M&Aにおける株式譲渡と事業譲渡の税務を徹底比較!あなたはどちらを選ぶ?

株式譲渡と事業譲渡の具体的な課税イメージを事例として掲載!

M&A(企業の合併・買収)を検討している経営者にとって、「株式譲渡」と「事業譲渡」のどちらを選択するかは非常に重要な決断です。株式譲渡は会社をまるごと売るイメージ、事業譲渡は会社の一部事業を切り売りするイメージです。M&Aの場合、通常どちらかが選択されますが、特に税務上で大きな違いがあり、結果手元に残る金額にも差が生じます。

本記事では、具体的な事例やわかりやすい表も交えながら、株式譲渡と事業譲渡の税務上の特徴について比較説明致します。

勿論、実際のM&Aにおいては、このような税務関連については専門家の税理士・会計士に任せておいたほうが無難ではあるのですが、譲渡主様も買い手様もこの機械に概要知識を得ておくことは決して無駄にはなりませんので、是非ご一読ください。

この記事で分かること

  • 株式譲渡における個人株主と法人株主の税務上の違い
  • 事業譲渡特有の税務上の論点(消費税、のれん)
  • 両スキームの税務を事例で比較し、手元に残る金額のイメージを掴む

株式譲渡の税務:シンプルさが魅力の課税関係

株式譲渡は、その課税関係のシンプルさが最大の特徴です。譲渡益に対する税金は、株主が個人か法人かによって大きく異なります。

1. 個人株主の場合

個人株主が株式を譲渡して利益(譲渡益)が出た場合、その利益に対して税金が課されます。

課税関係の概要

譲渡益は、以下の計算式で求められます。

譲渡益 = 株式の譲渡対価 – (株式の取得費 + 譲渡経費)

  • 譲渡対価: 株式を売って受け取る金額
  • 株式の取得費: 株式を取得するために支払った金額。
    • みなし取得費: 取得費が不明な場合や、取得費が著しく低い場合には、「譲渡対価の5%」をみなし取得費として計算することができます。
    • M&Aの場合、のれんが大きく付く可能性があるため、みなし取得費を使った方が有利になるケースもあります。
  • 譲渡経費: 株式の売却にかかった費用(例:仲介手数料など)。

税率:20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税)

株式譲渡益は、給与所得や事業所得など、他の所得とは分けて計算される「申告分離課税」が適用されます。他の所得がどれだけ多くても、株式譲渡益にかかる税率は一律20.315%と固定されているため、非常に有利な取り扱いと言えるでしょう。

所得税の最高税率は45%(住民税と合わせて50%超)に達することを考えると、この固定税率は大きなメリットです。

2. 法人株主の場合

法人株主が株式を譲渡した場合、その譲渡益は、本業の利益など他の所得と合算されて計算されます。

課税関係の概要

法人税、法人住民税、事業税などが課されます。

税率:実行税率 約34%

中小企業の場合、これらの税金を合わせた実効税率は概ね34%程度となります。

法人の場合、本業で損失(赤字)が出ていれば、株式譲渡益と相殺(通算)できるというメリットがあります。


株式譲渡の課税イメージ:具体的な事例で理解する

それでは、具体的な事例を使って、株式譲渡の課税イメージを掴んでみましょう。

事例:オーナー個人がA社株式をB社に譲渡するケース

  • オーナー株主: A社を設立する際に100万円を出資(取得費100万円)
  • B社: A社株式を1,000万円で買収したい

この取引が実行されると、以下のような課税関係が発生します。

オーナー株主(個人)

  • 譲渡対価: 1,000万円
  • 取得費: 100万円
  • 譲渡益: 1,000万円 – 100万円 = 900万円
  • 税金: 900万円 × 20.315% = 182.8万円
  • 手取り: 1,000万円 – 182.8万円 = 817.2万円

一方、B社はA社株式を取得し、A社はB社の子会社となります。


事業譲渡の税務:消費税と「のれん」がポイント

事業譲渡は、株式譲渡とは異なり、譲渡する資産・負債ごとに課税関係が生じます。特に重要なのは、「消費税」と「のれん」です。

1. 事業譲渡と消費税

事業譲渡では、譲渡対象となる資産のうち、消費税の課税対象となるもの(例:棚卸資産、建物付属設備、器具備品、ソフトウェア、のれん)に消費税が課されます。

株式譲渡の場合、消費税はかからないため、これは事業譲渡特有の注意点です。消費税の計算は複雑になりがちなので、専門家と相談しながら進めることが重要です。

2. 税務上の「のれん」とは?

事業譲渡では、譲渡対価が譲渡する事業の時価純資産額(時価資産-時価負債)を超える場合に、その差額が「のれん」(税務上の名称:資産調整勘定)として認識されます。

  • 買い手側(事業を譲り受ける側): 支払った対価が時価純資産額を上回る場合、その差額を「のれん」として認識し、5年間で費用(償却)にすることができます。これにより、税金を減らす効果があります。
  • 売り手側(事業を譲渡する側): 譲渡益を計算する際に、のれんも加味されます。

事業譲渡の課税イメージ:消費税と「のれん」を考慮した事例

具体的な事例で、事業譲渡の課税イメージを掴んでみましょう。

事例:A社の飲食事業をB社に1,000万円で譲渡するケース

  • A社(売り手): 飲食事業の時価資産2,000万円、時価負債1,500万円。
    • 時価純資産額: 2,000万円 – 1,500万円 = 500万円
  • B社(買い手): 1,000万円で飲食事業を買収

この取引が実行されると、以下のような課税関係が発生します。

A社(売り手)

  • 譲渡益: 1,000万円 – 500万円 = 500万円
  • 税金: 500万円 × 34% = 170万円
  • 消費税: 飲食事業の消費税課税対象資産(時価合計1,080万円)に、のれん(1,000万円 – 500万円 = 500万円)を加えた1,580万円に対して消費税が課されます。
    • 消費税: 1,580万円 × 10% = 158万円
  • 手取り: 1,000万円 + 158万円(消費税分) – 170万円 = 988万円

株式譲渡と事業譲渡の税務比較表

ここまでの解説内容を、より分かりやすく比較するために、以下の表にまとめました。

項目株式譲渡事業譲渡
譲渡対象株式事業(資産・負債)
税金がかかる人売り手(株主)売り手(会社)
税金の種類・個人株主: 所得税、住民税など・法人株主: 法人税、法人住民税など法人税、法人住民税など
税率(中小企業の場合)・個人株主: 20.315%(固定)・法人株主: 約34%(実効税率)約34%(実効税率)
消費税かからない譲渡対象の資産によってはかかる
のれん買い手側では認識されない買い手側で認識され、5年間で償却可能
手続きの複雑さシンプル資産・負債ごとの移転手続きが必要で複雑


まとめ:最適なスキーム選択は税務の理解から

株式譲渡と事業譲渡は、M&Aの目的や状況に応じて使い分けるべきスキームです。特に税務上の違いは、手元に残る金額に大きな差を生むため、事前にしっかりと理解しておく必要があります。

  • 株式譲渡: 手続きがシンプルで、個人株主にとっては税率が固定されているため、税務上のメリットが大きい。
  • 事業譲渡: 消費税やのれんといった特有の論点がある。買い手側にとっては、のれんを償却することで節税効果が期待できる。

どちらのスキームが最適かは、売却を考えている企業の状況、株主構成、買い手側の意向など、様々な要素を考慮して判断する必要があります。

M&Aの専門家に相談することで、あなたの状況に合わせた最適なスキームを選択し、後悔のないM&Aを実現できるでしょう。

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