学習塾の多店舗展開:2教室目の開校は「新規」か「譲渡」か?
すでに学習塾を経営しているオーナー、あるいは法人として塾運営に携わる皆さんにとって、2教室目以降の展開を検討したことがあるかと思います。
店舗展開は事業拡大の大きな鍵となるのは確かです。
しかし、その最初のステップとして「新規開校」と「既存教室の譲渡案件取得」のどちらを選択すべきか、頭を悩ませる方も少なくないでしょう。
塾運営のノウハウをすでに持ち、現場の苦楽を知り尽くした皆様だからこそ、それぞれの選択肢が持つメリット・デメリット、そして最も気になるコストについて、深掘りして考えてみましょう。

新規開校のメリット・デメリットと想定コスト
新規開校の最大の魅力は、ゼロから理想の塾を作り上げられる点にあります。
立地選定から内装デザイン、教室の電話番号選び、什器選定や事務用品を揃えること、新規の講師採用、そして研修と、全てを自分が自由に設計して、思い通りに取捨選択しながら進めていくので、この「つくりあげる」という作業は、何ものにも変えがたい面白さがあります。
既存の1教室目との連携やブランドイメージの統一もスムーズに行えれば、自分のフィールドが分身したように拡がりますので、人材さえ整えば、一気に売上高を拡大することも可能です。
メリット
- ブランディングの統一性: 既存の教室と全く同じコンセプトやデザインで統一できるため、顧客からの認知度向上やブランド力の強化に繋がります。
- 最新設備の導入: 最新のICT教育ツールや快適な学習環境を導入し、他塾との差別化を図れます。
- 人材育成の自由度: 既存の組織文化に合わせた人材を育成し、長期的な視点での組織力強化が可能です。もし、ドミナントでの出店であれば、1号教室から2号教室へのヘルプ勤務が出来れば、それぞれの教室の講師たちの交流が図れます。
デメリット
- 初期投資の大きさ: 物件取得費、内装工事費、什器備品、広告宣伝費、人件費など、立ち上げにかかる費用が多岐にわたります。1号教室の成功と同じように進めば、これらの資金回収も進みますが、やはり最初の出費としては小さくはないでしょう。
- 集客の難易度: 認知度がゼロからのスタートとなるため、生徒募集に時間とコストがかかります。軌道に乗るまでの期間は赤字を覚悟する必要があるかもしれません。
- 事業計画の不確実性: 予測と異なる市場環境や競合の出現など、不確定要素が多く、事業計画通りに進まないリスクがあります。
想定コスト
新規開校にかかる費用は、立地や規模、内装のこだわりによって大きく変動しますが、一般的な都市部の小・中規模塾(生徒定員50~70名程度)の場合、初期投資として1,000万円から1,800万円以上を想定しておく必要があるでしょう。
あまり幅がありすぎると、余計混乱してしまうかもしれませんので、
【実例】
以下は仮に30坪程度の物件で始めた場合、という想定で計算してみます。
内訳としては、
- 物件取得費(敷金・礼金、仲介手数料、前家賃など):180万円
※これは、家賃30万円としての推定計算です。 - 内外装工事費:80万円
※内装は事務所仕様で、LED照明の追加、外装は内照式看板など - 什器備品費(複合機、机、椅子、ホワイトボード、PCなど):100~250万円
- 広告宣伝費(開校時):60万円
- 雑費30万円
- 運転資金(人件費、家賃など数か月分):200万円~500万円
これに加え、
①融資を受ける場合は金利負担も考慮に入れる必要があります。
②フランチャイズ契約の場合は、2号教室でも100万円程度のコストが
かかるかもしれません。
ザクっというと、今までの経験で申し上げればだいたい30坪教室で言うと、作り上げるまでに1000万円ぐらいかと思います。
ここで物件の前提は、
・事務所仕様物件であること(スケルトンではない)
・エアコンが設備としてついていること
譲渡案件取得のメリット・デメリットと想定コスト
一方、既存の学習塾を譲り受ける(M&A)選択肢は、事業のスムーズな立ち上げとコストとリスク軽減に大きなメリットがあります。
メリット
- 既存の生徒・講師・実績を引き継げる: 生徒ゼロからのスタートではないため、開校直後から安定した収益が見込めます。また、経験豊富な講師陣や塾長を引き継げれば、即戦力となります。
- 事業計画の蓋然性: 過去の実績データがあるため、売上や利益の見込みが立てやすく、事業計画の精度が高まります。
- 開業コストの抑制: 物件の内装工事や什器の新規購入が不要なケースが多く、初期投資を抑えられる可能性があります。
- 認知までの手間を削減: 既存の塾として2年以上運営しているのであればそれなりに認知もされていて、生徒獲得のためのポータルサイトに登録済であれば継承するメリットがあります。
デメリット
- 企業文化や運営方針の調整: 既存の塾の文化や運営方針に、自社の理念や教育方針を浸透させる努力が必要です。反発が生じる可能性もゼロではありません。
- 簿外債務や潜在リスクの可能性: 表面上は見えない債務やトラブル、係争などのリスクが潜んでいる可能性があります。事前のデューデリジェンス(詳細調査)が不可欠です。
- 承継コストの発生: 譲渡対価として、売り手への支払い及び仲介手数料が発生します。
- 情報の非対称性: 買い手側が知り得ない情報(生徒の質、講師のモチベーションなど)が存在する可能性があります。
想定コスト
譲渡案件の取得にかかる費用は、対象となる塾の規模、収益性、ブランド力、地域などによって大きく異なります。譲渡対価は、売上の数ヶ月分であったり、年収の数倍、あるいは利益に一定の倍率をかけたものなど、算出方法は様々です。
一般的な小・中規模塾の譲渡案件の場合、譲渡対価として200万円から1000万円以上となることが多いです。
ただし学習塾や習いごとは一人オーナーで個人経営的にやっている案件も独自、FC限らず多いため、譲渡対価が数十万円という安価なケースも多いです。
これに加えて、
- M&A仲介手数料:譲渡対価の数%~または最低手数料分
- 運転資金(当面の運営費):200~500万円(コストの数か月分)
新規開校と比較すると、初期段階での「安定した収入」が期待できる点が大きな違いと言えるでしょう。
【実例】
ここでも過去事例から紐解き、ザクっといえば、25坪から30坪ぐらいの教室で生徒数が25名残、講師が8名残り、教室長は別途採用する・・・
このようなケースで言うと、
譲渡金としての支払い(300万円)
仲介者への手数料:35万円
物件取得費用:25坪25万円と想定して150万円
あとはフランチャイズ案件であれば、FC加盟料がかかります。FC本部によって金額の差がありますが、350万円前後です。
内外装費用とか什器のコスト、状況によっては内部のパソコンや複合機などもまとめて譲渡ということも多いため、上記計で835万円ですが、少なくとも既存の生徒がいるため、ゼロスタートではありませんから、その部分をメリットとしてとらえることができると思います。
コスト的な差異と意思決定のポイント
新規開校と譲渡案件取得では、それぞれコストの性質が異なります。
項目 | 新規開校 | 譲渡案件取得 |
初期投資 | 物件取得、内装、設備、広告、運転資金など多岐にわたる。一般的に高額。 | 譲渡対価、専門家費用、運転資金など。事業継続性により変動。 |
回収期間 | 生徒募集からのスタートのため、長期化する傾向。 | 既存生徒がいるため、比較的早期の回収が期待できる。 |
リスク | 集客・事業計画の不確実性が高い。 | 簿外債務、文化の衝突、M&A後のPMI(経営統合プロセス)のリスク。 |
最も重要なのは、「何に価値を見出すか」という点です。
- ゼロから理想の塾を追求したい、時間と資金をかけてでもリスクを取り、大きなリターンを目指したいのであれば、新規開校が選択肢となるでしょう。
- 既存の基盤を活用して早期に事業を軌道に乗せたい、リスクを抑えて安定的な収益を確保したいのであれば、譲渡案件の取得が有力な選択肢となります。
また、貴社の経営戦略や財務状況、人材リソースなども総合的に判断材料とする必要があります。
どのような選択でも、CROSS M&Aが強力にサポートします!
新規開校、既存塾の譲渡案件取得、どちらの道を選ばれるにしても、そのプロセスは決して平坦ではありません。
特にM&Aにおいては、複雑な交渉、デューデリジェンス、契約締結など、専門的な知識と経験が不可欠です。
私たちCROSS M&A(クロスM&A)は、学習塾業界に特化したM&A支援のプロフェッショナル集団です。
- 新規開校をお考えの場合でも、立地選定、市場調査、事業計画の策定、資金調達のアドバイスなど、成功へのロードマップを共に描き、具体的なサポートを提供いたします。
- 譲渡案件をご希望の場合、全国のネットワークから最適な売却案件をご紹介し、企業の価値評価、交渉戦略の立案、デューデリジェンスの実施、契約書作成まで、M&Aの全プロセスを一貫して強力にサポートいたします。
貴社の成長戦略を実現するために、どのような選択をされる場合でも、CROSS M&Aが皆様の強力なパートナーとして併走いたします。まずはお気軽にご相談ください。
