学習塾譲渡の不動産契約ガイド!事業承継を成功させる敷金・居抜きの注意点と用語集

学習塾譲渡
不動産賃貸借契約承継
売り手が買い手に事前明示しておくことで
安心につながる!

学習塾を事業譲渡されるオーナー様向けの記事です。

これから事業譲渡を考えるオーナーにとって、意外と忘れがちな不動産賃貸契約についてのことをテーマに記事を書いてみました。

まずはじめに、学習塾は立地が重要と言われます。あまり立地に左右されない業種もありますが、こと箱物を構えた学習塾は、大なり小なり立地は影響があります。

現在の場所でそのまま変わらず営業を続けられるかどうかが、譲渡を円滑に進めるための大きな鍵です。

そこで今回は、これから塾の譲渡を検討されるオーナー様に向けて、買い手様や大家様への配慮も含めた不動産契約の承継のコツを、ケーススタディ形式で分かりやすく解説します。

後半には、普段あまり目にする機会の少ない不動産用語の解説表もご用意しましたので、ぜひ参考にしてください。

学習塾譲渡における不動産契約承継の基本

最初に譲渡形式について簡単に説明いたします。塾の譲渡方法には大きく分けて「株式譲渡」(持ち分譲渡)と「事業譲渡」の2つがあり、これによって不動産の扱い方や配慮すべきポイントが変わってきます。

通常、個人の方が運営している学習塾は事業譲渡です。

株式譲渡というのは、文字通り、会社まるごと譲渡ということですから、学習塾の場合は多くが事業譲渡になるのではないかと思われます。

株式譲渡の場合は入居している法人の名義自体は変わらないため、賃貸借契約も原則としてそのまま継続されることが多いです。

ただし、契約書の中に「経営陣や主要な株主が変わる場合は事前に大家様の承諾が必要」という内容(チェンジ・オブ・コントロール条項)が含まれていることがあります。

その場合は、事前に大家様へ丁寧なご説明をしておくことで、その後の関係がより良好になります。

一方、個人事業主として経営されている塾や、複数ある校舎のうち一部だけを譲り渡す「事業譲渡」の場合は、賃貸借契約の主体の名義が変わることになります。

法律上、大家様の承諾なしに賃借権を他人に譲り渡すことはできないため、オーナー様から大家様や管理会社様へお話を繋ぎ、新名義人様への契約の切り替え、または新規での結び直しをサポートしていく形になります。

それでは、譲渡側のオーナー様がどのような点に気を配って進めるべきなのか、スムーズな引き継ぎにするために、どの点に注意すべきなのか、具体的な事例を見ていきましょう。

ケーススタディで学ぶ!オーナー様から始める円滑な不動産承継

ケース1:大家様への早期の相談で、買い手様の初期費用を抑えてあげられた例

個人経営の集団指導塾を運営してきたAさんは、ご自身の健康状態と年齢面を考えて、大手の学習塾を運営するB社に塾を事業譲渡することにしました。

Aさんは交渉が本格化し、お相手がB社様に絞られた段階で、まずは長年お世話になったビルの大家様のもとへ直接足を運びました。

「実は自身の健康上の問題と今の年齢から、信頼できるB社様に、この大切な塾と生徒たちを引き継いでいただくことになりました。B社様もこの場所をとても気に入っており、ぜひ長く使わせていただきたいと申しております」と、誠意を持って事前にお伝えしたのです。

大家様は突然の報告に驚くこともなく、「Aさんがそこまで太鼓判を押す企業様なら安心ですね」と快諾。

本来、名義が変わる場合は家賃の値上げや敷金の新規積み増しを求められることもありますが、Aさんの事前の丁寧なフォローのおかげで、B社様は従来の家賃のまま、スムーズに契約を引き継ぐことができました。

オーナー様が気を付けてあげたいポイント

事業譲渡での名義変更は、大家様のご理解が何よりも大切です。
大家様も人間ですから、やはり差し迫った時間で言われるよりは、事前相談があったりきちんとしかるべき挨拶があったほうが、気分的にも違うと思います。

買い手様が決まってから事務的に報告するのではなく、早い段階で「大切な塾を未来へつなぐための前向きな選択であること」をオーナー様自らの言葉で大家様へお伝えしておくと、大家様も安心して買い手様を迎え入れることができます。

結果として買い手様の負担を減らし、譲渡全体の成立を大きく手助けすることにつながります。

意外に思われるかもしれませんが、この事前相談連絡というのは、重要度が高いのです。

また、大家様とのやり取りが普段ない場合には、賃貸借契約を結んだ不動産仲介会社への連絡をすることになります。こちらも上記同様、早めに礼儀をもって接することで、スムーズに進めるための必須事項だと思っていいでしょう。

ケース2:敷金・保証金の引き継ぎを契約書に明記し、お互い納得の決済をした例

法人塾を経営するC社は、特定の1校舎を同業のD社に事業譲渡することになりました。大家様からも名義変更の承諾をもらい、手続きは順調に進んでいるように見えました。

この物件を借りる際、C社は大家様に保証金(敷金)として100万円を預けていました。C社のオーナー様は「名義を変えるだけだから、この100万円の返還を受ける権利をそのままD社様に譲り渡し、その代わりにD社様から弊社に100万円を支払ってもらえば、お互いに資金移動が一度で済んで楽だろう」と考えました。

そこでオーナー様は、事業譲渡契約を交わす前に「不動産保証金の取り扱い」という項目を契約書にしっかり盛り込み、D社様にもその旨を事前に共有しました。管理会社様にも相談し、「C社への返還請求権をD社に譲渡する」という覚書を三者間で作成したため、大家様から一時的に返金を受ける手間を省き、D社様も新規に大きなキャッシュを用意することなく、スマートに引き継ぎが完了しました。

オーナー様が気を付けてあげたいポイント

敷金や保証金は、通常は一度解約して売り手に戻り、買い手が新たに差し入れるというステップを踏みますが、これには時間も手間もかかります。譲渡側のオーナー様から事前に「保証金の権利をそのまま引き継ぐ形にしませんか」と買い手様や大家様に提案して契約書に書いておくことで、買い手様の準備資金の負担を和らげ、手続きを一段と効率化してあげることができます。

ケース3:居抜き譲渡での原状回復義務の範囲を明確にし、次のオーナー様を安心させた例

個別指導塾を経営するEさんは、自習室のパーテーションや受付カウンター、高価なエアコンなどをそのまま残す「居抜き」の状態で、新しく塾を開きたいFさんに事業譲渡することにしました。Fさんにとっては初期の内装工事費用が浮くため、大変ありがたいお話でした。

ここでEさんは、「自分が退去するときに、どこまで元に戻さなければいけないのか」という原状回復義務が、そのままFさんに引き継がれることに気づきました。もし将来、Fさんがここを退去する際、Eさんが最初に行った大規模な工事の解体費用までFさんが背負うことになると、少し気の毒です。

そこでEさんは、大家様との間で契約承継の書類を交わす際、「F様が将来退去される際の原状回復の範囲は、今回の居抜きで引き継いだ状態をベースとする」という特約を、大家様に相談して入れてもらいました。

そこまでは難しくても、「最初のスケルトン状態に戻すにはこれくらいの費用感が目安になります」という情報をFさんに事前に伝えておきました。Fさんはリスクを正しく把握でき、安心して塾を引き継ぐことができました。

オーナー様が気を付けてあげたいポイント

居抜き譲渡は双方にメリットが大きい方法ですが、将来の退去時のルール(原状回復)をあらかじめクリアにしておくことが、次のオーナー様への最大の優しさになります。元の賃貸借契約書を確認し、どこまでの義務が引き継がれるのかを買い手様にしっかりと共有してあげることで、買い手様は将来の計画が立てやすくなり、オーナー様への信頼感もさらに高まります。

知っておくと交渉がスムーズになる不動産用語の解説表

塾の譲渡を円満に進めるためには、契約書に出てくる専門的な言葉の意味を正しく理解し、買い手様や大家様と同じ目線で会話ができるようにしておくことが大切です。特に重要な用語を一覧にまとめました。

用語意味と解説オーナー様が意識してあげたいポイント
重要事項説明書物件の法的な制限や契約の重要な条件について、不動産会社が説明する書類。事業譲渡で新しく契約を結び直す際に発行されます。塾の看板の出し方や夜間のルールなど、買い手様が困らないよう事前に教えてあげると親切です。
賃貸借契約書貸主(大家様)と借主(オーナー様)の間で、家賃や期間などのルールを定めた正式な契約書。譲渡の計画を立てる際、まずはこの契約書をお手元に用意し、「譲渡に関する事前の承諾規定」がどうなっているかを確認することから始まります。
敷金(しききん)家賃の滞納や退去時の修繕に備えて、事前に大家様に預けておく担保金。原則として退去時に戻ってきます。譲渡時にこの敷金をどう処理するか(買い手様に買い取ってもらうか等)を、譲渡契約の中で早めに提案してあげましょう。
礼金(れいきん)物件を借りる際に、大家様に対して感謝の意を込めて支払う金銭。退去時に戻ってくることはありません。新規に契約を結び直す場合、買い手様に新たに礼金が発生することがあるため、大家様への事前の条件確認が重要になります。
前家賃(まえやちん)翌月分の家賃を、前月の末日までに前払いで支払う一般的な事業用物件の仕組み。月の途中で塾の譲渡(引き渡し)を行う場合は、その月の家賃を日割りで計算し、買い手様と綺麗に精算できるよう準備しておきます。
保証金(ほしょうきん)主に店舗やオフィスなどの事業用物件で使われる、敷金と同じ性質の預け金。金額が大きくなる傾向があります。解約時に一定割合が差し引かれる「償却(解約引き)」の特約がないか確認し、譲渡時の精算金額の参考にします。
原状回復(げんじょうかいふく)退去する際に、自分で設置した内装や設備を撤去し、入居前の状態に戻す義務のこと。買い手様が将来困らないよう、自分がどこまで内装を入れたのか、どこまで戻す必要があるのかの境界線を伝えてあげましょう。
更新(こうしん)契約期間が終わった後も、そのまま契約を延長して入居を続けること。譲渡してすぐに更新時期が来ると買い手様が更新料の支払いで慌ててしまうため、次の更新がいつなのかを伝えておく必要があります。
スケルトン内装や設備が一切なく、建物の骨組み(コンクリート)がむき出しになった状態のこと。退去時の義務がスケルトン戻しである場合は、居抜きで譲渡する際にもその旨を買い手様に一言伝えておくと親切です。
居抜き(いぬき)前の入居者が使っていた内装、机、椅子、黒板、エアコンなどの設備を残したまま、次の人が引き継ぐこと。塾の譲渡では最も多い形です。譲る設備の一覧(資産リスト)を作ってあげると、買い手様は大変助かります。
造作譲渡(ぞうさじょうと)居抜き物件において、前の入居者が施した内装や設備(造作)を、次の入居者へ譲り渡すこと。大家様との契約とは別に、売り手様と買い手様の間で「どの設備をいくらで(または無償で)譲るか」の合意書を作ります。
チェンジ・オブ・コントロール条項法人の株主や経営陣、支配権が変わった場合に、契約相手への通知や承諾を義務付ける条項。株式譲渡の場合に重要となります。この条項の有無をあらかじめ確認し、必要であれば大家様へ事前にご挨拶に伺います。

買い手様を優しく導くための不動産承継3ステップ

オーナー様が主導して、不動産の引き継ぎをエスコートしてあげるための具体的なステップです。

  1. 現在の賃貸借契約書の確認と整理
    まずはご自身が結んでいる契約書を読み返し、更新時期、保証金の金額、退去時の原状回復のルールを把握します。分からない点があれば、事前に管理会社様に確認しておきます。

  2. 大家様への前向きな事前相談
    買い手様の目星がついた段階で、大家様に「これまでのお礼」と「信頼できる後継者へのバトンタッチであること」を伝えます。これにより、大家様も新しいオーナー様を温かく迎え入れる心の準備ができます。

  3. 三者間での覚書の締結
    最終的には、売り手、買い手、大家様の三者が集まるか、書面を通じて「賃貸借契約の承継に関する覚書」を交わします。ここで敷金の扱いや将来の原状回復ルールを文面に残しておくことで、全員が安心して次のステップへ進めます。

学習塾の譲渡は、売り手のオーナー様が今まで丁寧に築き上げてきた教室(校舎)を買い手である次の世代へ譲り渡すものです。

その際には、当事者同士の譲渡契約以外にも、不動産契約や、フランチャイズ案件であれば、FC契約というものがあります。

今回の記事内容は、その中でも不動産契約に関しての注意事項を含む内容です。
買い手様や大家様へのちょっとした配慮や事前の情報共有を行うことで、買い手様の不安感を取り除きつつ、明朗なコスト意識を持っていただけば、疑問点が一つ解決していくのです。

M&Aはいわば、それぞれのステップに生じてくるであろう

「あの点はどうなのかな?」という買い手及び売り手の疑問を一つずつクリアにしていく作業でもあります。

もちろん、道中で変更の可能性もなくはありません。

例えば、新オーナーに変わるタイミングで家賃がUPになるとか、保証金や敷金の金額、はたまた物件の保証会社を通すときのプロセスや必要書類、そして保証料が変わるケースもあります。
これは、あくまでも借主の今までの信用状況なども照らして変化するものですから、一概に言えない部分もあるのです。

買い手の信用状況による変化は売り手ではどうしようもないことかもしれませんが、せめて、売り手であるオーナー様が、開示出来るすべての情報を開示して、買い手様を安心させる努力も必要だと思います。


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