約の「申込をする」ということは??そうです。話が相当煮詰まって基本合意したあと、もう譲渡契約になるという段階じゃなければ、誰も申込などしません。
ところが、この不動産契約は、上記のとおり、スムーズにいかないケースもあるのです。だからこそ、解約の通告と新しい人が見つかりました!というタイミングが肉薄した状態であるならば、新しい買手候補の人の不動産審査が通り、保証人がちゃんと見いだせない限りは、契約がなされないため、最終リスクとして考えておいたほうが無難なのです。
この観点からしても、解約であろうと、新しい人への譲渡であろうと、相当早く着手する必要があるな・・・・
ということをご理解頂けたかと存じます。
◆ ステップ③:不動産会社への解約申し入れ時期を確認・交渉する
撤退月が決まったら、「その撤退月の何ヶ月前に不動産会社へ解約申し入れをする必要があるか」を確認します。
一般的には1ヶ月〜半年前とされていますが、店舗・事業用物件の場合は2か月前~3ヶ月前通達と言う条件が多くみられます。
中には、6ヶ月前通達という物件もあります。
ただ、CROSS M&Aが今まで多くの不動産契約を実際に結んできたり、M&A譲渡案件の仲介で見てきた感触としては、6か月前というのは、2つありましたが、
一つはM&Aの決定が不安定な中で4か月前と変更してくれた事例もあります。
学習塾で解約予告は、6か月前というのは、多すぎです。本来は、1か月から2か月ぐらいが普通だと思います。
解約予告が「6ヶ月前」となっている場合、例えば2月に撤退したいのであれば、前年の8月までに解約通知を出さなければなりません。この確認が遅れると、退去後も数ヶ月分の家賃を払い続けなければならなくなります。
最初に不動産契約を結んだ段階で解約予告期間の交渉をしていない場合、ここで大きな損失を被るリスクが高まります。
ただし、ここで諦める必要はありません。上記のような事例もありますので、事情を正直に不動産会社やオーナー(賃貸人)に説明し、「解約予告を6ヶ月前から3ヶ月前に変更してもらえないか」とダメ元で交渉してみる価値は十分にあります。
次に入居するテナントの目処が立っている場合や、誠意を持って相談することで、柔軟に対応してもらえるケースもあります。
◆ ステップ④:FC本部への申し入れと相談を行う
不動産と並行して、FC本部への申し入れも進めます。FC契約書には厳密な違約金規定や予告期間が記載されていることが多いですが、実際の運用においては、FC本部はそこまで杓子定規な対応ばかりではありません。
加盟校が困窮して倒産するよりは、円滑に事業譲渡を行ってブランドの看板を残してもらうか、整然と閉校してもらう方が本部にとってもメリットがあります。早めに相談を持ちかけることで、加盟契約の解除時期や更新料の免除、事業譲渡先のあっせんなど、柔軟なサポートをしてくれるケースは少なくありません。
ここでのポイントは、やはり「早めに相談を持ち掛ける」ことです。
例えば、心の中でもやもやしたものがありながら、更新月を迎えて本部が言うままに請求額を納めたものの、そのわずか一か月後には、やはり譲渡か閉校しようという考えて至った場合は、更新料の支払いも何十万でしょうから、損です。
この観点からもFC本部への打診「も」相当早くしておくべきです。
■ 4. 撤退・譲渡の成否を分ける「判断の速さ」
学習塾の運営に限界を感じているとき、多くの経営者は精神的にも肉体的にも疲弊しています。そのため「契約書の確認」のような地味で面倒な作業を後回しにしがちです。
しかし、後回しにすればするほど、更新月が近づき、解約予告のタイミングを逃し、選択肢が狭まっていきます。
限界を感じたときこそ、冷静になって以下の手順を踏んでください。
・書類棚からFC契約書と不動産賃貸契約書(重要事項説明書)を取り出す
・更新月、解約予告期間、原状回復義務の内容を正確にノートに書き出す
・譲渡期限、撤退月、解約通知日のタイムラインを引き、逆算して行動する
これらは学習塾の撤退・譲渡における「絶対の鉄則」です。
ちなみに、
事業をたたむ、あるいは誰かに引き継ぐという決断は決して敗北ではありません。
次のステップへ健全に進むための重要な経営判断です。
だからこそ、契約の仕組みに足をすくわれて余計な資産を失うことだけは絶対に避けてください。
まずは今日、手元にある契約書を開くことから始めましょう。
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