塾ビジネスはタイムラグがあっても成長分野である!その理由

はじめに。学習塾・教育・習いごと業界がどんどん下火になっていくことは考えられません。教育産業は求められる仕事ですので、なくならないのです。
しかしながら、教育の在り方などの形、スタイルはどんどん変わっていくことが予見されます。その部分が大きなチャンスと言えます。
日本の学習塾ビジネスは、少子化という大きな逆風に直面しながらも、市場規模が堅調に推移し、一部では成長分野としての様相を呈しています。
これは、マクロな人口動態の変化が市場に影響を及ぼすまでに「タイムラグ」があること、そしてその影響を上回る複数の「構造的な成長要因」が存在するからです。
ここでは、このタイムラグの性質と、成長を支える具体的な理由について、詳細に解説します。
1. 「タイムラグ」の性質と市場の現状
少子化の進行は、将来的に塾に通うであろう子どもたちの絶対数の減少を意味します。
しかし、この影響が塾ビジネスの売上に直接的に、かつ劇的に現れるまでには、いくつかのタイムラグが生じます。
マクロ経済とミクロな教育支出の乖離
少子化は国レベルの課題であり、教育産業全体への影響は不可避です。
しかし、保護者が子ども一人にかける教育費は増加傾向にあり、これが市場全体の底支えとなっています。
子どもの数が減る一方で、「一人あたりの投資額」が増加しているため、市場規模の急激な縮小には至っていません。これが一つ目のタイムラグであり、教育熱の高まりや将来への不安が、市場の縮小ペースを鈍化させている主要因です。
既存顧客基盤と事業転換の時間
塾ビジネスは、一度獲得した生徒が複数年にわたって継続的にサービスを利用する「ストック型ビジネス」の側面が強いです。
そのため、少子化の影響で新規生徒の獲得が難しくなっても、既存の在籍生徒の売上がすぐには落ち込みません。
この既存顧客基盤が、新たな成長戦略(例えば、デジタル化、個別指導の強化、大人向け教育への参入など)を構築し、実行するための猶予期間(タイムラグ)を提供しています。
2. 構造的な成長を支える主要因
塾ビジネスがタイムラグを経てなお成長分野であり続ける理由は、少子化の影響を打ち消し、さらに市場を拡大させる複数の構造的要因があるからです。
① 教育の「個別最適化」ニーズの増大
1. 多様化する入試制度と個別指導の需要 大学入試が一般入試だけでなく、総合型選抜や学校推薦型選抜など、多角的な評価を伴う形へと多様化しています。これに伴い、従来の集団授業では対応しきれない小論文や面接対策、内申点対策、探求学習のサポートといった、個々のニーズに合わせた指導が求められています。個別指導塾の市場拡大は、このニーズの明確な表れであり、少子化時代でも個別の付加価値が高いサービスへの支出は増え続けています。
2. EdTech(教育テクノロジー)の普及 オンライン学習やAIを活用したアダプティブ・ラーニング(適応型学習)システムの導入が進んでいます。これにより、生徒一人ひとりの理解度や進捗に応じて、最適な教材や問題を提供できるようになりました。これは、「個別最適化された学び」を効率的かつ安価に提供することを可能にし、サービス提供の幅と質を飛躍的に向上させています。
② 保護者の教育熱と教育投資の増加
1. 一人っ子・核家族化による教育費の集中 少子化により子どもが一人、あるいは少ない家庭が増えた結果、保護者は子ども一人あたりにかける教育費を増やしています。将来の競争が激化するという懸念から、「わが子にはより良い教育を」という意識が高まり、塾や習い事への投資が集中する傾向にあります。
2. 早期化する受験対策 中学受験のブームや大学入試改革への関心の高まりから、受験対策の低年齢化が加速しています。小学校低学年、さらには未就学児の段階から学習塾や教育サービスを利用する家庭が増加しており、これによって顧客のライフタイムバリュー(LTV)が長期化し、市場を押し上げています。
③ ターゲット層の拡大と新規市場の創出
1. リカレント教育・リスキリング市場の成長 従来の小中高校生を対象とした市場に加え、社会人を対象としたリカレント教育(学び直し)やリスキリング(新しいスキル習得)市場が急成長しています。AIやデジタル技術の進化に伴い、DX人材育成や資格取得、ビジネススキルの習得など、大人の学びに対するニーズが高まっており、これが塾・教育ビジネスの新たな収益の柱となっています。
2. グローバル化と語学教育の強化 企業のグローバル展開や国内の国際化の進展により、英語教育やプログラミング教育といった、将来の国際競争力を高めるための教育への需要が拡大しています。小学校での英語の教科化なども追い風となり、これらの分野に特化した塾・スクールは高い成長を見せています。
3. 不登校生徒への対応 不登校生徒が増加している現代において、フリースクールやオンライン学習システムを活用した「学びの場」の提供は、社会的なニーズが高まっている新しい収益源となりつつあります。
上記には構造的な成長を支える主要因をいくつか羅列しました。そのすべてを為し得ている学習塾はありませんが、上記のいくつかをすでに確立して実践し、一定以上の評価を得ている学習塾は多くなってきています。
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【実例(実話)】
他業界のサービスが教育業界にも浸透しはじめている事例の一つとして、「サブスク」があります。
サブスクとは、「サブスクリプション(subscription)」の略です。
例えば、月額、年額の定額料金を支払うことでその製品やサービスを継続的に、かつお得に利用できる仕組みです。有名なのは、Amazonプライムです。映画やドラマ、音楽などを見放題、聴き放題で利用できます。
サブスクは実は大昔からその原理はありましたが、一般的に「サブスク」という言葉が使われ浸透していったのは、2010年代です。
ですから、まだまだ今後の発展性がある手法と言えるでしょう。
実は学習塾でもサブスクタイプで売上を確保しているところもあるのです。
一般的にAmazonプライムのイメージが強いため、「〇〇放題」というインパクトある言葉を使っていけるので、保護者へのアピールになります。
ただし、これは一回一回の授業で講師を登用する形式の授業では、サブスクというサービスには合いません。
パソコンやipad、アンドロイドデバイスを使った映像形式授業では、コンテンツの提供と言うデジタルデータ提供が出来ますので、親和性が非常に高いと言えるでしょう。
3. 勝ち残る塾に必要な戦略
タイムラグによって生じた猶予期間と成長要因を活かし、塾ビジネスで勝ち残るためには、二極化する市場で明確な差別化戦略が不可欠です。
1. デジタル化による付加価値の創出 単なる映像授業ではなく、AIによる個別最適化、学習データの分析に基づいた進路指導など、テクノロジーを活用した質の高い教育サービスを提供することが重要です。これにより、従来の対面指導では難しかった効率性と個別性の両立が可能になります。
2. 地域ニーズへの密着とブランド力の強化 地域特有の受験情報や学校事情に精通した地域密着型のサービスは、保護者にとって依然として高い価値を持ちます。また、大手塾はブランド力と豊富な実績をもとに、大規模な集客力と一貫した指導カリキュラムで優位性を保ちます。
結論
塾ビジネスが成長分野であるのは、少子化の影響が本格化するまでのタイムラグを、保護者の教育投資の集中と、個別最適化・EdTechの進展、そして社会人向け市場という新たな領域の開拓によって、成長の構造変化に転換できているからです。
競争激化による淘汰は避けられませんが、時代のニーズに応じた高付加価値のサービスを提供できる塾は、今後も持続的な成長が見込まれるでしょう。
少子化でも子どもビジネス市場が急成長してる理由は?
少子化が進む中でも子ども関連ビジネスが成長している背景について、利用者ニーズの観点から解説しているわかりやすい動画がありました。
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事業創造ラボ-経営者支援CH の動画です。わかりやすいです!
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