残念!20年前、15年前、10年前、5年前の感覚で塾運営は厳しい

過去の成功体験は通用しない。激変する教育業界の現実
20年前、いや、たった5年前の感覚で塾を運営していませんか?
「あの頃は生徒が集まった」
「このやり方で実績が出た」
という成功体験が、今の時代を生き抜くための足かせになっていませんか。
日本の社会構造が大きく変わり、教育をとりまく環境もまた激変しています。この変化を理解し、対応できなければ、あなたの塾は時代の流れに押し流されてしまいます。かつての「詰め込み」や「スパルタ」が美徳とされた時代は終わり、今、塾に求められる役割は根本から変わっているのです。
本記事では、現在長年塾を経営されているオーナーの方、これから塾運営を始めようとする方、塾の買収を検討されている方、脱サラで教育業界に参入しようとしている方へ向けて、過去と現在の塾業界の違いを徹底的に比較し、未来を切り拓くための新たな経営戦略を提示します。
20年前と今、何がどう違う? 塾を取り巻く環境の比較
まずは、20年前と現在の環境の違いを具体的な視点から見ていきましょう。
項目 | 20年前(経済成長期) | 現在(経済鈍化、少子化) |
経済状況 | 景気は右肩上がり。企業の給料も上がり、教育への投資は惜しみなく行われた。 | 経済は停滞。物価高騰に対し、給料は横ばい。家計の可処分所得は減少し、塾代は「削るべき支出」となりがち。 |
生徒数 | 人口も多く、1つの学年に多くの生徒がいた。競争も激しく、塾の需要は高かった。 | 少子化が進行。生徒の絶対数が減少。1人の生徒を獲得するための競争が激化。 |
入試制度 | 一般入試が主流。学力試験での点数が合否を分けた。難関校は「難関」の名にふさわしい狭き門。 | 多様な入試制度が主流。推薦入試、総合型選抜、AO入試など、学力以外の要素も評価されるようになった。 |
求められる能力 | 知識の暗記や問題解決能力。いかに早く正確に問題を解けるかが重要視された。 | 思考力、判断力、表現力。コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力も重要。 |
塾の役割 | 点数を上げること、志望校に合格させること。指導の質と実績が全てだった。 | 生徒の個性や適性を引き出し、多様な進路に対応すること。時には人生相談やキャリア形成のサポートも求められる。 |
この表を見れば、過去の成功モデルが通用しない理由が明確に分かります。経済的な側面、社会的な側面、そして教育制度そのものが大きく変わっているのです。

・・・・そう思ってしまいます。ではここでいつもの「実例(実話)」でケーススタディしてみましょう。
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【実例(実話)】
新聞折込広告で「新規開校」のキャンペーン内容とともに金額にして20~40万円(当時)かければ、開始時期にもよりますが、それなりに集客が出来て、問合せも多く入っていた「昔」と比較すれば、当然ながら問合せ数や新規契約数は減っています。
これは大きな背景としての少子化と、塾の過競争によるものだと思います。そこに新型コロナが襲い、明暗が分かれたのではないでしょうか。コロナ渦中よりもコロナ後のほうがきつかったのかもしれません。
ところが、そんな逆風を跳ねのけて、尚且つ教室規模はかなり小さいのに、きちんと復活を遂げた事例もあります。
これも私どもの経営教室のことですから、如実に語れますし偽りないところですので、少々お付き合いください。
そこは駅チカではあるのですが、とても古く、小さな教室です。今も運営しております。
教室長を完全交代する前の春の段階で生徒さんが8名という非常にまずい状態に陥りました。しかし、何故か「閉鎖」とか「譲渡」というのは浮かばず、そのまま継続していくことにしました。経営は結果ですので、結果良かったと思っております。
旧態依然からの脱却をする・・・この教室における一番のテーマはこれでした。つまり教室長を「旧」から「新」に切り替えることが大きなミッションだったのです。
簡単に言えば若返りを図ったということです。
新教室長は「営業がうまいタイプ」ではありませんでしたが、とてもまじめで嘘がつけないタイプの方です。(そういう人っていますね)
最初は、この営業がうまくない新教室長に、営業を徹底して教えていこうと思ったのですが、その方針をガラリと変えました。
営業を教えていくよりも「営業を教えていかない」方法をとりました。
新教室長の良いところは、営業の中からは見いだせないと思ったからです。人間的なまじめさ、相手の話をしっかりと聞いて、頷いてメモをするひたむきな様子から、
「あ、この人は、これでいこう」
私は話すセールスではなく、聞くセールスにしたほうがいいと判断し、
「君は完全に聞き上手なのだから、その方向でやっていこうか」
その日から、私流の営業を新教室長に投入することはやめにしました。ところがそれが良い結果になったのです。
学習塾において、生徒を導入する力は、決してパワーセールスではなく「共感力」なのだということを確信しました。
以下2つのリンク記事は、上記に関連する内容となっており、営業や教室運営に悩まれている人、またはなかなか上手くいかない人、これから学習塾を始めようとする人にピッタリの内容で、かなり重要な要素を含んだものですので、是非一読ください。
↓ ↓ ↓ ↓
「嫌われない営業トーク」断られない
話し上手より「聞き上手」
さて、それでは、この登用が「脱!旧態依然」「脱!昔の感覚」となったと、私自身が感じたのはどの場面かと言えば、
①イベント実施のあり方の変化
②保護者への徹底した寄り添い
この2つです。
イベントとは、つまり塾で実施する授業以外のイベントです。たいていは勉強会、塾内テストなど生徒が気軽に参加しやすい無料イベントにしていることが多いです。
このイベントのあり方を、保護者が想定する何倍も丁寧に頻度高く実施することを行っていました。
正直、私も驚いたぐらいです。
こんなに回数を実施したら、自分も大変だろうに・・・そんな思いだったのです。
ところが、この対応は保護者の琴線に触れ、必然的にその前後にしっかりとアナウンスしたり、経過報告をしたり、結果への所見を連絡する回数が増えることになり、保護者への徹底した寄り添いが自然演出出来たのです。
新教室長が決して意識してやったことではありません。
「自分は不器用ですが、一生懸命尽くせばきっと理解してもらえる」そんな信念をもって取り組んだのではと思う出来事でした。
1. 景気経済からの視点:生き残るための「価値」の再定義
日本はもはや経済成長期ではありません。
物価は上がり続けているのに、多くの家庭の可処分所得は増えていません。このような時代に、ただ「点数を上げる」だけの塾に、親は高いお金を払い続けるでしょうか。答えは「ノー」です。
今、塾に求められるのは「費用対効果」です。親は「かけたお金に見合う価値があるか」を厳しく見ています。では、その「価値」とは何でしょうか。
- 学力向上+αの提供: 単に学力を上げるだけでなく、将来に役立つスキルを教える。例えば、プレゼンテーションの練習、ロジカルシンキングの指導、グループディスカッションなど。
- 個別最適化された指導: マスプロ授業ではなく、生徒一人ひとりの目標や学力に合わせた個別指導や自習管理。AIを活用した教材や、オンライン授業の導入も有効です。
- 家庭の悩みに寄り添う姿勢: 親が抱える子育てや進路の不安に対し、親身になって相談に乗る。保護者会や個別面談を充実させ、信頼関係を築くことが不可欠です。
景気が停滞しているからこそ、「この塾に通わせることで、うちの子の将来は拓ける」と親が確信できるような、付加価値の高いサービスを提供する必要があります。
付加価値というのは、標準表示された対価は同じ3万円だけれど、Aは3万円のサービス、Bは3万円を超えるサービス、極論するとそういう印象をもってもらえるようなB側の在り方です。
上の項目で一か所「自習管理」のところを太字にしましたが、保護者の満足度が高くなるのは、「自習管理」です。
やはり学習塾ですので、お子さんの授業一つ一つに対価が発生しているのですが、それ以外の「自習」が通常の場所提供だけなのか、それ以上の何かがあるのか、によって全然「ウケ」が異なります。
自習管理を徹底して行っているところで、閑古鳥が鳴いている塾はあまりないと思います。
2. 受験のハードさが低下している現実:多様化する入試への対応
「上位の大学や高校、私立中学は相変わらず大変だが、中位以下はいくらでも学校がある」。これは厳しい現実です。多様な入試制度のおかげで、もはや「誰でも合格できる」と言っても過言ではないほど、合格のチャンスが広がっています。
例えば、推薦入試や総合型選抜では、小論文、面接、プレゼンテーション、活動報告書などが重視されます。従来の一般入試の対策だけでは、これらの入試には対応できませんが、これらの多くは書類審査と面接と小論がメインです。
中には、「大変だ」という方もいらっしゃいますが、どう考えても5教科のハードな学習より楽です。
大手予備校でも推薦対策講座や総合型選抜対策講座を主軸に置いているのは、推薦型や総合型が入試の門としてハードに狭くなったからではありません。
多くの高校生が「その受験方式に流れたから」でしかありません。
上記のとおり、5教科とか中上位の私立の3教科受験のほうが間違いなく合格するのは大変なのです。
しかし、この変化を無視することは出来るでしょうか?
難関校を目指す生徒でさえ、一般入試だけでなく、併願として推薦入試を視野に入れるケースが増えています。例えば「小論文」指導。この指導ができる講師が「いる」「いない」で簡単に言えば、その塾が「選択される」「選択されない」の答えが出てしまいます。
この流れに対応できなければ、塾は「一般入試にしか対応できない古い塾」と見なされてしまいます。
個人的見解からすれば、大学入試の一般入試対応が出来る塾のほうが講師レベルは高く維持しなくてはなりませんし、指導内容は高度だと思います。
ですが・・・そこも変化なのです。
従来の「学力偏重」の教育から、生徒の個性や総合的な能力を評価する「多角的な評価」へと、教育のパラダイムシフトが起きています。
これは社会が求める人材像の変化を反映したものであり、塾もまた、この変化に対応することが不可欠です。単に知識を教え込むだけでなく、生徒の自己肯定感を高め、自ら考え、行動する力を育む役割が求められています。
3. 検定取得が受験の鍵に:入試制度の変化
英検、漢検、数検などの資格を取得していると、受験が一気に楽になる時代になりました。検定の級によって大学や高校の入試で加点されたり、出願条件になったりするケースが増えています。
これにより、生徒は検定取得を「学力向上のモチベーション」として活用できます。塾はこれを戦略的に取り入れるべきです。
- 検定対策講座の開設: 各検定の級に応じた対策講座を設ける。
- 検定合格を目標としたカリキュラム: 定期テスト対策だけでなく、検定合格を短期的な目標に設定し、生徒の成功体験を積み重ねる。
- 検定取得の重要性を保護者に伝える: 検定が受験にどれだけ有利になるかを具体的に説明し、親の納得感を得る。
入試の多様化は、塾に「柔軟性」と「情報収集能力」を求めているのです。常に最新の入試情報をキャッチし、生徒と保護者に的確なアドバイスを提供できることが、今後の塾の強みとなります。
新しい時代の塾経営:求められる3つの戦略
激変する時代を生き抜くためには、これまでのやり方を根本から見直す必要があります。
戦略1:ターゲット層の再定義
従来の「近隣の小中高生」という大まかなターゲット設定では不十分です。
- 「難関校志望者」特化型: 推薦入試や総合型選抜に特化したコースを設け、専門的な指導を行う。
- 「非受験」層の開拓: 習い事感覚で通える「プログラミング教室」や「英会話教室」など、受験に直結しない付加価値の高いコースを設ける。
- 「高校生」市場の再評価: これまでは高校生は大手予備校に通うのが一般的でしたが、今はオンライン授業や個別指導のニーズが高まっています。高校生向けのコースを強化し、大学受験を視野に入れた指導を行う。
- 「中学受験」層の拡大開拓: 首都圏小学生の18%、つまり5人に一人が中学受験をしています。少子化とはいえ、子ども一人にあてる教育費、習いごと費用は増加しており、その中で中学受験を検討するケースが増加しています。小学生の中には「潜在的なニーズ」を持った顧客(特に保護者の思い)がかなり多くなってきているのも事実です。
少子化で生徒の絶対数が減っているからこそ、ターゲットを絞り、そのニーズに深く応えることが重要です。
戦略2:ITとAIの活用
非効率な手作業や属人的な指導を減らし、ITとAIを積極的に活用する。
- AI教材の導入: AIが個々の生徒の弱点を分析し、最適な問題を自動生成。教師は指導に集中できる。
- オンライン授業の導入: 遠方の生徒や部活動で忙しい生徒にもアプローチできる。
- 業務の自動化: 成績管理や進捗管理、保護者への連絡などをシステム化し、教師の事務作業を軽減する。
これにより、人件費を抑えながらも、より質の高い教育を提供することが可能になります。
戦略3:コミュニティ・ハブとしての役割
塾はもはや、勉強を教えるだけの場所ではありません。生徒や保護者にとって、安心して相談できるコミュニティ・ハブとなることが重要です。
- 居場所づくり: 自習スペースを充実させ、生徒が気軽に立ち寄れる「第三の居場所」を提供する。
- キャリア教育の実施: 外部の専門家を招いて、職業体験やキャリア講演会を行う。
- 保護者向けイベント: 進路説明会だけでなく、子育ての悩みを共有する場を設ける。
生徒と保護者との強固な信頼関係を築くことで、口コミが広がり、新規生徒獲得につながります。
上記戦略1~3の中で、最も強く意識して最もすぐに着手すべきは、ターゲット層です。
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【実例(実話)】
これは学習塾とか習いごととは関係のない事例です。
その昔、CROSS M&A(通称:クロスマ)のアドバイザーは、証券会社に20年ほど勤務していました。ほとんどが代表取締役とか、会社の社長が顧客でした。それが普通だったのです。
サラリーマンの開拓はダメではなかったのですが、
属性として「サラリーマン」というと、契約を獲得した営業マンも会社側も、どうも空気感として、さわやかなものではありませんでした。
ですから電話でのやり取りでは常に営業マンは「社長!今日は〇〇が寄り付きからストップ高ですよ」的な内容で「社長」というワードが飛び交っていたのです。
ところが今はどうでしょう。
株、FXは誰でもできる、普通に10代の学生さんでもできる広く開かれた市場になりました。
何故上記で、「ターゲットを」と申したかと言えば、ここを意図して変えることで、新しい戦略が生まれるからです。
FXへの導入などは、通常の広告からではなく、ゲーム感覚でFXが出来る、デモトレードがまるで本物動作のようにできるというアプリからの導入がものすごく多いのです。
それは見ればわかりますが、若者仕様と言ってもいいぐらいです。
このようにターゲットが変われば、または拡大すれば戦略が変わってくるということです。
まとめ:変化を恐れず、学び続ける姿勢が鍵
20年前、15年前、10年前、そして5年前の感覚で塾を運営することは、もはや不可能です。時代は変わり、生徒のニーズも、親の価値観も、そして入試制度も大きく変わりました。
かつての成功体験に固執せず、謙虚に学び続ける姿勢が、今後の塾経営を左右します。時代の変化を「ピンチ」と捉えるのではなく、「新しい価値を創造するチャンス」と捉えることができれば、あなたの塾は必ず生き残ることができます。
今、求められているのは、単に生徒の点数を上げるだけでなく、彼らの未来を共に考え、拓くための羅針盤となる存在です。さあ、あなたの塾のあり方を、今一度見つめ直してみませんか。

学習塾・習いごと専門M&AサービスCROSS M&A(通称:クロスマ)は、業界ナンバー1の成約数を誇るBATONZの専門アドバイザーです。BATONZの私の詳細プロフィールはこちらからご確認ください。
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