塾業界の新たなフロンティア:上の年齢層への縦展開と「ワンストップエデュケーション」の提案

塾業界専門誌の最新号巻頭内容
どの教室にも届いている、、、というわけではないと思うのですが、塾業界専門誌がありまして、私が運営する教室にも届きますので毎号、全部を隈なくというと言い過ぎですが、重要なところは読むようにしています。
今月号を見た瞬間の印象は
「あれ?これって、ずっとこのサイトでも推奨、提唱している縦展開の記事じゃないか・・・もしかして、このサイトを見てくれてる?」というプラスの好感度でした。
「教育産業」であるならば、何も「小学生」「中学生」「高校生(高卒生)」にターゲットを絞りこむ必要はないはずです。
「学習塾産業」という少し狭義の内容からこの際風呂敷を拡げて「教育産業」という幅広い層への対応策を考えて、今までの教育スキルを一気に生かして縦の層を拡げていいと思うのです。
そのような思いのもと今、一貫して提唱しているのが「上への縦展開」です。
従来の顧客展開戦略と限界
学習塾業界において、従来の顧客展開戦略は「下への縦展開」が主流でした。
これは、中学受験や高校受験、大学受験をメインとする塾が、将来の顧客確保と囲い込みを目的として、小学校低学年、あるいは幼稚園児、さらには乳幼児向けの教育プログラムへと事業領域を拡大していく動きを指します。
この戦略は、一度獲得した顧客とその家庭を、できるだけ長い期間、自社のサービスに繋ぎとめることを目指すものであり、少子化が進む現代において、顧客一人当たりの生涯価値(LTV: Life Time Value)を最大化するための有効な手段の一つとされてきました。
しかし、この「下への展開」には、いくつかの限界と課題が内在しています。
まず、小学校低学年以下の教育は、学習塾が培ってきた「受験指導」や「成績向上」のノウハウとは異なる、発達段階に応じた非認知能力や基礎的な学習習慣の形成に重点が置かれるため、新たな指導法や教材、指導員の育成が不可欠となり、多大な投資と時間を要します。
また、競合も幼児教育や知育教室といった異業種に広がり、競争が激化します。さらに、最も大きな課題は、教育サービスとしての提供期間に限界があるという点です。
顧客が高校を卒業し、大学へ進学した時点または就職や専門学校入学の場合、当然ながら、塾との関係は途切れてしまいます。
これは、教育が人生における一時的なイベントとして捉えられがちな従来の教育観に基づいています。
塾専門誌が示唆する新たな視点
こうした状況下もあり、つい先日の塾専門の雑誌などで「顧客の縦展開推奨」が巻頭記事として取り上げられていたので、とてもえらい人が書いたのでしょうけれど、私と同意見だったので、少々ほくそ笑んだということです。
「今」「まさに今」
業界内に新たな戦略的視点が芽生えつつあります。
その論点は、従来の「下への展開」に加えて、あるいはそれ以上に、「上への展開」を本格的に考慮すべきであるという提案です。
つまり、顧客の学習人生が途切れる「高校卒業後」こそ、新たな教育サービスのフロンティアと捉える考え方です。
この「上への展開」とは、既存の小中高生に加え、大学生、社会人、シニア層といった、成人期以降の学習ニーズを持つ層を新たな顧客と位置づけ、事業領域を拡大していく戦略です。
このことを「単なる思いつきの顧客層の拡大妄想」と捉えるのも自由ですし、「もしかしたら・・」と可能性を実験してみることも自由です。
発想は自由でいいですし、実際ここで新たに議論するまでもなく、実際の大学生、社会人の人たちが自分たちの生涯学習テーマや必要に迫られて学ばなくはならなくなって机に向かうという需要は、大昔からすでにあります。
このように書いておきながら申し上げるのもなんですが、こういう層の人たちの学習は、取り立てて新しいアイディアでもなんでもないのです。
しかしながら、「学習塾がすでにもっている指導ノウハウや進行の仕方、レベルの違う生徒さんに向けた個々人異なるカリキュラム作成」などは、
学習塾のお株ではありませんか。
学習塾が持つ教育に関する専門的なノウハウや指導システムを、人生のあらゆる段階における「学び」へと拡張していく、教育産業のパラダイムシフトという観点で、着眼点は古かろうが、やる内容が新しければそこにさらにアイディアが生まれるはずです。
「上への縦展開」が求められる背景:社会の変容
この戦略が現代において重要性を増している背景には、社会構造と経済環境の劇的な変化があります。
まず、リカレント教育・リスキリングの必要性の高まりです。
AI技術の進化やグローバル化の加速により、仕事に必要なスキルや知識の陳腐化が早まっています。
企業や個人にとって、新しい技術や知識を継続的に学び直し(リカレント教育)、新たな職務に必要なスキルを習得する(リスキリング)ことが、キャリア形成や企業の競争力維持に不可欠となっています。
このニーズは、大学受験予備校が培ってきた「難易度の高い専門知識を効率的に指導する」ノウハウが活きる分野です。
次に、人生100年時代の到来です。
平均寿命の伸長に伴い、人々のキャリア期間も長期化し、老後の期間も長くなっています。
子どもの数が減ったとしても、生きていくためのスキルを磨こうとする世代、新しいことにチャレンジしようとする世代は増加するのですから、チャンスは多くあります!
定年後も社会との繋がりを持ち続けたい、あるいは趣味や教養を深めたいといったシニア層の学習意欲は非常に旺盛です。
この層は、健康や社会参加に直結する学習内容、例えば、デジタルリテラシー、金融知識、歴史や文化などの教養、趣味実用的なスキルアップ(外国語、アートなど)に強い関心を持っています。
さらに、大学教育の質の担保とキャリアサポートも重要な領域です。既存の大学受験予備校が持つ、高度な科目知識や論理的思考力を養成する指導力は、大学内の専門教育や大学院進学、さらには就職活動における高度な試験対策(公務員試験、資格試験など)といった、大学生の学習ニーズにも応用可能です。
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【実例(実話)】
本屋さんに足を踏み入れてみてください。
各コーナーにどんな本が並んでいて、何が平積みされていて、どんなPOP広告が書かれているのかをぐるりと一回りするだけでも目に飛び込んでくる情報は、まさに今の「時勢」を表していると言っても過言ではありません。
趣味のコーナー、文庫本のコーナー、自己啓発のコーナー、などを見て、是非感じ取ってみてほしいです。
私は個人的に「金融と投資リテラシー」の分野において、学習塾のスキルとミックスさせれば、きっと面白いサービスが出来るだろうと思っております。
何故なら、
①圧倒的に・・・知らない人が多い
②圧倒的に・・・教えられる人が少ない
③圧倒的に・・・需要はあると思う
なぜ、知らない人が多いと思ったのか?
思ったのではなく、実際 知らない人が多いからです。
なぜ、教えれる人が少ないと思ったのか?
経済アナリストやストラテジストっぽい解説や、専門用語をたくさん使った これでもか!という「俺ってプロだろ感」そんなものは一般の人にはいらないのです。
難しいと思っている内容を難しく説明するのがうまいひとはいっぱいいます。でも難しいと感じられている金融や投資の世界のことを、超わかりやすく説明できる人はものすごく少ないです。
なぜ、需要はあると思ったのか?
はい、ここで先ほどの画像でも示した「本屋さんに行ってごらんよ」に戻るわけですが、行けばわかります。
「こんなにお金とか投資に興味ある人がいっぱいいるんだ!(実際当然ですが)」ということを目の当たりにし、
ペラペラぺラと中身を見て確信するのです。
なるほど、この本って、(なるほど、この雑誌って)がっつり読破して理解納得!という人はほぼいなかろう・・・・
(しめしめ、これはチャンスなり)
と。
理論は書いてありますが、具体的な実践例などは、ほぼ書いてないです。私が見ている本や雑誌は全部ではありませんし、全部に目を通す時間もなくて申し訳ないのですが、ランダムに手にとってみた感想は、上のようなものなのです。
「ワンストップエデュケーション」構想の具体化
このような社会の要請に応え、学習塾が目指すべき理想的な姿こそが「ワンストップエデュケーション」です。
「ワンストップエデュケーション」とは、単に小中高生から社会人までを対象にすることではありません。それは、「顧客の誕生から生涯にわたる学習ニーズに対して、一貫性のある教育サービスを提供し続ける」という、学習塾のアイデンティティを再定義する試みです。
この構想を具体化するためには、事業を以下のフェーズで展開することが考えられます。
1. 大学生・資格試験層への展開
既存の大学受験予備校のインフラを最も活かしやすい領域です。
- 公務員・難関資格試験対策: 大学受験の指導ノウハウを応用し、論理的思考力や暗記法、時間管理といったスキルセットを活かした専門講座を開設します。
- 大学内の専門科目サポート: 特に理系分野や経済学など、専門性が高い科目の補習やハイレベル指導を提供します。
- 就職活動支援: SPI対策、ロジカルシンキング、面接対策など、キャリアセンターと連携できるサービスを展開します。
2. 若手社会人・ビジネス層への展開
リカレント教育とリスキリングのニーズを直接取り込む領域です。
- ビジネススキルアップ講座: データ分析、プログラミング、デジタルマーケティング、プレゼンテーション、ロジカルライティングなど、即戦力となる実務スキルを教える講座を開発します。
- 語学・国際教養: グローバルビジネスに対応するための高度なビジネス英語や第二外国語、異文化理解講座を提供します。
- マネジメント・リーダーシップ教育: 企業研修のニーズを取り込み、管理職層向けのプログラムを開発します。
3. シニア層・生涯学習層への展開
健康と生きがい、知的好奇心の充足を満たすサービスを提供します。
- デジタル・ITリテラシー: スマートフォンやタブレットの操作、インターネットバンキング、AIなど、現代生活に必要なデジタル知識を丁寧に教える講座。
- 教養・趣味実用: 歴史、文学、哲学、美術鑑賞といった教養講座や、健康維持のためのマインドフルネス、運動プログラムなど、学習と生活が結びついたサービス。
- キャリアセカンドステージ支援: 定年後の起業やボランティア活動、地域社会への貢献を見据えた学びの機会を提供します。
例えば、このような想定はどうでしょう。
↓
学習塾における小中学生の時間割が大方15時台から夜の時間に集中していきます。運営上の時間面から、もっとも可能性が拡がるのが、3番のシニア層、生涯学習層への展開です。
何故なら、これらの顧客層は朝の時間から学びが可能だからです。
例えば、朝8時から13時や14時までの5時間、6時間をそのようなシニア層向けの時間に充てるなどです。
または、来られる日程が限定的であれば、オンラインでの展開をメインとして、実践演習期間としてスクーリング的に、システムを使った模擬演習などをする時間にするなどです。
金融や投資を覚えるのに、難しい用語を覚えてもほとんど役に立ちません。それは独りよがりな自己満足の世界でありまして、200個の難しい用語を覚えたところで、お金など1円も増えませんので、あまりそこに意味のない時間を費やすのはそれこそ時間の無駄です。
よって、私が考える講座は、実践7割ぐらいを推奨したいです!
システムはどんなに偉い人が講釈垂れても、その後使えなければその人にお金を払うメリットが微塵もないのです。
実践です。
実践あるのみです。
実践から学ぶものは、退屈な講義よりも貴いです。
「ワンストップエデュケーション」の経営的メリット
この「ワンストップエデュケーション」戦略は、社会的な貢献度が高いだけでなく、学習塾の経営にも多大なメリットをもたらします。
- 顧客LTVの最大化: 顧客が卒業後も学びを続ける限り、継続的な収益を生み出すことが可能となり、顧客生涯価値が飛躍的に向上します。
- 季節変動・景気変動リスクの分散: 受験シーズンに依存しがちな小中高生部門の売上と異なり、社会人層の学習ニーズは年間を通じて発生し、景気に左右されにくい資格・リスキリング分野も取り込むことで、経営の安定性が増します。
- ブランドイメージの向上: 単なる「受験屋」ではなく、「生涯にわたる学びのパートナー」としてのブランドを確立し、社会的な信頼度と価値を高めることができます。
- 優秀な人材の確保と育成: 高度な専門性を持つ講師や、社会人教育の知見を持つ人材を登用することで、既存の小中高生部門の指導力の底上げにも繋がり、塾全体の教育レベルが向上します。
結論:教育産業の未来を見据えて
少子化という不可避な波の中で、学習塾が生き残る道は、既存の市場の奪い合いではなく、新たな市場の創造にあります。それは、受験という短期的な目標達成支援から、生涯を通じた人間の成長と自己実現をサポートするという、より普遍的な教育サービスへの進化です。
小中高生教育で培った「人を教え、導き、成長させる」という根源的なノウハウは、大学生、社会人、シニア層といった上の年齢層の学習ニーズに対しても、強力な競争力となります。
今、塾業界が目指すべきは、受験対策の専門家としての地位を確固たるものとしながら、同時に、あらゆる世代の「学びたい」という欲求に応える包括的な教育プラットフォーム、すなわち「ワンストップエデュケーション」を実現することです。この「上への縦展開」こそが、教育産業の持続的な発展と、社会全体の学習意欲の向上に貢献する、新たなフロンティアとなるでしょう。

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