【塾買収Q&A】夏期講習中の教室長勤務は朝から晩まで?お盆休み・年間労働時間と退職防止の給与設計を解説

※今回の記事は、学習塾を買収される方、または教室長を初めて雇い入れた方にご参考になるよう作成しました。
学習塾の買収(M&A)を検討している方や、実際に買収を完了させた新オーナー様から、教室長の働き方や労働条件に関するご相談が非常に増えていますので、要点を整理しながら書かせて頂きます。
M&Aで教室を買収した後に、新オーナーがはじめにやるべきことは、一言で言えば内部の早期把握です。しかも「人的要素」についての部分です。
顧客である生徒や保護者の把握も重要ですが、まずは従業員です。
PMIとして買収後の教室をフォローしていきますと、新オーナー様からの質問は買収前よりも多くなります。
現場に入ることで、疑問点が多く沸いてくるからです。
まず、現場の運営を理解しようとする際、教室長の勤務時間やスケジューリングについての具体的な質問が集中します。
今回は、買収後の塾経営で最も重要な鍵となる「教室長の勤務・労働環境」に焦点を当て、時代に即した持続可能な経営体制の築き方について詳しく解説します。
ここでのポイントは「時代に即した」という部分です。今はもう昭和のときのような馬車馬勤務を強いる時代ではありません。その点のギャップを早期修正すれば、もっと良いアイディアが出てくることでしょう。
■買収検討オーナーから寄せられる3つの代表的な疑問
学習塾を買収する候補者の方からの御質問は、最初のうちは「売上高」や「生徒数」「営業利益」などが最も多いです。
これはある意味当然のことです。
買い手候補の皆さんは、塾経営に慣れた人ばかりではなく、新規で参入する法人の方、個人事業主の方、サラリーマンから脱サラ起業を考えている方、本業とは別に副業として経営を考えている方などなど、これから塾経営をスタートしよう!とされる方も多いのです。
買収した後の想像、これがとても重要です。
買い手候補の方は、事前にサイトなどである程度の調べを行い、仲介や直接的な売り手オーナーとの対話を通して、だんだんと「学習塾」という仕事の中身を知るのようになります。
最終的には内部に完全に入り込まないと見えてこないこともあるかもしれませんが、勤務をする人が例えばオーナー自らが教室長を兼任される場合でも誰かを雇い入れる場合でも 「教室長の業務」について、必ず質問が入るようになります。
逆に言うと、その質問が入らない・・・ということは、その方はあまり真剣に学習塾の買収を考えていないということがありありとわかります。
つまり買収をされる方は、個人の方であれ、法人の方であれ、教室での勤務がどのようなものなのか、教室長としての業務の一日の流れはどうなのか、教室長の給与はどの程度なのか、これらを絶対に確認すべきだからです。
さて、真剣に買収を考える買い手候補の方からの質問・・・。
現場の勤務実態や労働条件に関してよく寄せられる質問には、以下のようなものがあります。
夏期講習のとき、教室長の勤務は朝から晩まで拘束されるのか?
答えから申し上げますと、過去の慣習のまま朝から晩まで一人の教室長に現場を担当させる運用は、現在の労務管理においては、ありえないです。
ご自身がオーナー兼教室長であれば、そのパターンも自由ですし、そこまで徹底していると、いつしか名物教室長として地域に認識されて、さらに顧客を呼び込むパワーになります。
ところが、雇い入れた教室長(社員)の場合、上記のような勤務をさせてしまうと、たとえ残業代を支払ったから・・・と言っても夏が終わったら疲弊しつくして辞めてしまうかもしれません。
夏期講習期間中は、午前中から受講枠を設定することが多いため、開校時間が朝8時や9時になり、閉校時間が夜22時過ぎになるケースが珍しくありません。これを一人の教室長が連日開校から閉校まで立ち会い続けると、一日の労働時間は容易に12時間から14時間近くに達してしまいます。
たとえ本人が「生徒のため」「昔からこうだったから」と納得しているように見えても、労働基準法上の時間外労働の上限制限や健康配慮義務に抵触する可能性が高くなります。シフト制の導入や、時間帯に応じた責任者の交代体制を整えることが不可欠です。
今は昔と違って、朝から晩までの勤務を良しとする人はまずいません。
経営者、役員には時間勤務の感覚はなくても当然ですが、雇い入れた社員にはやはり時間間隔があって当然ですし、そこに対価を発生させていれば問題なかろうとういうのは、微妙に違うかもしれません。
それはプライベートな時間です。
夏期講習期間は、お盆休みなどもなくぶっ通しで勤務させるべきなのか?
こちらも結論から言えば、講習期間中であっても適切な休日・連休の確保は必須です。
従来の塾業界では「夏期講習の1ヶ月半は休みなしで駆け抜けるのが当たり前」という風潮が存在していました。
しかし、連日の激務による過労は、思考力の低下や体調不良を引き起こし、結果として生徒や保護者への対応品質を著しく低下させます。
塾全体として一定期間(例えば8月中旬の数日間)を完全に閉館日として休校期間を設けるか、あるいは交代制で必ず週に1日〜2日の休日を確保する仕組みをつくる必要があります。お盆休みを完全に失わせるような運用は、現代の労働環境として考える場合、少々無理があります。
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【実例(実話)】
とある バリバリ業績をあげていた 個別指導塾Aの実話です。
この教室は、地域ナンバー1と言ってもいい集客が出来ている教室です。(これはリアルな話で今もその教室は運営されています)かつて・・・とは言ってもつい数年ほど前までは、夏休み期間ぶっ通しで教室を開校していました。
お盆休みなしです。
CROSS M&AのK部長はその実態を聞いて(サイトでも見て)、非常に驚きました。
なんというのでしょう。
「すごいな・・」という言葉しか出なかったです。頭の中でぐるぐると何かが巡りましたが、それも別に言葉が巡ったわけではなく、感情的なものでして、そうです。ただただ「すごい」だけでした。
(こんな通し運営して、大丈夫なのか?)と冷静に考えることができるようになったのは少し後です。
実際に本当に遠しでやってるのだろうか、、、サイトも確認しましたら、何ともすごい迫力です。
成績を絶対上げるという執念がどのページからもほとばしっていました。そして、「今年もやります」という内容で、ぶっ通しの夏期講習の案内が書かれていました。
業績は、ダントツです。それこそすごい業績をあげている教室です。
そして、今日、この記事を書こうと思い立ち、久しぶりにその個別指導塾Aのサイトを見てみました。私は、(あれ?文章の口調が全然違う・・・それに・・・お盆休みたっぶり取ってるじゃないか)
夏ぶっ通しで、業績もぶっとんだ業績をあげていた個別指導塾Aは、夏休みのお盆休館が8日間となっていました。
これが2026年夏の状況です。
そして、記載されている名前も違いました。
真相はわかりませんが、簡単に言えば教室長が変わったのだということです。
もしかすると、ここ数年、教室長がくるくる変わっているかもしれません。登場する名前が少なくともこの3年で、3名でした・・・。
以前の圧倒的な強さを誇る地域最強教室の時代が良かったのは、今のほうがいいのか、それはその教室内部にいる人間しか実感できないことです。
しかし、少なくともこの実話からして、やはり背景には、人々の考え方の変化というものがあることがわかります。
それぐらい今は、仕事に対しての価値観が変わってきているということです。
教室長の年間勤務日数や労働時間はどの程度に設定すべきなのか?
教室長の年間労働条件については、一般的な企業と同等の水準(年間休日105日〜120日程度、週40時間労働を基本とした運用)を基準に設定するのが理想的です。
ただし、これはあくまでも一般的な企業、、、といことであって、学習塾と同一線上に置くことは難しいです。
その第一の理由は、夕方から夜がメインの勤務時間になるからです。
一般の会社が朝8時や9時ぐらいが勤務開始だとしたら、学習塾は午前の時間や午後の早い時間に生徒が来る(来られる)ことはないため、通常期であれば15時台から16時台からの授業スタートとなります。
業務開始のための準備時間をとったとして、業務開始の時間が13時、14時、15時のところが多いです。
例えば14時開始であれば、一般の会社よりも6時間程度あとの業務スタートになるのですから必然、夕方から夜がメインの時間帯勤務となります。
第二の理由は季節習性があるということです。
学習塾は時期によって繁閑の差が非常に激しい業界です。夏期講習や冬期講習、新年度の生徒募集期(2月〜4月)は「実務上の繁忙期」です。その前の期間が「準備として繁忙期」になります。
一年単位でみると、これらの繁忙期が重なるときもありますし、ある程度、違うことが出来るぐらいの閑散とした時期もあります。
そのため、学習塾によっては、1年単位の変形労働時間制を採用し、繁忙期の法定労働時間の枠を広げる代わりに、閑散期にまとまった連休を取得させたり勤務時間を短縮したりする工夫を取り入れているところもあります。
または、一日の業務スタートと終わりの時間を一般企業よりも短く設定して、土曜日の勤務もアリとするスタイルのところもあります。
または、生徒数がかなり多くなった場合には、従業員の休みをずらすことで、塾としての開校時間は長くして、内部のスタッフの勤務体制を変更しているところもあります。
いずれにしても
年間の総労働時間を適正化し、ワークライフバランスを保てる設計にすることが重要です。
■熱血指導スタイルの終焉と時代感覚の変化
昔の学習塾には、
「自分のプライベートを犠牲にしてでも生徒の成績を上げる」
「夜遅くまで補講を行い、休みの日も教室を開けて生徒に寄り添う」
といった、熱血スタイルの指導が美徳とされていた時代がありました。
確かに、そうした熱意が保護者や生徒からの強い信頼を生み、塾のブランド価値を高めていた側面があったことは否定できません。
しかし、現代社会においては、労働に対する価値観が大きく変化しています。
例えば、金融機関をはじめとする他産業を見渡してみても、かつては当たり前だった残業の常態化は見直され、
昼休みの1時間の休憩時間を厳格に確保することや、定時退社の推奨、有給休暇の義務化などが徹底されています。
どのような業界であっても、従業員の健康と権利を守る労務管理が最先端の経営体制として求められているのです。
学習塾業界だけが「教育という情熱」を理由に過酷な労働を強いることができる時代は、完全に終わりを告げました。
「生徒のためにとことん付き合う」という素晴らしい情熱や理念そのものは今も生き続けていますが、それを実現するための「仕組み」が精神論であってはなりません。
あまりにもエンジンをかけすぎ、あまりにも教室長一人に激務を押し付ける運用を放置しておくと、最終的に待っているのは現場の疲弊と精神的・肉体的な限界です。
これは労働の価値観という側面もありますが、労働者が権利を堂々と主張できる風潮、世の中になってきたという面のほうが大きいのかもしれません。
■夏期講習の後に急増する教室長の退職リスク
買収後の新オーナーが最も警戒しなければならないのが、夏期講習が終わった直後の秋口に発生する「教室長の突然の退職」です。
夏期講習は、学習塾にとって年間で最も売上が上がり、生徒の成績を伸ばす最大のチャンスであると同時に、現場のスタッフにとっては最も労働負荷が高まる試練の時期でもあります。
連日の朝から晩までの勤務、不十分な休憩時間、休日がないまま走り続けるスケジュール。講習期間中はアドレナリンが出ているため、教室長は何とか乗り切るかもしれません。
しかし、講習が終わり、少し落ち着きを取り戻した9月や10月に、どっと疲れが押し寄せてきます。
このタイミングで、
「この働き方をあと何年も続けるのは無理だ」
「自分の人生や家族との時間を犠牲にしすぎている」
という強い絶望感や不満が表面化します。
その結果、夏期講習の終了とともに退職届が提出されるという事態が全国の塾で頻発しているのです。
教室長が突然辞めてしまうと、現場の運営は大混乱に陥ります。引き継ぎが満足に行われないまま秋の受験追い込み期に突入することになり、生徒や保護者からの信頼は失墜し、退塾者の増加や新規入塾者の減少という形で経営に深刻な打撃を与えます。
買収によってせっかく手に入れた価値ある教室も、鍵となる教室長を失うことで、その魅力や収益力を一気に失ってしまうリスクがあるのです。
人は「財」です。人材ではなく「人財」という考え方のもと、特に教室長はオーナーと苦楽を共にする関係性になるはずです。
長く勤務してもらうことで、その教室長が教室の顔になっていきます。教室が認知され、新しい教室長の効果が出てくるまでに、だいたい1年ぐらいかかります。
人財を新しく雇用する際のコストもかかるわけですから、自分が面接して自分が選んだ従業員を大切にしていきましょう。
■新オーナーに求められる勤務時間と給与のバランス設計
これから学習塾を買収して経営に乗り出す新オーナーは、旧来の業界慣習に縛られることなく、現代の時代変化を敏感に感じ取る必要があります。
教室長という仕事は、生徒の指導管理、保護者対応、講師のシフト管理、販促活動、売上管理など多岐にわたる業務をこなす高度な職種です。だからこそ、労働時間と給与・待遇のバランスを適切に整えることが、持続可能な塾経営の第一歩となります。
具体的には、以下のような改善・設計策を検討すると良いでしょう。
複数人体制やシフト管理の整備
開校時間が長い時期であっても、教室長一人がすべての時間をカバーする構造を改めます。副教室長の配置、アルバイトのリーダー講師への業務委任、事務作業の外部委託やデジタル化を進めることで、教室長が朝から晩まで拘束される事態を防ぎます。
昼間の準備時間と夜間の授業時間でシフトを分け、適切な休憩時間を確保できる体制をつくります。
但し、社員を配して 教室長ー副教室長という体制は、生徒数や教室のキャパによってです。生徒数が数十名規模であれば、社員は1名で十分です。
無理して2人の正社員を雇い入れると、相当の人件費負担になりますのでオススメしません。
また、少ない生徒数の段階で2名の管理者がいる事態は、あまりよくありません。一方が教室長、一方が副教室長であったとしても、ほぼ間違いなく「依存型」になってしまします。
自分の仕事を分け与えることも教育なのだ・・・そう思う方もいるかもしれません。しかし実態は、自分の仕事を楽にするための仕事与え、権限移譲だったりします。
この形式は、成功しません。
労力と成果に応じた明確な給与・評価体系の構築
夏期講習などの繁忙期における残業手当や休日出勤手当を正しく支給することはもちろん、講習成果や生徒獲得数に応じたインセンティブ(特別手当)を付与する仕組みを導入します。
「忙しくて大変だったけれど、それに見合うだけの成果と十分な給料が得られた」という納得感があれば、教室長のモチベーションは高く保たれ、退職を防ぐ強力な抑止力となります。
閑散期における徹底したリフレッシュ環境の提供
夏期講習や受験シーズンといった超繁忙期を終えた後は、意識的に有給休暇の取得を促し、長期休暇を取れる環境を用意します。
「夏を乗り切れば、秋にはしっかり休んで旅行に行ける」「自分の時間を確保できる」という見通しが立っていれば、繁忙期の負荷にも耐えることができます。
CROSS M&A が運営する教室では・・・
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【実例(実話)】
大きく企業や経営者の考え方を変えるきっかけになったのは、やはり「働きかた改革」ではないでしょうか。
「働き方改革」とは?
安倍政権が推進した、「長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現、多様で柔軟な働き方の推進」を柱とした、戦後最大級の労働法制の見直しです。
日本国内の少子高齢化や人口減少に対応し、「一億総活躍社会」を目指す政権の最重要課題とされました。
この内容を色々細かく紐解いていく中で、「有給」についての項目もありました。
内容は、「すべての企業で年10日以上の有給休暇が与えられる人に、年5日間の確実な取得が義務化」するというものです。
対象者には会社が時期を指定して取らせる必要があり、守らない企業には罰則があります。
CROSS M&AのK部長は当時、社労士からこの話を聞いたとき、すぐに業務カレンダーに「5日間ではなく、7日間(※2026年現在は、8日間)の有休をあらかじめ加えたものに改造し、スタッフにドラフト段階で提示し、
賛否を問い、これでOKということであれば、従業員すべてが新しく入った、とか関係なく有給としてこの日を休もう!とするものに変更したのです。
これによって、従業員のGWや夏期休暇、年末年始休暇なども有休を加算して、一般企業と同様に長期休みを取れるようにしました。
また、このメリットは、従業員の一人ひとりがバラバラではなく、同じ日に休むことになるため、休館日として設定できます。
そのデメリットは全くありません。逆にそのほうが運営がしやすいです。
■持続可能な教室運営が事業の価値を高める
学習塾の本質は「人」です。
優れたコンテンツや清潔な教室設備も大切ですが、生徒や保護者の心を掴み、成績向上へと導く最大の要素は、現場で指揮を執る教室長や講師陣のエネルギーと熱意です。
しかし、その熱意は、従業員の健康な生活と適切な労働環境という土台があってこそ維持されるものです。激務を強いることで短期的な利益を追うような経営は、教室長の離職という形で必ず行き詰まります。
買収を機に新オーナーが取り組むべきは、時代の変化に合わせた労務管理のアップデートです。
教室長の勤務時間を適切に管理し、努力と成果に報いる給与バランスを整え、意欲を持って長く働ける環境をつくること。それこそが、現場の退職を防ぎ、生徒と保護者からの信頼を高め、結果として買収した学習塾の事業価値を最大限に高める最良の道となります。
これからの塾経営には、熱血な指導力を支える、冷徹で緻密な労務管理の視点が不可欠であるということを、ぜひ心に留めて運用を進めてみてください。
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こちらの記事で何となくのイメージをつかんでみてください。
CROSS M&A(通称:クロスマ)は15年の運営キャリアがあり、最近動向も勿論押さえております。
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