学習塾・習いごと教室は未入金になりにくい!?その理由と万が一の場合の対策を徹底解説

2025年06月25日

オーナー・経営者向け

学習塾や習いごと教室の運営において、未入金リスクは全くないわけではありませんが、他の業種と比較して低い傾向にあります。
この記事では、学習塾や習いごと教室における未入金の実態、なぜ未入金が少ないのか、そして万が一未入金が発生した場合の対処法について詳しく解説します。

学習塾や習いごと教室の経営において、「売上高として計上したものが未入金のまま回収できない」という事態は、他の多くの業種と比較して発生しにくいと言われています。

しかし、その裏には未入金リスクを極力回避するための仕組みや、万が一発生した場合の適切な対処法が存在します。本記事では、学習塾や習いごと教室における未入金の実態に迫り、その背景にある理由、そして未入金が発生した場合の具体的な対策について、詳細に解説していきます。


なぜ学習塾・習いごと教室は未入金が少ないのか?

学習塾や習いごと教室の売上が未入金になるケースが少ないのは、いくつかの要因が複合的に作用しているためです。

1. 教育への意識の高さと親の責任感

まず第一に挙げられるのは、保護者の教育に対する意識の高さです。子供の将来に関わる教育費用は、食費や住居費に次いで優先順位の高い支出と考える家庭が多く、支払いを滞らせることは子供の学習機会を奪うことに直結するという強い認識があります。また、月謝や授業料は子供がサービスを受ける対価であり、親として当然支払うべきものという責任感が強く働きます。

2. 継続的なサービス提供の性質

学習塾や習いごと教室のサービスは、多くの場合、月謝制やコース制といった継続的な提供が前提となっています。未入金が続けば、当然ながらサービスの提供を停止せざるを得ません。子供が楽しみにしている習いごとや、学業成績に直結する学習塾の受講が停止されることは、保護者にとっては避けたい事態であり、未入金解消へのインセンティブとなります。

3. 月謝の事前徴収・口座振替の普及

多くの学習塾や習いごと教室では、月謝の事前徴収や口座振替(自動引き落とし)を導入しています。特に口座振替は、保護者が支払い手続きを意識することなく自動で引き落としが行われるため、支払いの手間を省くと同時に、払い忘れによる未入金のリスクを大幅に軽減します。
最近はクレジットカード決済の導入も増えており、支払い利便性の向上と未入金リスクの低減に貢献しています。

個人的には、paypayやメルpayなどの決済ができるようになればとは思っています。

4. 少額かつ定期的な支払い

月謝は、一度に高額な支払いを要求されるケースは少なく、毎月少額を定期的に支払う形式が一般的です。このため、家計への負担が分散され、滞納につながりにくい構造になっています。
夏期講習などの各種講習や、テキスト代金や模試代金を支払う時期が重なった場合には、金額が変わりますので、その際は引落前に丁寧にアナウンスすることで未入金の発生を防ぐようにします。

5. 運営者と保護者の密なコミュニケーション

個人で運営している教室や地域に密着した塾では、運営者と保護者の間の密なコミュニケーションが未入金防止に役立つことがあります。子供の学習状況や成長を共有し、良好な関係を築くことで、万が一支払いが遅れた場合でも、比較的早い段階で相談しやすい雰囲気があります。


フランチャイズ教室における売上高とコストの透明性

フランチャイズ形式の学習塾や習いごと教室は、売上高とコストの兼ね合いにおけるデューデリジェンス(DD)において、正しいデータが得やすいという特徴があります。これは、独立系教室と比較して、いくつかの明確な理由が存在するからです。

本部システム利用によるデータの一元管理

フランチャイズ教室は、本部へのロイヤルティ支払いが存在するため、通常、本部の提供するシステムを利用することになります。このシステムは、生徒の入会状況、月謝の請求・入金管理、教材の注文、講師の勤怠管理など、教室運営に関するあらゆるデータを一元的に管理しています。

これにより、以下の点でデータの透明性が高まります。

  • 売上高の正確な把握: 授業料やロイヤルティに掛かる顧客からの支払い状況などの売上データはシステムにリアルタイムで入力されるため、誤計上や計上漏れが発生しにくく、正確な売上高を把握できます。通常これらの数値はフランチャイズ加盟側が自由に変更することはできないようにしてあるはずです。
  • コストの明確化: ロイヤルティ、教材費、システム利用料など本部への支払いはシステムを通じて管理されるため、これらのコストが明確になります。また、講師の給与計算などもシステムと連携している場合が多く、人件費も正確に把握しやすくなります。
  • 未入金の早期発見: 口座振替などの自動引き落としが本部のシステムと連携している場合、未入金が発生すればシステム側に決済代行会社からのデータを読み込むことで自動検知し、顧客ごとの入金、未入金が即座にわかります。
  • 経営指標の比較分析: フランチャイズ本部は、複数の加盟教室のデータを集約しているため、各教室の経営状況を比較分析し、適切な経営指導や改善提案を行うことが可能です。これにより、未入金リスクが高まっている兆候を早期に察知し、対策を講じやすくなります。

このように、フランチャイズ教室は本部のシステムを活用することで、運営に関する詳細かつ正確なデータを常に把握できるため、未入金リスクの評価や財務状況の分析が独立系教室よりも容易になります。

少々本題とずれる趣旨説明もありましたが、フランチャイズ運営の場合の仕組みについては大筋ご理解いただけたかと思います。

続いて、次の項では「未入金」のリスクに対してどのように対応していくべきなのかを具体事例と失敗事例を含めて説明いたします。


未入金リスクがある前兆とは?

学習塾や習いごと教室において未入金リスクが低いとはいえ、全くないわけではありません。以下のような状況は、未入金リスクが高まっている前兆と捉えるべきです。

1. 連絡が取りにくくなる

  • 電話に出ない、折り返しがない: 普段はスムーズに連絡が取れる保護者が、急に電話に出なくなり、メッセージを残しても折り返しがない場合。
  • メールやチャットへの返信が遅れる、またはない: 連絡ツールでのやり取りが途絶えがちになる場合。
  • 教室への来訪がなくなる: 普段は教室に顔を出す保護者が、急に教室に姿を見せなくなる場合。

これらの状況は、支払いの問題だけでなく、何らかのトラブルを抱えている可能性も示唆しています。

支払いが滞るときには、たいてい前兆があります。

2. 支払期日を過ぎて初めて連絡が来る

  • 「今月は少し遅れます」など、支払期日を過ぎてから連絡が来る場合。一度でもこのパターンがあると、今後も同じことが起こる可能性があります。
  • ただし、今は共働きをされているご家庭が多く、塾の費用はお母さんがパート収入から捻出しているケースもあります。その際は、パート先の給与支払いの時期によって塾の費用支払いがどうしても引落日に間に合わないということもあります。その際は、引落ではなくお振込みをしてもらうパターンとなるため、毎月のようにお振込み措置をとられる方もいらっしゃいます。この場合は、パートの支払いサイトの問題ですから、連絡がきちんとあるうちは、対応が滞ることはあまり発生しないです。

3. 2か月未入金が続く

これは明確な危険信号です。1か月の未入金は「うっかり忘れ」や「一時的な資金繰りの問題」である可能性もありますが、2か月連続となると、意図的な滞納や深刻な経済状況に陥っている可能性が高いと考えられます。この段階で、早急かつ慎重な対応が必要です。

ただし、上述のようにパート先の給与支払い日に関してのこともありますので、まずは状況把握に努めていきましょう。
基本的にこう考えたいです。

「保護者さまは、わが子のために一生懸命仕事を頑張っているのだ」という感覚です。

4. 3か月未入金が続く

最終警告に近い状態です。3か月連続の未入金は、支払いの意思がない、または支払い能力が著しく低下していると判断せざるを得ません。この状況まで放置すると、回収が非常に困難になるだけでなく、子供の学習機会も長期間失われることになります。

さて、こうなると放置はできません。
そのうち支払ってくれるだろう、次はまとめて支払ってくれるだろう、などの希望的観測はもつのは厳禁です。

では、次の項に移る前に、弊社が15年でたった一度、結局未入金で断念した事例を紹介します。基本的にCROSS M&A (クロスM&A)のアドバイザーは、オープンな性格です。そして明るいです!
BATONZでも伝えてありますが、
信条としては、自分は失敗体験を皆さんに知ってほしいと思っているのです。

成功体験ではなく、失敗体験です。

私がした失敗体験をしないようにすれば、皆さんは必ず成功します。


【未入金事例】

15年の実務経験の中でたった一度、たった一事例の未入金で断念した事例です。
あれはもう何年前でしょう。そうなった経緯や、金額は覚えていますが、いつのことだったか記憶からは薄らいでおります。

とある女子生徒さん(仮称:B子さん)のご家庭は、お父さんがアフリカの方で、お母さんは日本の方でした。B子さん自身はとてもまじめで、素直に言うことを聞いてくれるお子さんでした。学力的には相当頑張らないといけない状態でしたが、やる気に満ち溢れていました。
最初の2か月ぐらいはふつうだったのですが、3か月目から滞納が発生し、そこから2か月3か月と続いたときに、「これはいよいよまずいかも」と思うようになりました。

そんな事態でもB子さんは自習も含めよく通ってくれて頑張っていましたので、親御さんに対しての連絡や措置が少々心苦しく感じました。
お父さんはアフリカの方ですから、日本語は通じません。従ってお母さんに対しての連絡、メール連絡で、お支払いをお願いしていました。

最初のころはそのメールにおけるお支払い依頼に対しても丁寧に返してくれていたのですが、そのうち、お母さんのメールの言葉が相当荒くなってきました。
これには驚きましたが、いわゆる逆切れということでしょうか・・・。

埒があかないと判断し、数か月後、内容証明を送達しました。後にも先にも内容証明はそのときが初めての経験でした。

内容証明郵便を送達した後もメールや電話で連絡をしましたが、結局支払いがされず、これも後にも先にも初めての経験でしたが、少額訴訟をやることにしました。
ネットでやり方を調べて、弁護士には依頼せず全部自分でやりました。しかし、裁判所で受理してもらうために、何度か書類の差し戻しをされました。
こういうのは弁護士さんであればパーフェクトにできるのでしょうけれど、私はそのときのが初めてでしたので、直されるところが多かったのです。

直すべきところには、付箋がべたべたと貼られて差し戻されて、また出す。また差し戻しがあり、また出すということで、3回目にようやく受理されて、裁判の日時が決まりましたが、案の定相手は現れず、私だけが行きました。
裁判は多分5分ぐらいで終わりました。

お母さんは来ていないのですから、当方の主張を全面受理で、あっけなく終わりました。
しかしながら、その結果が郵送されてもお母さんからの支払いはありませんでした。要は裁判をしたところで、無駄な案件だったということです。
その先に進めていこうという気力はありませんでした。

と言いますか、もうB子さんの受験期に差し掛かっていましたこともあり、自然と心のなかで「これはもうあきらめよう・・」という結論を出していたのです。

これが唯一の未入金で、金額は合計約18万円です。
これがなかったら15年間の未入金はゼロです!と堂々と言えたのですが残念です。


どのような措置をとるべきか?

未入金が発生した場合、段階を踏んで適切な措置をとることが重要です。最終手段に訴える前に、できる限りの手を尽くし、円満な解決を目指しましょう。

1. 早期の確認と連絡(1か月未入金)

  • 入金状況の確認: まずは自社の入金状況を正確に確認します。システムエラーや経理処理上のミスがないか再確認します。
  • 丁寧な連絡: 支払期日を過ぎて数日経過しても入金がない場合、まずは電話で丁寧に入金確認の連絡をします。「お忙しいところ恐れ入りますが、〇月分の授業料のご入金が確認できておりません。もし行き違いでしたら申し訳ございません。」といった低姿勢での確認が効果的です。
  • メール・SMSでのフォロー: 電話が繋がらない場合は、メールやSMSでも同様の内容で連絡します。
  • 支払い期日の再確認: 連絡が取れた場合、支払い期日や支払い方法について改めて確認し、支払い忘れや口座情報の誤りがないかを確認します。

2. 再度のアプローチと確認(1か月半~2か月未入金)

  • 「〇月分および〇月分の月謝について」と明確に伝える: 2か月目に突入しても未入金が続く場合、連絡のトーンを少しだけ引き締めますが、感情的にならないよう注意します。「〇月分および〇月分の授業料について、未だご入金が確認できておりません。ご多忙の折、大変恐縮ですが、至急ご対応いただけますようお願い申し上げます。」など、具体的な月数を明記します。
  • 支払いの意思確認: 連絡が取れた際に、支払いの意思があるか、何らかの事情があるのかを丁寧に聞き出します。
  • 支払い計画の相談: 保護者が一時的に経済的に困難な状況にある場合、分割払いや支払い期日の延長など、現実的な支払い計画を提案することも検討します。ただし、書面での合意形成が必須です。

ここまでの対応をして未入金のまま支払われないというケースは本当に本当にレアです。それは学習塾や習いごとという業種独特の
プレイヤーとお金を出す人が異なるという特殊なサービス業であるがゆえのことです。

3. サービスの停止と書面での通知(2か月~3か月未入金)

  • サービスの停止検討: 2か月以上の未入金が続く場合、サービスの提供を停止することを検討します。ただし、いきなり停止するのではなく、事前に保護者にその旨を明確に伝えます
  • 書面での通知: 電話や口頭でのやり取りだけでなく、書面(郵送)で未入金の状況と今後の対応について通知します。この段階で、例えば「〇月〇日までに〇月分、〇月分の月謝のご入金がない場合、誠に遺憾ながら、〇月〇日をもって授業の提供を停止させていただきます。」といった具体的な期限と措置を明記します。書面は、普通郵便ではなく特定記録郵便簡易書留など、送付記録が残る形式で送ることをお勧めします。
  • 退塾の意思確認: 支払いが困難であれば退塾を検討するよう促すなど、保護者にとっての選択肢も提示します。

4. 最終手段の検討(3か月以上未入金)

3か月以上未入金が続き、上記の措置を講じても改善が見られない場合、いよいよ法的な手段を視野に入れることになりますが、その前にできることがあります。

  • 内容証明郵便の送付:
    • 目的: 内容証明郵便は、「いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送ったか」を郵便局が公的に証明してくれる郵便です。これにより、相手方に「そんな書類は受け取っていない」と言われるのを防ぎ、支払いを求める意思が本気であることを伝える強いプレッシャーになります。
    • 記載内容: 未入金の詳細(月数、金額)、これまでの経緯、支払い期限、期限までに支払われない場合の法的措置を示唆する文言(例:法的措置を検討せざるを得ません)を記載します。
    • 効果: 内容証明郵便が届いただけで、多くのケースで支払いに応じる場合があります。法的手段を避けたいという心理が働くためです。
  • 少額訴訟の検討:
    • 目的: 60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用できる、簡易的な裁判手続きです。原則として1回の審理で判決が出るため、迅速な解決が期待できます。
    • 手続き: 申立書を作成し、管轄の簡易裁判所に提出します。
    • メリット: 弁護士を立てなくても比較的容易に手続きを進められ、費用も抑えられます。
    • デメリット: 相手方が異議を申し立てると通常訴訟に移行する可能性があります。
    • 注意点: 少額訴訟を提起する前に、相手方の支払い能力の有無や、訴訟費用に見合う回収が見込めるかを慎重に検討する必要があります。

実際に弊社はたった一例とは言え、少額訴訟までいった事例があるのですが・・・・非常に高い確率で保護者さんはきちんと支払ってくれます。

そこまでいかずとも回収できるケースが多い理由

最終的な法的措置に訴える前に回収できるケースが多いのは、以下の理由からです。

  • 教育サービスへの価値認識: 保護者は子供の教育の重要性を理解しており、サービスを停止されたり、法的なトラブルに発展したりすることは避けたいと考えます。
  • 社会的な信用: 月謝の滞納は、子供が通う場所での信用を失うことにつながります。特に地域社会に根差した教室の場合、悪い評判が立つことを懸念します。
  • 子供への影響: 未入金が原因で子供が塾や教室に通えなくなることは、子供にとって精神的な負担となることを保護者も理解しています。
  • 初期段階での丁寧な対応: 運営者が早い段階で丁寧かつ毅然とした態度で連絡を取り、支払いへの協力を促すことで、多くの場合、未入金が長期化する前に解決します。

ここの理由箇所をご覧いただければ、「確かにそうだろうな」とイメージがわくと思います。保護者、お父さん、お母さんとはそういう存在なのです。


まとめ

学習塾や習いごと教室は、他の業種に比べて未入金リスクが低い業態であると言えます。しかし、ゼロではありません。
未入金が発生した際には、まず入金状況を正確に把握し、早期に丁寧な連絡をすることが最も重要です。それでも解決しない場合は、段階的に書面での通知やサービスの停止を検討し、最終的には内容証明郵便や少額訴訟といった法的手段も視野に入れることになります。

重要なのは、未入金のサインを早期に察知し、感情的にならず、毅然とした態度でかつ丁寧に、そして段階を踏んで対応することです。そうすることで、ほとんどのケースにおいて、最終的な法的手段に訴えることなく、円満な解決に導くことができるでしょう。

未入金は経営を圧迫する要因となりかねないため、日頃からの入金管理体制の構築と、万が一の際の冷静な対応策を確立しておくことが、安定した教室運営には不可欠です。

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