高校生指導ができる学習塾をM&Aで買収するメリットと高校1年生がターゲットになる理由

2025年06月29日

買収

学習塾のM&Aを検討されている方、あるいは学習塾の譲渡物件を探している法人の方へ知って頂きたい内容をまとめてみました。

少子化が進む現代において、学習塾業界は変革期を迎えています。そんな中、高校生指導に強みを持つ学習塾をM&Aで買収することは、新たな成長戦略を築く上で非常に有効な選択肢となり得ます。この記事では、高校生指導ができる学習塾をM&Aで買収するメリットと、特に高校1年生をターゲットとすべき理由について深く掘り下げていきます。

まずは、↓ こちらの折れ線グラフをご確認ください。小学校・中学校と概ね右肩上がりの通塾率は、中学3年でピークとなり、高校1年生の通塾率が26.3%と下がっていることがわかります。その後、高2年、3年は同じぐらいの通塾率推移となっています。

1. 学習塾M&Aの現状と高校生指導の重要性

近年、少子化の影響を受け、学習塾業界は再編の動きが活発になっています。特に、競合の激化や生徒数の減少といった課題に直面する塾も少なくありません。このような状況下で、M&Aは事業拡大、新規事業参入、または事業承継の一つの有効な手段として注目されています。

その中でも、高校生指導は学習塾業界において非常に重要な領域です。

少子化の影響を受けにくい層であること、また大学受験という明確な目標があるため、生徒一人あたりの単価が高く、収益性が高い傾向にあります。しかし、高校生指導には専門性の高い指導力や豊富な情報、そして効果的な進路指導が求められるため、新規参入障壁が高いのも事実です。

だからこそ、既に実績のある高校生指導塾をM&Aで取得することには大きなメリットがあるのです。


2. 高校生指導ができる学習塾をM&Aで買収するメリット

高校生指導に特化した、または強みを持つ学習塾をM&Aで買収することには、多くのメリットがあります。

2.1. 安定した収益基盤の獲得

高校生は、大学受験という明確な目標に向けて長期的に学習塾に通う傾向があります。大学受験を意識する高校生は、親御さんから言われたから塾通い・・・という形ではなく、自らの意思で学習塾へ通いたい意向を示します。

特に難関大学を目指す生徒は、高校3年間を通して塾に通い続けることも珍しくありません。これにより、生徒一人あたりの通塾期間が長く、結果として安定した学費収入が見込めます。また、定期テスト対策や模試対策、特別講座などの付加価値サービスも提供しやすいため、客単価の向上にもつながります。

但し、ここには「前提条件」があります。
意欲が高い高校生で、大学進学を目指す高校生という前提です。
中学生が高校生になるときには、ほとんどの生徒さんが「高校受験合格」という旗印のもと、頑張るのですが、高校生のその先の進路は、社会人として働く選択、専門学校、大学受験、このように少し選択幅が広がることも考慮に入れておきましょう。

2.2. 専門的な指導ノウハウと実績の継承

高校生指導、特に大学受験指導には、教科ごとの専門知識はもちろん、入試制度への深い理解や各大学の出題傾向分析、そして生徒個々の学力レベルや志望校に応じた個別カリキュラムの作成能力が不可欠です。

一からこれらの知識を習得するよりもM&Aによって、これまでに培われてきた専門的な指導ノウハウ、合格実績、教材、そして指導経験豊富な講師陣を一挙に獲得するほうが時間とお金のコストを大幅にカットすることになるのです。
ゼロから高校生指導部門を立ち上げるよりも、はるかに短期間で質の高いサービスを提供することが可能になるとなれば、一考の余地ありだと思います。

2.3. 優秀な人材の確保

高校生指導を行える講師は、その専門性の高さから確保が難しい傾向にあります。M&Aによって、既存の塾に所属している経験豊富な講師陣を引き継ぐことができます。これは、新規で講師を採用・育成する時間とコストを大幅に削減できるだけでなく、指導の質を維持・向上させる上で非常に大きなメリットとなります。特に、難関大学への合格実績を持つ講師は、それ自体が生徒募集における強力なアピールポイントとなります。

2.4. ブランド力と信頼性の獲得

長年にわたり高校生指導を行ってきた実績のある学習塾は、地域における高いブランド力と保護者からの厚い信頼を確立していることがほとんどです。M&Aによってこのブランド力と信頼性を引き継ぐことで、新規顧客獲得にかかる時間とコストを大幅に削減し、事業基盤を早期に安定させることができます。また、口コミによる新規生徒の紹介も期待でき、持続的な成長に貢献します。

2.5. 新規事業への参入障壁の低減

もし現在、小中学生向けの学習塾を運営している場合、高校生指導への新規参入は、指導内容の専門性の違いやターゲット層へのアプローチ方法の違いなどから、容易ではありません。しかし、M&Aを活用すれば、既存の事業インフラやノウハウを即座に手に入れることができ、新規事業への参入障壁を大幅に低減できます。これにより、事業の多角化やサービスの拡充をスムーズに進めることが可能になります。

2.6. 地域での競争優位性の確立

高校生指導に強い塾は、地域内で限られていることが多いです。M&Aによってそのような塾を獲得することで、競合他社との差別化を図り、地域における競争優位性を確立することができます。特定の高校や大学に強いといった特徴を持つ塾であれば、さらにその地域におけるニッチな市場での強固な地位を築くことも可能です。


3. なぜ高校1年生がターゲットになるのか?

高校生の通塾率が全体的に低いという事実がある中で、
なぜ特に高校1年生をターゲットとすべきなのでしょうか。
ここには、今後の塾経営において非常に重要な意味が隠されています。

3.1. 潜在的な見込み客の宝庫

高校生の通塾率は学年が上がるにつれて増加する傾向にありますが、高校1年生の通塾率は、高校2年生や3年生に比べて低いのが現状です。これは、高校入学直後でまだ受験を意識していない生徒が多いことや、部活動や学校生活に慣れることに時間を費やすためと考えられます。しかし、これは裏を返せば、まだ塾に通っていない「潜在的な見込み客」が非常に多いことを意味します。この層に早期にアプローチし、ニーズを喚起することができれば、長期的な生徒獲得につながります。

この意味は、学習塾に何等かの形で勤務すると、その意味合いが複数の要素絡みでわかってきます。

ここからの①から④の内容と「さらに」と書いた内容は、ものすごく重要ですから、買い手の方は是非インプットしておいてください。


①学校推薦・総合型選抜利用の入試が増加

1990年代と今を比較すると、断然、推薦入試・総合型選抜入試の割合が増加しています。推薦(+総合型選抜)で大学入学を果たす割合はほぼ60%に達します。
ここにも背景があるのですが、一言簡単にいえば、大学入学共通テストがセンター試験時代よりも相当難易度が高くなったことと同時進行で、大学側が学生確保のために、入試方式を拡大してきたからです。



②評定平均値を稼ぐためには!?

しかし、この推薦入試(学校推薦型と公募推薦型があります)では、1年生で5回、2年生で5回、3年生で2回の合計12回の定期考査で良い実績をあげなくてはいけません。ここで重要なのは、「評定値」ではなく「評定平均値」だということです。
この平均には、二つの「押し下げてしまうかもしれない要素」があるのです。
一つは、主要教科以外の教科テストがある点(学校によって、音楽・美術・保健体育・情報・家庭など)、もう一つは、2年になったら頑張ろうがあまり通用しない点です。

例えば5教科で頑張って4.8の評定を取ったとしても実技教科で3.0になれば、当然平均値を押し下げます。

そして重要な「2年になったら頑張ろう」がリスキーなのは、1年の評定平均が3.0だとすると、2年になって頑張って4.0にしても平均したら3.5となります。3年の2回のテストで、鬼モードで頑張って評定を4.5にしても3年間でならせば、3.8にしかなりません。

1年で完全に油断した結果が、ずっと尾を引いてしまう・・・それが評定「平均」値の意味合いでもあります。


③大学側が求める学力、評定を信じない大学

「評定を信じない!?」かなりきつい表現ですが、実態はそうです。つまりかつて総合型選抜がAO入試という名前で実施されていた頃、推薦入試は、指定校推薦という形で実施されてきました。非常に多くの受験生がAOや指定校での合格を果たしました。

ところが、AOや推薦で入学してきた学生たちが、大学の授業についていけないなどの問題があちこちで表面化しました。結局、せっかく入学金を支払って入った大学を留年や退学などの事態が全国で起こったのです。
それから、AO入試が総合型選抜を名前を変え、指定校推薦は学校推薦型入試と名前を変え、同じような形式で実施されてきたのですが、ここ2年ぐらい(この記事は2025年6月執筆です)から、大学が評定を信じない内容に変化してきました。

・基礎学力を問うためのテストを実施する
・総合型選抜(旧AO)だが評定ポイントの基準も設ける
・模試の結果を提出させる

などです。
アドミッションポリシーに則った・・・うんぬんかんぬんよりも、学力をまた重視し始めた流れがあるということです。



④私立高校も実質無償化

そして、これです。
すでに自民・公明・維新の3党は高校授業料無償化について合意しました。公立高校は2025年4月から、私立高校は2026年4月から無償化が実施される見込みです。
これによって、どんなことが予想されるのかと言えば、ほぼ間違いなく「高校生の通塾率のパーセンテージが上昇する!」ということです。

上記した①②③を再度振り返って頂き、④で学校のコストがなくなれば、高校生たちの通塾意欲が増してくるのと、通塾の必要性が増してくる可能性が高いということです。


さらに
このムーブメントは、高校生だけに収まることではありません。中学生にも波及します!
今まで、中学受験と大学受験の間にあり、高校受験は中学受験とか大学受験よりは楽だよね・・・と揶揄されたいものが、一気に変わってくるのです。

何故か!?

この私立高校の無償化は、今の中学生の保護者、小学生の保護者、ほとんど皆さん知っています。ですから、高校入試では、どちらも無償化なのだったら、「私立高校に行かせよう」という動きが高まります。




【実話】

昨年末ぐらいから、いまもずっと続いておりますが、ほぼ3~4日に一回ぐらい、私立中学、私立高校の広報担当の方や、教務主任、教頭先生、などが私どもが運営している教室に訪れて参ります。

たいていは毎年いらっしゃってパンフレットとか、要項などを置いていって下さるのですが昨年ぐらいから「一言メッセージ」が付加されています。

「先生、実はですね・・・今年から基準があがるんです」

この言葉、もう5回連続でここ最近聞いています。いらっしゃる私立高校の方がパンフレットと要項を渡してくださるときにこの基準の話があります。

聞けば、ほとんどの私立高校が推薦合格の基準を上げているようなのです。
学校によっては普通進学コースをなくして、特進のみにするなどの事態も発生しています。

この生々しい、直近のリアルをどう受け止めますか。

これは2つの側面があります。
一つは、私立高校の無償化なのだから当然私立高校人気が高まるだろう、応募者も多くくるにちがいない、だから基準を上げておこう(実際は、裏話があるのですがこれはここでは書けません)という内容。
もう一つは、優秀な中学生を確保できる可能性が高くなり、ひいてはこれが大学合格実績にもプラスに作用する、だから基準を上げておこうという内容です。




こうなってくると、色々なからみがスパイラル的にからみにからんで、一番「伸びしろ率が高い属性(学年)」が一番のターゲットになります。

それが「高校1年生」です。

3.2. 長期的な顧客育成の可能性

高校1年生の段階で塾に入塾してもらうことができれば、大学受験までの約3年間、継続して指導を提供できる可能性があります。早い段階から学習習慣を確立させ、基礎学力を着実に定着させることで、高校2年生、高校3年生になった際に、より発展的な内容や受験対策へとスムーズに移行できます。これは、塾にとっては安定した収益源となり、生徒にとっては体系的で効果的な学習が期待できるWin-Winの関係を築けます。

3.3. 早期からの基礎力定着と進路指導の重要性

高校1年生の学習内容は、高校2年生以降の応用的な学習や大学受験の基礎となります。この段階でつまずくと、後々取り返すのが非常に困難になります。そのため、高校1年生の段階から苦手科目の克服や基礎学力の定着を図ることの重要性を保護者や生徒に訴求することは、非常に有効なアプローチとなります。

また、高校1年生のうちから漠然とでも大学や将来の進路について考えさせる機会を提供し、早期に進路指導を行うことも重要です。将来の目標が明確になればなるほど、学習に対するモチベーションは向上し、主体的に学習に取り組むようになります。塾がそのサポート役を担うことで、生徒との信頼関係を深め、長期的な通塾へとつなげることができます。

3.4. 口コミ効果の最大化

高校1年生で入塾した生徒が、塾での指導を通じて成績を向上させ、自信を深め、学習意欲を高めていく姿は、友人や保護者にとって非常に魅力的に映ります。これにより、「あの塾に通い始めたら成績が伸びた」といったポジティブな口コミが広がりやすくなります。特に同級生間での口コミは、非常に強い影響力を持つため、新規生徒の獲得に大きく貢献します。

3.5. 高校生の学習ニーズの変化に対応

近年、大学入試制度の変革や、総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜(旧推薦入試)の増加など、高校生の学習ニーズは多様化しています。単なる学力向上だけでなく、小論文対策、面接対策、プレゼンテーション指導など、多岐にわたるサポートが求められるようになってきました。高校1年生の段階からこれらのニーズを把握し、生徒一人ひとりに合わせたオーダーメイドの学習プランや進路指導を提供することで、他塾との差別化を図ることができます。


4. M&Aにおける留意点と成功へのポイント

高校生指導塾のM&Aは多くのメリットをもたらしますが、成功させるためにはいくつかの留意点があります。

4.1. デューデリジェンスの徹底

買収対象となる塾の財務状況、生徒数、講師の質、カリキュラム内容、合格実績、地域での評判など、多岐にわたる項目について徹底的なデューデリジェンス(詳細調査)を行うことが不可欠です。特に、講師陣の継続性や、指導ノウハウの属人性の有無は重要なチェックポイントです。

4.2. シナジー効果の最大化

買収後、どのように既存事業と統合し、シナジー効果を最大化するかの戦略を事前に練ることが重要です。例えば、小中学生部門と高校生部門の連携を強化し、内部進学を促進する、あるいは地域におけるブランド力を統一し、集客力を高めるなどが考えられます。

4.3. 企業文化の融合

M&Aは、異なる企業文化を持つ組織を統合するプロセスでもあります。**従業員のモチベーションを維持し、スムーズな移行を促すためには、丁寧なコミュニケーションと相互理解が不可欠です。**特に、買収対象の塾が持つ独自の指導理念や教育方針を尊重し、それを新たな経営にどのように取り入れていくかが成功の鍵となります。

4.4. 高校1年生向け集客戦略の立案

高校1年生をターゲットとする場合、彼らがまだ受験を強く意識していないことを踏まえた独自の集客戦略が必要です。例えば、高校入学前の中学3年生を対象とした高校内容の先取り講座、高校入学直後の定期テスト対策講座、部活動との両立支援を前面に出したプロモーションなどが考えられます。また、保護者向けに、早期からの学習習慣定着や進路選択の重要性を訴えるセミナー開催なども有効です。


まとめ

高校生指導ができる学習塾をM&Aで買収することは、少子化という逆風の中でも、安定した収益源を確保し、事業を成長させるための強力な戦略となり得ます。特に高校1年生をターゲットとすることで、長期的な顧客育成と潜在的な見込み客の囲い込みが可能になり、将来にわたる塾の成長基盤を強固なものにできます。

M&Aを成功させるためには、入念な事前調査と、買収後の明確な戦略、そして何よりも生徒と保護者の信頼を勝ち取るための質の高い教育サービスの提供が不可欠です。ぜひ、この機会に高校生指導塾のM&Aを具体的にご検討いただき、貴社の事業拡大の可能性を探ってみてはいかがでしょうか。


CROSS M&A(クロスM&A)は学習塾・習いごと専門のM&Aサービスで、業界ナンバー1の成約数を誇るBATONZの専門アドバイザーです。BATONZの私の詳細プロフィールはこちらからご確認ください。
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