知らないと破談も?学習塾譲渡で不動産会社への連絡が遅れると危険な理由と対策
2026年05月13日
譲渡
こちらの記事は、これから学習塾の譲渡を検討されているオーナー向けです。買い手の方にもおすすめです。

学習塾のM&A(合併・買収)を検討する際、多くの経営者が指導カリキュラムの整理や生徒数の確認、財務諸表の整備に注力します。
しかし、もしあなたが売り手(譲渡側)の場合は、なるべく早く不動産契約がどうなるのかを確認していくことをお勧めいたします。場合によっては成約を左右するぐらいの隠れた重要項目が不動産契約の中に潜んでいる可能性があるからです。
特に学習塾は立地が命のビジネスであり、校舎の賃貸借契約をスムーズに引き継げるかどうかが、M&A全体の成否を分けると言っても過言ではありません。
この記事では、学習塾の譲渡準備において、なぜ不動産会社(家主)への連絡を早めに行うべきなのか、そして実際の物件契約がどのような仕組みで動くのかを徹底的に解説します。
1. なぜ不動産会社への連絡を早めるべきなのか
M&Aのプロセスにおいて、不動産会社やオーナーへの打診はタイミングが非常にデリケートです。しかし、結論から言えば「専門家と相談した上で、早期に方針を固め、適切なタイミングで連絡を入れる」ことが不可欠です。
CROSS M&AのK部長は、今までたくさんの不動産賃貸契約を個人、法人で結んでまいりました。不動産の数だけ、物件オーナーの数だけ多様です。
不動産は「建物」で物体ですが、相手にするのは人間です。
そういう観点で言えば、賃貸借契約にしても承継における契約にしても、はたまた途中の更新にしてもやはり物件オーナーの人間性がよくあらわれると言っても過言ではありません。
そして時には、物件オーナーは癖のない人でも、仲介不動産会社やその担当、管理会社として名をはせている仲介会社やその担当、それらがイニシアティブをもって物件オーナーを焚きつけるケースも往々にしてあるのです。
この記事を見て、「いやそんなことはない」と反論述べる不動産会社もあるかもしれません。
しかし、事実は事実。
何故ならこれだけ多くの不動産契約を結んできた過去と、M&A案件で不動産契約の内容を見てきた過去そして今の学びこそが事実の証明であります。
気を付けなくてはなりません。
譲渡されるオーナー様、買収する買い手様、どちらも気を付けましょう。
さて、不動産関連のリスクについて御伝えしていきます。下記しますが、あまりに理不尽な場合は、恐れることはありません。堂々と主張していいですし、特に譲渡側の売主様、つまり案件のオーナー様が相当不利な内容に陥れられそうなときにはこちらに相談ください。
強烈な専門家をご紹介いたします。
さて、それでは不動産関連の本論です。
承諾が得られないリスクの回避
賃貸借契約書には、譲渡禁止条項や信頼関係の破壊を理由とした解除権が含まれています。
特に、運営主体が変わる(名義変更や株主変更)場合、家主の承諾が必要になるケースが大半です。
物件の申込書を書いた経験のある方であればわかると思いますが、「使用用途」という項目もあり、例えば今まで、学習塾だったけれど、明日から倉庫業をやりたい・・・というようなことは出来ません。
諸々、しっかりと確認していかないと直前になって家主から首を縦に振ってもらえなければ、M&Aそのものが白紙に戻ってしまいます。
色々な条件を提示してもいいのですが、結局は物件オーナーがOKかどうかの話です。
賃貸条件の見直しを防ぐ
買い手候補が見つかってから家主に連絡した場合、足元を見られて賃料の値上げを要求されることがあります。早い段階で、これまでの良好な関係性を強調しつつ、将来的な承継の可能性を匂わせておくことで、現状の条件を維持しやすくなります。
賃料を上げやすいと思っている家主も多いです。
「賃貸借契約 トラブル 家賃」などと入力して検索してみてください。相当多くのトラブルが発生していることが一目でわかります。
特にM&Aの承継の場合は、借主が変わるわけですから、そのタイミングで新家賃などを設定されることもあるのです。
これは、M&Aを手掛けている中で、けっこう厄介な問題です。
したがって、なるべく早く、物件契約をした不動産会社の仲介担当者などに連絡を入れて、譲渡することになった経緯や時期的なものをあらかじめ報告しておくと同時に、事業承継するので今までと同じ条件でやってほしい・・・ということを伝えておいたほうがいいのです。
敷金の返還と差し入れの調整
学習塾の物件では、多額の敷金や保証金が預けられていることが一般的です。譲渡の際、これらを一度解約して買い手が入れ直すのか、あるいはそのまま引き継ぐのかの調整には時間がかかります。
通常は、譲渡の際は、
今まで借りていたAさんに敷金や保証金は返還されて、新しく借りるBさんから敷金や保証金を預けてもらう手順になります。
中には、敷金や保証金のやり取りをAさんとBさんだけで行ってくださいという場合もあります。これは不動産会社からの指示を受けて対応することになりますが、譲渡をするAさん、Bさんの意向を聞いてくれるパターンもあります。
いずれにしても早めに伝えておくことで、不動産会社の仲介担当も協力的に動いてくれることでしょう。
2. 学習塾M&Aにおける物件契約の3つのパターン
譲渡の手法(株式譲渡か事業譲渡か)によって、物件契約の扱いは大きく異なります。
パターンA:株式譲渡の場合
会社の株主が代わるだけで、契約主体である「法人」はそのまま存続します。
- メリット:原則として契約書の書き換えが不要な場合が多い。
- 注意点:契約書内に「経営権の変更(チェンジ・オブ・コントロール条項)」に関する規定がある場合、事前に家主の承諾が必要です。
パターンB:事業譲渡の場合
塾の事業(生徒、講師、設備、場所)を別の法人や個人に売却します。
- メリット:不必要な資産を切り離して譲渡できる。
- 注意点:契約主体が変わるため、新規に賃貸借契約を結び直す(新規契約)か、契約上の地位を承継する手続きが必要です。
学習塾の場合は、多くは、パターンBです。事業譲渡という形式をとりますので、不動産の賃貸借契約においては、大方は新規契約になります。
3. 物件契約の引き継ぎに関する比較表
譲渡の形式によって、手続きの煩雑さやコストがどう変わるのかを整理しました。
| 項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
| 契約主体の変更 | なし(株主が変わるのみ) | あり(旧運営者から新運営者へ) |
| 不動産会社への承諾 | 条項によるが、報告で済むことが多い | 必須(拒否される可能性もゼロではありませんが、学習塾という業種は許可されやすいです) |
| 名義変更手数料 | 不要な場合が多い | 承諾料(名義書換料)が発生することがありますが、稀です。 |
| 敷金・保証金 | そのまま引き継がれる | 預け直し、または承継合意が必要 |
| 保証人の変更 | 新オーナーへの変更が必要 | 新規契約に伴い設定が必要 |
| 賃料改定のリスク | 低い | やや高い(新規契約扱いになるため) |
4. 連絡が遅れた場合に発生するトラブル事例
準備を怠り、不動産会社への連絡を後回しにしたことで発生する代表的なトラブルを紹介します。
承諾料の高騰
通常はないケースですが、大型案件の場合には気を付けましょう。
M&Aの最終合意間近になって家主に伝えたところ、足元を見られて数十から数百万円単位の承諾料(名義書換料)を請求されるケースがあります。これが原因で、譲渡価格の調整が必要になり、売り手の手残りが減ってしまう事態を招きます。(※繰り返しますが、あまり例はありません)
原状回復義務の押し付け合い
これは、けっこうあるケースです。
特に売り手と買い手が何度か会ったり、電話やその他ツール、メールなどでやり取りをしていくうちに、お互いの主張が出てくるためです。
学習塾は内装が特殊な場合が多く、撤去費用がかさみます。譲渡の際、どの時点までの内装を誰が責任を持つのかを家主と合意しておかないと、退去時(数年後)に買い手と家主の間でトラブルに発展することがあります。
つまりこういうことです。
Aさんが今までの物件を借りていた人です。Bさんは後から承継で事業を受け継いで不動産契約をする人です。事業そのものはAさんからBさんに移動したので、当然不動産の借主はAさんからBさんに変わります。
しかしながら、万が一Bさんが教室をクローズすることになった場合、Bさんに対して原状回復費用がかかります。
とはいえ、事業譲渡をしたのですから、これは当然と言えば当然なのですが、Bさんは納得がいかないかもしれません。
そういうもめごとです。
この場合は、原状回復費用はやめてみないとわからない費用ですから、譲渡段階では誰もわかりません。
しかしながら、契約書を見ると原状回復義務があると明記されています。
不動産における原状回復・・・・これまたトラブルがとても多いのです。借主は返ってくると見越していた保証金は敷金から原状回復費用名目でとられ手元に返金されるお金がほとんどない・・・などのケースもあるのです。
この場合、明らかに戻ってくるお金が少ないと感じたらやはりこちらに連絡ください。
賃貸借契約の解約通知期間
一般的なオフィスや店舗の契約では、3ヶ月〜6ヶ月前の解約予告が必要です。事業譲渡で一度解約して結び直す場合、この予告期間の縛りがネックとなり、希望する譲渡日に間に合わないことがあります。
5. ステップ別:不動産会社との交渉スケジュール
成功するM&Aのために、どのような時間軸で動くべきかを確認しましょう。
ステップ1:契約書の徹底確認(譲渡検討開始時)
まずは手元にある賃貸借契約書を隅々まで読みます。
- 名義変更に関する条項はあるか?
- 代表者が変わる際の通知義務はあるか?
- 敷金の返還に関する規定はどうなっているか?
ステップ2:アドバイザーとの協議(譲渡6ヶ月前〜)
M&A仲介会社や専門家と、どのタイミングで家主に打ち明けるかを相談します。地域密着型の塾の場合、家主との個人的な信頼関係が強いため、経営者の口から直接伝えるのが効果的です。
ステップ3:内諾を得る(譲渡3ヶ月前〜)
買い手候補が絞り込まれてきた段階で、家主に「後継者にこの場所を引き継ぎたい」という意向を伝えます。この際、買い手企業の信用力(財務状況や他校舎の運営実績)をプレゼンできる資料を用意しておくとスムーズです。
買い手が個人の場合も多いです。
その際も物件オーナーが安心するような個人の経歴、履歴などを資料にして渡しておくなどすると、非常にいいです。
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【実例(実話)】
これはCROSS M&AのK部長の実例です。
物件契約時に、どうしても家賃交渉と保証金減額交渉がしたかったため、申込書を差し入れた後に、wordで自分自身の簡易的な履歴書とか経歴書を作成し、尚且つ「お願い事項」というタイトルの書面を不動産仲介会社の担当者を通して、「これは物件オーナー様にお渡しください」という方法を取りました。
結論は、結果は9割認めてくれた内容になりました。
(実際はほぼ全部です)
ダメ元ではありましたが、きちんと誠意をもってお伝えすることが出来たことで、物件オーナー様も協力してくださいました。
これは非常に助かる案件でした。
ステップ4:三者間合意(譲渡1ヶ月前〜)
売り手、買い手、家主の三者で、契約の承継または新規締結に関する合意書を交わします。
6. 学習塾特有のチェックポイント
学習塾ならではの、不動産に関わる注意点も忘れてはいけません。
駐輪場と共有スペース
塾の運営には駐輪場の確保が不可欠です。物件契約とは別に、近隣の土地を借りている場合や、ビル共用部の使用許可を得ている場合は、それらもセットで引き継げるか確認が必要です。
看板設置の権利
壁面看板や屋上看板の権利が、現在のオーナーの「個人的な好意」で安く借りられている場合があります。運営主体が変わった途端、正規の看板料を請求されるリスクがあるため、書面での確認が重要です。
騒音・振動問題
これまでに近隣住民や他のテナントとトラブルがなかったか、あった場合にどう解決したかの情報を家主に共有しておくことで、買い手への信頼を担保できます。
7. まとめ:不動産はM&Aのインフラである
学習塾のM&Aにおいて、建物は単なる箱ではなく、生徒が集まる場所という経営資源そのものです。
不動産会社への連絡を早めに行うことは、リスクヘッジであると同時に、買い手に対する誠実な情報開示でもあります。物件に関する不安要素を早期に取り除いておくことで、買い手は安心して買収を決断でき、結果として高値での譲渡やスムーズな承継につながります。
もし、今の契約内容がどうなっているか不安であれば、まずはM&Aの専門家に契約書のチェックを依頼することから始めてください。建物という土台が安定してこそ、教育のバトンは次へと繋がっていくのです。
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