学習塾経営は「儲かる」のか?「儲からない」のか?具体的な戦略で「儲かる」塾を目指す
ビジネスは、すべてにおいて成功と失敗が隣り合わせの厳しい世界と言えます。どんなに順風満帆に見える会社でも、事業における失敗経験がゼロというところはほぼないと思います。
違った視点で見れば、大きなコストをかけたから儲かるとも限らず、成長性に疑問を持っていたからスモールスタートにしたものの、予想外の反響がある場合もあります。
経営はギャンブルではありませんが、その先を読むにしても見えない部分もあります。
学習塾や習いごと経営はどうでしょう。
この記事では、学習塾経営・習いごと経営が「儲かる」のか「儲からない」のか、その実態を深掘りし、具体的に「どうしたら儲かりやすいのか」について、経験に基づいた実践的な視点から解説します。

1. 学習塾経営の現状:「儲かる」塾と「儲からない」塾の二極化
まず、学習塾経営の現状を理解することが重要です。残念ながら、全ての学習塾が儲かっているわけではありません。しかし、それはどの業界でもあり得ることですので、恐れることはありません。
生徒募集に苦戦し、経営が立ち行かなくなる塾もありますが、フロアを今すぐ拡大しなければ、募集を打ち切らなければならないという盛況塾もあります。
「儲からない」塾の特徴
- 競合との差別化ができていない: 多くの塾が乱立する中で、自塾の強みが明確でなく、他の塾と同じようなサービスを提供している場合、生徒は集まりにくいでしょう。
- 立地条件が悪い: 駅からのアクセスが悪かったり、人通りが少ない場所にある塾は、生徒の目に触れる機会が少なく、集客に苦戦します。
- 固定費が高すぎる: 賃料や人件費などの固定費が高すぎると、生徒数が伸び悩んだ際に赤字に転落しやすくなります。
- 効果的な集客戦略がない: チラシ配布やホームページ作成だけで満足し、ターゲット層に響くようなプロモーションができていないケースです。
- 質の高い講師がいない・育成できていない: 生徒の成績向上に直結する講師の質が低いと、保護者の信頼を失い、退塾につながります。
- 時代に即した教育を提供できていない: デジタル化や個別最適化のニーズに対応できていない場合、生徒や保護者から選ばれにくくなります。
箱ものが同じであっても人が変われば業績が変わります。立地と家賃の部分を除けば、差が出るのは教室責任者の在り方によってです。
何事にも前向きで明るい教室長が運営する教室と、暗い様子であまりやる気が感じられない教室長が運営する教室では結果は火を見るより明らかです。
この観点からすると、成功か否かは「人」にかかっている部分が大きいといえます。
経営にかける思いは経営者が一番です。
ですから、オーナー自らが教室長を務めるという第一歩が踏み出せると成功しやすいです。そしてだんだんと組織が拡大していったならば、オーナーが今度は少し引いた形で全体を見るというスタイル意向ができると理想です。
「儲かる」塾の特徴
一方で、安定的に「儲かる」塾も存在します。これらの塾には共通する特徴があります。
- 明確なコンセプトとターゲット設定: 誰に、どのような価値を提供するのかが明確で、それに合わせた指導内容や教材を提供しています。
- 効果的なマーケティング戦略: 口コミ、SNS、地域密着型のイベントなど、多角的な視点から集客活動を行っています。
- 質の高い講師陣と充実した研修制度: 生徒の成績向上にコミットし、定期的な研修を通じて講師の質を維持・向上させています。
- 生徒一人ひとりに寄り添った個別指導: 生徒の学習状況や目標に合わせたきめ細やかな指導を提供し、成果を出しています。
- 保護者との密なコミュニケーション: 定期的な面談や学習状況の報告を通じて、保護者との信頼関係を築いています。
- ICT教育の導入など、時代に合わせた教育の提供: オンライン授業やAI教材など、最新の技術を積極的に取り入れ、学習効果を高めています。
- コスト管理の徹底: 無駄な経費を削減し、収益性を高めるための努力を怠りません。
マネージャーですからどんぶり勘定では数字の把握は出来ません。雇われの教室長であっても一つの教室を任されたならば、それは立派な経営者です。経営者は数字の把握をしていなければ、どんどん流されてしまいます。
数字は大きく「入ってくるお金」と「出ていくお金」です。出ていくお金は、販売管理費と言って運営にかかるすべてのコストを指します。
入ってくるお金については、
顧客単価×顧客数
というこの式をずっと頭にインプットしておくといいです。
これはどんな商売にも当てはまる計算です。これが売上高になります。
学習塾経営ではここに特殊要素が加算されます。特殊とは言え、それは売上高換算するのですが、やり方によってここで大きな差が出るため、敢えて「特殊」と書かせていただきました。
それは「講習」です。
春期、夏期、冬期などの講習要素は、何もアクションを起こさなければ期待値以下の結果になり、アクションを起こしたら起こしただけどの結果が得やすいのです。
これも教室長(塾長)と言われる教室責任者が何を実施したのかによって大きく変わります。
(※この講習については、これから複数回、記事を書いていきますで、ご確認ください)
2. 具体的にどうしたら「儲かりやすい」学習塾になれるのか?
では、具体的にどうすれば「儲かりやすい」学習塾を目指せるのでしょうか。ここでは経験に基づいた具体的な戦略を提示します。
2.1. 徹底的な市場調査と差別化戦略の構築
学習塾を開業する前に、あるいは既存の塾を立て直す際に最も重要なのが、徹底的な市場調査です。
- 競合他社の分析: 競合塾の立地、料金体系、指導科目、特徴、強み、弱みを詳細に分析します。
- ターゲット層の特定: どの学年層、どのような学力層の生徒をターゲットにするのかを明確にします。例えば、難関校受験専門塾、補習メインの塾、不登校支援塾など、特化することで差別化を図れます。
- 地域特性の把握: その地域の教育ニーズ、保護者の教育に対する価値観、所得水準などを把握します。
これらの分析結果に基づき、自塾の「強み」を明確にします。例えば、
- 「○○専門塾」としてのブランド化: 特定の科目(例:英語専門塾、算数専門塾)や、特定の入試形態(例:推薦入試専門、内部進学専門)に特化することで、専門性を高めます。
- 「個別最適化された指導」の徹底: AI教材やオンライン学習ツールを活用し、生徒一人ひとりに合わせた学習プランと指導を提供します。
- 「体験型学習」の導入: 実験教室やフィールドワークを取り入れるなど、座学だけでなく体験を通じて学べる機会を提供します。
- 「地域密着型」のサービス: 地域のお祭りやイベントへの参加、地元の学校の定期テスト対策に特化するなど、地域に根差した塾を目指します。
ここでの一番重要なキーワードは差別化戦略です。
差別化を図るというのは、どういうことなのでしょうか。
一言で言うと、他にはなくてウチにはあるサービス!他はどこもやっていなくてウチだけがやっているサービス!
これを展開して一定以上の支持を得ることを「差別化戦略」といいます。
他人がやっていないことをただやるのであれば、それは誰でもできますが、支持を得るところまでいくことで明確な戦略となるのです。
【実例】
高校入試の平均点予想をどこよりも早くUPする!ということで、ブログサイトに掲載し続けていたら、いつの間にかSEOが効いて、1ページ目の限りなく上のほうに表示されるようになりました。そのときは、通常の10倍ぐらいのページビュー(PV)がありました。
その後、千葉市の保護者さんから突然電話が2名連続でありました。
「うちの子が、県千葉を受けたのですが、自己採点で430から440点ぐらいとのことでした。先生から見て、どうでしょうか?」
千葉市は私たちの完全なテリトリー外で、学習塾の特性から考えれば、そこから通ってくることはありません。
でも記事が一気に拡大し、このお電話のあと、もう一本違う保護者さんからお電話をいただきました。
(顧客にはならない)ということは初めからわかっていても、丁寧に、まるで目の前にその保護者さんがいるかのように一所懸命説明をしました。合格発表前の保護者の気持ちは、居ても立ってもいられないのです。
少しでもそのときの会話が親御さんの気持ちを鎮めることに役立ったならばそれも一つの社会貢献です。
この経験が合って、以来毎年 管轄下の教室で「予想」を出すようにしています。
これのいわゆる「バズらせかた」はコツがあります。
そういうこともCROSS M&A(クロスM&A)はものすごく得意です。しかもお金をかけないでやるのです。
2.2. 質の高い講師陣の確保と育成
学習塾の品質は、講師の質に大きく左右されます。
- 採用基準の明確化: 学力だけでなく、生徒への熱意、コミュニケーション能力、責任感などを重視した採用を行います。
- 充実した研修制度: 採用後も、指導方法、生徒との接し方、保護者対応など、定期的な研修を通じて講師のスキルアップを図ります。模擬授業やロールプレイングを導入することも有効です。
- モチベーション維持のための仕組み: 成績向上に貢献した講師へのインセンティブ制度、定期的な面談によるフィードバック、キャリアパスの提示など、講師が長期的に働きたいと思える環境を整備します。
- 社員講師とアルバイト講師のバランス: 塾の規模や特性に応じて、社員講師とアルバイト講師のバランスを最適化します。社員講師は塾の理念を共有し、指導の質を担保する役割を担い、アルバイト講師は柔軟な人員配置を可能にします。
講師の質を高める方法として、もっともいい方法は、経験の有無よりも「明るさ、素直さ、学力」を面接のときにしっかりと見極めるといいです。
学力は、試験を課せばわかります。明るさも対応していればすぐにわかります。しかし素直かどうかは雇用してみないと見えてこない部分があるのですが、これも適性を図るようなアンケートを実施すると意外とすぐに発見できます。
2.3. 効果的な集客・マーケティング戦略
生徒を集めることができなければ、塾は成り立ちません。
- Webサイト・SNSの活用: 塾のコンセプト、指導方針、講師紹介、生徒の声などを魅力的に発信するWebサイトを構築します。Instagram、X(旧Twitter)、LINE公式アカウントなどを活用し、ターゲット層に合わせた情報発信を行います。
- SEO対策・MEO対策: Google検索で上位表示されるようにSEO対策を行い、Googleマップでの検索(MEO対策)にも力を入れます。
- 無料体験授業・説明会の実施: 実際に塾の雰囲気を体験してもらうことで、入塾へのハードルを下げます。体験授業後の丁寧なフィードバックや、個別相談の時間を設けることも重要です。
- 口コミの促進: 既存の生徒や保護者からの口コミは、最も強力な集客ツールです。満足度の高いサービスを提供し、積極的に口コミを書いてもらうよう促します。紹介キャンペーンなども有効です。
- 地域イベントへの参加・共催: 地域のフリーマーケット、文化祭、学習イベントなどにブースを出したり、自塾で学習相談会などを開催したりすることで、地域住民との接点を増やします。
- ポスティング・折り込みチラシ: ターゲット層が住む地域の世帯に、効果的なキャッチコピーやデザインのチラシを配布します。ただし、単なる宣伝だけでなく、地域に貢献する姿勢を示すことが重要です。
- 教育機関との連携: 学校の先生や地域の教育関係者との良好な関係を築き、情報交換を行うことで、紹介につながる可能性があります。
学習塾や習いごと教室の集客は、時代とともに変化しています。以前は新聞折込が広告宣伝費の中に確実に組み込まれるべきものでしたが、新聞そのものの購読数が大きく減少していきますので、広告の浸透が難しい場面もあります。
学習塾をそろそろ通わせようか、習いごとに行かせようか、そのように保護者さんが考えたときに、まずはじめに取る行動は、多分ネット検索になるのではないでしょうか。
例えば「〇〇駅 そろばん」とか「〇〇市 個別指導」とか「〇〇中学 学習塾」とか、そのようなキーワードを入れながら探されます。
ここでは上2つに挙げた、ネット系の戦術が必須だと思います。
2.4. 顧客満足度を高めるサービス提供
生徒や保護者の満足度が高いほど、継続率が上がり、口コミにもつながります。
- 個別面談の充実: 定期的に生徒や保護者との面談を行い、学習状況の進捗報告、悩み相談、進路相談など、きめ細やかなサポートを提供します。
- 成績向上へのコミット: 生徒の目標達成に向けて、具体的な学習計画の立案、進捗管理、定期的なテスト実施とフィードバックを行います。
- 学習環境の整備: 集中できる自習スペースの提供、清潔で明るい教室環境、最新の教材やITツールの導入など、生徒が快適に学べる環境を整えます。
- 保護者への情報提供: 生徒の学習状況だけでなく、入試情報、教育トレンドなど、保護者が知りたい情報をタイムリーに提供します。
- 柔軟な対応: 急な振替授業、オンラインでの補習など、生徒や保護者の都合に合わせた柔軟な対応を心がけます。
口コミは、非常に大切です。これは新規開校時点では多く集まりませんが、運営年数が増えてくると自然発生してきます。
合格直後などの保護者さんに「口コミのお願い」をするのも一つの手です。
やってはいけないのは、自分が自分の教室の口コミをするというやり方です。自作自演というものですね。IPアドレスとかでわかりますし、もしそれをスタッフにやらせて・・・と考えるならば、やめたほうがいいです。
スタッフが内部告発でもしたら、一気に信用が失墜します。
2.5. 徹底したコスト管理と経営分析
「儲かる」塾になるためには、収益性を高めるためのコスト管理が不可欠です。
- 固定費の削減: 賃料は売上に大きな影響を与えるため、立地と賃料のバランスを慎重に検討します。人件費も重要な要素であり、講師の最適な配置や効率的なシフト管理を行います。
- 変動費の管理: 教材費や消耗品費など、生徒数に応じて変動する費用も適切に管理します。
- 損益分岐点の把握: 何人の生徒を集めれば、利益が出るのかを常に把握し、目標設定に役立てます。
- 月次・年次決算の分析: 定期的に経営状況を分析し、問題点を早期に発見し、改善策を講じます。特に、生徒一人当たりの売上高、人件費率、広告宣伝費率などの指標を追跡することが重要です。
- ITツールの活用による効率化: 生徒管理システム、勤怠管理システム、オンライン決済システムなどを導入し、事務作業の効率化を図ることで、人件費削減やサービス向上につなげます。
上述のとおり、コストは販売管理費にあたります。大きいのは家賃と人件費です。削れるにも限界がありますので、運営の手法であるとか、支払い手数料の項目でカットできるものはないだろうかと考えるのも手です。
運営の手法というのは、講師の登用の仕方です。
例えば、複数人の学生講師を雇い入れて、入れるか入れないかわからないシフトで、くみ上げることが毎月大変だ・・・ということであれば、社会人講師でしっかりと責任もって勤務してくれるスタッフがフルタイムで稼働したほうが実はコスト低減になる可能性があるかもしれません。
支払い手数料の分野は、突き詰めれば意外と簡単にコストカットが出来ます。
学習塾や習いごと教室の場合は、システム利用料です。
例えば、保護者さんへの報告システムを別契約で結んでいる場合とか、問題作成システムなどを別個結んでいる場合などです。
これは、もしCROSS M&Aへご依頼いただければ無料で作成補助していきますので、是非とも頼ってほしいです。
2.6. 最新の教育トレンドへの対応
教育業界は常に変化しています。
- ICT教育の導入: オンライン授業、AIを活用した個別最適化学習、デジタル教材など、ICT技術を積極的に取り入れ、学習効果の向上と効率化を図ります。
- プログラミング教育やSTEAM教育への対応: 新しい学習指導要領や社会のニーズに合わせて、プログラミング教育やSTEAM教育の導入も検討します。
- 非認知能力の育成: 学力だけでなく、思考力、判断力、表現力、課題解決能力といった非認知能力を育む指導を意識します。グループワークやディスカッションを取り入れることも有効です。
3. 学習塾経営におけるリスクと成功の秘訣
学習塾経営には、当然ながらリスクも存在します。
- 少子化: 生徒数の減少は、長期的な経営に影響を及ぼします。
- 競合激化: 新規参入や大手塾の展開により、競争が激化する可能性があります。
- 講師の確保・定着: 質の高い講師の確保と定着は、常に課題となります。
- 災害・感染症: 予期せぬ事態による休校や売上減少のリスクがあります。
これらのリスクを認識しつつ、成功するためには以下の秘訣が不可欠です。
- 情熱と教育理念: お金を儲けることだけを目的とするのではなく、「生徒の成長に貢献したい」という強い情熱と明確な教育理念を持つことが、塾を継続させる原動力となります。
- PDCAサイクルの徹底: 計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)のサイクルを常に回し、問題点を改善し続ける柔軟な姿勢が重要です。
- ネットワーク構築: 他の塾経営者や教育関係者との情報交換を通じて、最新の情報を入手し、経営のヒントを得ることが大切です。
- 変化への適応力: 時代の変化や生徒のニーズに合わせて、指導方法やサービス内容を柔軟に変化させる適応力が求められます。
まとめ
学習塾経営は、「儲かる」可能性を秘めたビジネスです。
しかし、そのためには明確なコンセプト、質の高い指導、効果的なマーケティング、そして徹底したコスト管理が不可欠です。単に「教える」だけでなく、「生徒の成長を最大限に引き出す」という強い信念を持ち、常に変化に対応し、改善を続けることで、地域に愛される「儲かる」学習塾を築き上げることが可能になります。

