【学習塾の不動産契約】知らなきゃ損する7つの注意点と不利な条項を回避する交渉ポイント

学習塾の新規開校・物件契約
知らなきゃ損する
7つの注意点

学習塾の新規開校にあたって、

物件の賃貸借契約は事業の成否を分ける極めて重要なステップです。

立地や賃料などの表面的な条件だけで契約を結んでしまうと、いざ開校準備を始めたときや、数年後に退去を検討する段階で思いがけない多額の費用やトラブルが発生することがあります。

一般的なオフィスや店舗の賃貸借契約は、多くの場合において物件オーナー(貸主)側に優位な内容で作成されています。

しかし、知っておくべき知識を備え、適切に交渉を行うことで、不利な条件を回避したり、リスクを大幅に軽減したりすることが可能です。

本記事では、学習塾の新規オーナーが初めて不動産賃貸契約を結ぶ際に、絶対にチェックすべきポイントと交渉のコツを網羅的に解説します。

1.学習塾特有の「用途・構造」に関するチェックポイント

学習塾という業態は、一般的な物販店やオフィスとは異なる特殊な環境を必要とします。まずは建物や用途に関する基本的な注意点を確認しましょう。

建築基準法と用途地域

学習塾を開校する場合、対象物件の用途地域を確認する必要があります。第一種低層住居専用地域など、一部の地域では学習塾の建築や用途変更が制限されている場合があります。

また、床面積の合計が200平方メートルを超える物件を学習塾として使用する場合、建築基準法上の「用途変更」の手続きが必要になるケースがあります。

用途変更には建築確認通知書や検査済証が必要となりますが、古い物件ではこれらが紛失していることもあるため、契約前の事前確認が不可欠です。

消防法と設備要件

学習塾は不特定多数の生徒が集まる施設であるため、消防法上の規制を厳格に受けます。特に以下の設備について確認が必要です。

・火災報知器および非常用照明の設置状況

・避難はしごや避難階段などの避難経路の確保

・間仕切り(パーテーション)設置による未警戒区域の発生リスク

個別指導塾などで部屋を細かくパーテーションで区切る場合、天井まで届く壁を作ると各部屋に火災報知器やスプリンクラーの増設が必要になることがあります。

これにより数百万円単位の追加工事費用が発生するケースがあるため、契約前に消防署への事前相談を行うことが鉄則です。

騒音・振動と近隣環境

学習塾では、生徒の話し声や休み時間の雑音、夜間の出入りなどが原因で近隣住民や他のテナントとトラブルになることがあります。特に以下の点に注意してください。

・上下階や隣接テナントの業種(静かなオフィスや住宅が隣接している場合は防音工事が必要になる可能性がある)

・自習室や教室での声漏れ対策

・ビル全体の利用規則(夜間帯の立ち入り制限の有無)

2.契約形態と契約期間のチェック

不動産賃貸契約には大きく分けて2つの形態が存在します。どちらの契約形式になっているかで、将来的な事業の安定性が大きく変わります。

普通借家契約と定期借家契約の違い

項目普通借家契約定期借家契約
契約の更新原則として更新可能(正当な理由がない限り貸主側から拒絶不可)更新なし(期間満了で終了)
再契約双方の合意があれば更新料等を支払い継続双方の合意があれば新たに再契約を結ぶ
中途解約借主からの解約告知期間を守れば可能原則として中途解約不可(特約が必要)
賃料交渉更新時などに減額交渉が可能賃料改定の特約があればそれに従う

学習塾は、地域に根を張り長期間にわたって生徒を集めるビジネスです。そのため、基本的には「普通借家契約」を選択するのが望ましいと言えます。

もし「定期借家契約」で提示された場合は、再契約に関する優先交渉権の有無や、万が一の早期撤退に備えた中途解約特約(〇ヶ月前の予告で解約可能とする条項)を契約書に明記してもらうよう交渉することが不可欠です。

中途解約特約がない定期借家契約を結んでしまうと、事業を停止しても残存期間すべての賃料を支払い続けなければならなくなります。

3.初期費用・毎月のコストに関するチェックと交渉術

契約時および毎月のランニングコストに含まれる費用項目について、妥当性を検証しましょう。

フリーレント(賃料無料期間)の獲得

学習塾の開校準備には、内装工事、備品の搬入、看板設置、講師採用、生徒募集などの期間が必要です。この準備期間中にも賃料が発生すると、開業前の資金繰りを大きく圧迫します。

物件オーナーに対して、「内装工事および開業準備期間として1〜2ヶ月間のフリーレントを設定してほしい」と交渉を入れましょう。空室期間が長引いている物件や、長期契約を前提とする場合は承諾してもらえる可能性が高くなります。

賃料・共益費・管理費

近隣の相場と比較して適正であるかを確認します。また、共益費や管理費に含まれるサービス内容(共用部の清掃、ゴミ処理費用、エレベーター保守点検など)の範囲を事前に確認してください。ゴミ処理が別契約となる場合、毎月追加の廃棄費費用が発生します。

敷金・保証金の償却条件

店舗やオフィスの契約では、敷金(保証金)として賃料の2〜6ヶ月分(場合によっては10ヶ月分以上)を納めることが一般的です。

但し、この敷金(保証金)は、やはり業種によってその期間が変更されるケースは非常に多いです。飲食店の場合には、10か月や1年はザラですが、もし学習塾でしたら、それだけの期間は多すぎです。
2から3か月にするよう交渉は出来ます。

また、ここで必ず確認すべきは「敷金償却」の条項です。

解約時に「敷金の〇%または〇ヶ月分を償却する(返還しない)」という特約が入っているケースが多く見られます。例えば、敷金100万円で「解約時2ヶ月分償却」となっている場合、原状回復費用とは別に2ヶ月分が無条件で没収されることになります。

償却条項の削除や減額の交渉を試みることが重要です。

4.看板・内装工事・原状回復に関する厳選チェック項目

看板の設置場所や内装工事の条件は、学習塾の集客と退去時のコストに直結します。

看板掲載の権利と費用

学習塾にとって、ビルの外壁やファサード、袖看板への設置は最大の集客ツールです。

・看板を設置できる場所の具体的な範囲(ファサード、袖看板、案内板など)

・看板設置に伴う月額の使用料(無料なのか、月額費用がかかるのか)

・デザインやサイズに関する制約(ビルの景観規定など)

これらを契約前に明確にし、契約書の特約事項に「〇〇箇所への看板設置を許諾する。月額使用料は賃料に含む」といった記載を残しておく必要があります。契約後に看板設置を拒否されたり、高額な看板使用料を請求されたりするトラブルを防ぐためです。

この看板設置は、普通は無料です。
しかしテナントを抱えたビルなどの場合は、壁面の大きなスペースを看板スペースとして、カッティングシートなどの貼り出しが出来る場合があります。

その面積などにもよると思いますが、外からみた視認性がさらに拡大できるようであれば、考えてもいい内容です。


事例(実話)コーナー

【実例(実話)】

今まで、それなりに物件契約を交わしてきたCROSS M&AのK部長の実例・実話です。今まで2回あります。

一つは、視認性がよく、3面看板が可能な物件です。正面への設置は無料だが、その両サイドは有料になるというものでした。

こちらは最初の物件契約前の内覧の時から、何とか看板を3つとも無料にできないかと打診はしました。結果として、申し込み後にこの件を交渉して、最初の一年間の金額をかなりダウンしてもらったことがあります。

もう一つは、壁面に目立つ大きなガラス面がある物件でした。
普通の看板が設置できないため、カッティングシートで訴求を目指すものでしたが、もう一歩アクセントが欲しく、この大きなガラス面物件の箇所を6600円で借りた経緯があります。

どちらのパターンも、背伸びしなければ、やらなくてはいけないという判断を下すものではなかったのですが、ここにこういう看板があったらいいだろうな、というイメージを描いていたため、どちらもお願いすることにしました。

どちらも今もって盛栄中です。


原状回復義務(スケルトン戻し vs 抜き取り戻し)

契約書において最も揉めやすいのが「退去時の原状回復(復元)義務」に関する条項です。
この点は、本当に 不動産契約において、一般の消費者の方も事業者も 非常に多くのトラブルが発生しています。

個人的に、これは不動産という限られた資産を「貸したり」「売ったり」するという自由契約において、その利権に群がる人が複数存在するからこそ起こる事態だと思っております。

そして、不動産契約は賃貸借契約にしても 「高い!」です。
不動産業界特有の慣習的なものもあり、少々厄介です。私たちはその仕組みをよく理解し、契約時にあまりに不利な条項の場合は、毅然と伝えることが出来るぐらいの知識習得が必要です。

「げんじょうかいふく」という言葉を聞くと、「現状回復」と勘違いされる方も多いです。正確には「原状回復」です。

以前も不動産関連の記事を書いたときに、同様に示しましたが、今回も念のため・・・

原状回復の義務とは?

原状回復とは、不動産の賃貸借契約で、当該物件を退去解約する際には、「入居時(引き渡し時)の状態に戻す」というもので、通常は借主の義務となります。

勿論、すべての修繕を借主が負担するわけではありません。よくあるトラブルが、通常の使用による損耗や経年劣化についてはどうなのか?というものです。
これを「通常損耗」と言います。

ちなみに、通常損耗とは、何となくその意味を想像できると思います。
賃貸物件などの借り主が、通常の日常生活を送る中で生じた建物や設備の傷や汚れについては、それが意図的なものでなければ、時間の経過による「経年劣化」になります。こういった人が生活することで自然に発生する避けられない消耗を指します。

復元指定内容メリットデメリット・リスク
スケルトン戻し床・壁・天井・設備をすべて撤去し、コンクリート裸の状態に戻す契約基準が明確で揉めにくい解体・撤去費用が高額(坪当たり数万円〜十数万円)
造作譲渡・居抜き前テナントの内装や設備をそのまま引き継ぐ・残す開業・退去費用を大幅に抑えられる事前に貸主の書面承諾が必要
施工前状態への復元入居時の状態(天井や壁が残っている状態)に戻すスケルトンより解体費用を抑えられる入居前の状態を写真等で記録しておく必要がある

これも、このサイトで一貫して申しておりますが、「スケルトン物件はやめておけ」であります。
あくまでも学習塾や習いごと用途であれば、スケルトンから内部造作をして、作り上げていくという工事代金は、数十万なんていう規模では終わりません。

数百から数千万円規模になります。

こちらの記事は、あくまでも新規開校者様向けの内容です。
学習塾の新規開校で、スケルトンから内部をつくり上げて いざ出陣!というケース、あるのでしょうか?
その分のコストがあるのであれば、広告宣伝とか人材(人財)登用にコストをかけたほうが良いと思います。

オフィス居抜き物件や、前テナントも塾だった物件に入る場合、「スケルトン戻し」が契約条件になっていると、退去時に自分が作っていない設備まで解体・撤去させられるリスクがあります。

入居時の状態(現況)に合わせて「退去時は入居時の状態に戻せば良い」とする特約に変更交渉することが極めて重要です。

新規開校を目指す方は、自分のオーダーメイドプランで内部をつくり上げたい気持ちもよく理解できます。

しかしながら、物件契約は、断然 「事務所仕様」の物件で天井にセットアップされたエアコン付きが一番良いと思います。

5.設備・インフラ環境のチェック

近年の学習塾では、ICT教育の導入やオンライン授業、タブレット学習が不可欠となっています。インフラ面の確認を怠ると、開校スケジュールが大幅に遅れる原因になります。

光回線・インターネット環境

・ビル全体に光回線が引き込まれているか

・希望するプロバイダや高速回線(10Gbps対応など)の単独引き込みが可能か

・配管の空き状況や、MDF室(主配線盤)からの配線経路があるか

古いビルでは配線ルートが埋まっていたり、回線引き込み工事の許可をオーナーが拒否したりするケースがあります。開校日にネットが繋がらないという事態を防ぐため、契約前に回線事業者の現地調査を実施してもらいましょう。

意外な盲点かもしれませんが、
今の時代「光回線」は必須です。

しかし、光回線でもソフトバンクの場合は、もし教室を譲渡となって、電話番号の名義を変更したいという申し出をしても答えはNOとなります。
ソフトバンクはいかなる理由でも名義変更はできません。

このように、契約時に、別に何も問題はなかった・・・けれども 自分で何かしら変更をしたいときに、想定以上に混乱をきたすものがあることを想定して、必ずネットや書面で情報を得ておくと良いでしょう。

電気容量とエアコンの設備状況

・契約可能な最大アンペア数・キロワット数(教室内の照明、PC、複合機、エアコンを同時使用しても耐えられるか)

・エアコンの所有権(オーナー所有の「設備」か、前テナントの「残置物」か)

エアコンが「残置物」として扱われている場合、故障時の修理費用や交換費用はすべて借主(自分)の負担になります。設備として契約書に明記されているか、残置物である場合は故障時の対応をどうするかを事前協議してください。

この問題は夏まっさかり、冬の寒い時期に起こる問題です。

特にエアコンについては、オーナー所有の「設備」であったとしても日頃のメンテナンスはその他の措置は借主負担という内容も多くなってきました。
これらも不動産賃貸借契約書や重要事項説明書を、しっかりと全文読んで確認すべきです。

確認して、あまりにも借主負担が大きいと判断するば、内容をしっかりと伝えて契約書の段階からあmりに不利な条項を受け入れず交渉できるようにしておきましょう。

トイレ・水回りの設備

・生徒数に対して十分なトイレの個数があるか

・男女別のトイレが確保できるか(特に女子生徒や保護者の満足度に直結)

・共用トイレの場合、清掃管理の責任と頻度

トイレで多いのは、「詰まり」です。
見た目がきれいであっても、構造上の問題で、「詰まり」が発生します。上層階テナントや、管理会社がしっかりと入って、管理費用、共益費という名目で支払いにONされている場合や、トイレが共用のところは、比較的トラブルは少ないですし、あったとしてもすぐに先方の業者が対応してくれます。

問題は、自己管理する場合です。

トイレなどの詰まりが発生した場合、多分皆さんはサイトで調べると思います。しかしながら、トイレの詰まりを解消するだけなのに、5万円、10万円という請求をする会社も存在します。

その金額の妥当性は、ほとんどありえないと思っていいでしょう。
相場として詰まり解消は、数千円で済むはずです。

仮に業者が「特殊な機械をつかってやるので・・・」と言ってきたら、脳内で「特殊な機械を使うのだから、万単位がいくだろうな」などと思う必要は全くありません。

6.不利な契約を回避するための交渉プロセス

契約書に書かれている文章は、決定事項ではありません提示された賃貸借契約書案は「貸主側の希望条件」に過ぎないという意識を持ちましょう。

交渉を進めるためのステップ

  1. 契約書案(ドラフト)の事前入手重要事項説明や契約調印の当日ではなく、必ず事前に契約書案のデータを取得し、熟読します。
  2. 問題箇所の洗い出しと整理本記事で挙げたポイントを照らし合わせ、不利益な条項や不明瞭な記載をリストアップします。
  3. 「修正要望書」の提出口頭ではなく、書面(メールやPDF)で修正希望事項とその理由を整理して仲介業者に提出します。「学習塾として健全に長期運営を行うため」というポジティブな理由を添えるのがコツです。
  4. 妥協点の探り合いすべての要望が通るわけではありません。賃料の値下げが難しい場合はフリーレントの延長を求めるなど、柔軟な代替案を用意しておくと交渉がスムーズに進みます。

絶対に泣き寝入りしてはいけない危険な特約例

以下のような特約が契約書に含まれている場合は、修正または削除を強く要求してください。

7.契約前に準備すべき「最終確認チェックリスト」

契約書に印鑑を押す直前に、以下のチェックリストを使って最終確認を行いましょう。

契約基本条件

  • [ ] 契約形態は「普通借家契約」になっているか(定期借家の場合、解約特約はあるか)
  • [ ] 契約期間および更新料の額は適正か
  • [ ] フリーレント(賃料無料期間)は付与されているか

費用・退去条件

  • [ ] 敷金・保証金の償却条件が不当に高く設定されていないか
  • [ ] 退去時の原状回復範囲(スケルトンか現況復元か)が明記されているか
  • [ ] 中途解約の予告期間(通常3〜6ヶ月前)は現実的な設定になっているか

設備・施工条件

  • [ ] 看板の設置場所と使用料に関する特約が明記されているか
  • [ ] 光回線の引き込み工事に関する許可が得られているか
  • [ ] 消防法上の課題(パーテーション設置や防災設備増設)をクリアしているか
  • [ ] エアコンや照明などの設備区分(ビル設備か残置物か)が明確か

結び:納得のいく契約で学習塾のスタートを切るために

不動産賃貸借契約は、一度署名・捺印してしまうと「知らなかった」「見ていなかった」では済まされない法的拘束力が発生します。

オーナーや不動産仲介業者は賃貸のプロですが、新規開校する塾オーナーにとっては初めての経験であることが多く、どうしても情報格差が生じがちです。

相手の言いなりになる必要はありません。「長期間にわたって綺麗に使い、賃料を滞りなく支払う優良なテナントになる」という姿勢を示しながら、自校の運営を守るための正当な権利と条件をしっかり主張しましょう。

不明な点や不当だと感じられる条項があれば、専門の弁護士や行政書士、あるいは不動産に詳しい第三者の専門家にアドバイスを求めることも非常に有効です。リスクを事前に洗い出し、万全の体制で夢の学習塾開校への一歩を踏み出してください。


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