学習塾の譲渡金額の決め方と買い手候補に何をアピールすべきかについて

学習塾譲渡
譲渡金額算定の方法

学習塾の譲渡金額を決定するプロセスは、一概に言えない部分が多くあります。極論しますと単に帳簿上の数字のやり取りではないということです。

特に個人経営や小規模な学習塾の場合、税務申告用の決算書がそのまま実態を表しているとは限らないためです。

この記事では、学習塾の譲渡金額の算出方法、利益を再計算する際に差し引くべきコスト、そして買い手に対してどのような強みをアピールすべきかについて詳しく解説します。


1.学習塾の譲渡金額の算出方法

通常、「譲渡価格」というのは、主に時価純資産に営業権(のれん代)を加算する「年倍法」で算出されるのが一般的です。

一般的な基本計算式

譲渡金額 = 時価純資産 + (修正後営業利益 × 2〜5年分)

ここで重要になるのが「修正後営業利益」という考え方です。

学習塾の場合は、オーナーの個人的な支出や、譲渡後には発生しないコストが経費として計上されているケースが多いため、それらを足し戻して「真の稼ぐ力」を算出する必要があります。

さて、上記で修正後営業利益の2年から5年分と記載しましたが、現実にこの式で計算したとおりに売れる可能性は、低くなります。2年分ぐらいならまだいいかもしれませんが、マルチプル計算で5年!となると、かなりのチャレンジ価格です。
例えば持ち家マンションを売るときに、周りの平均単価が坪200万円で、40坪だから8000万円と計算すべきところを坪1000万円にして40坪2億円で販売開始するようなものです。

このやり方だと、いくら大手サイトに掲載しようと、おそらく挙手はなく売れません。
不動産の世界でもM&Aの世界でも似ている部分と言えば、「相場観」があるということです。この部分はいくら、とてつもない優位性があったとしても買い手候補としては、今の実勢で考えるため成約にならない可能性が高くなってしまいます。

そこで現実路線に変更すると・・・

学習塾の譲渡金額の決定プロセスにおいて、理論上の計算式と現実の成約価格の間には、しばしば乖離が生じます。特にTRANBIやBATONZといったプラットフォームでは、買い手のシビアな視点と市場の需給バランスが色濃く反映されます。

ここでは、一般的によく言われる計算式の「実態」をリサーチに基づき深掘りし、買い手候補に対して何をどう語るべきか、より具体的かつ現実的な見地から解説します。


譲渡金額の算出:理論と現実のギャップ修正版

近年の小規模塾(生徒数30名規模)の成約事例をリサーチすると、現実はよりシビアです。

現実的な算出式の実態

実際の成約現場では、以下の「実質営業利益(オーナー利益)」をベースにした倍率が主流です。

譲渡価格 = 実質営業利益 ×1.5〜3年分

このようになると思います。

なぜ「純資産」があまり考慮されないかというと、賃貸物件で運営される学習塾の場合、資産のほとんどが返還される保証金や古い備品であり、買い手にとって「それ自体に価値がある」とみなされにくいためです。

このように見ていくとシビア過ぎと思われるかもしれませんが、昨今の事情からするとこれが実態です。

さて、とは言え・・・・・一応ここでも1.5倍、3倍と少しだけマルチプルを利かせているのですが、内容があまりよくない学習塾でしたら、営業利益の1.0倍、はたまた0.5倍以下という場合もあります。

この「内容」というのは、やはり生徒数とか講師残存数、教室長の継続の有無、営業利益です。

倍率決定の分かれ目

  • 1.5倍以下: オーナーへの依存度が高く、譲渡後に生徒が離れるリスクが高いと判断された場合。
  • 3倍以上: 講師が自立して運営しており、オーナーがいなくても利益が出る仕組みが完成している場合。

このように3倍以上に価値を高められるのは、「自走」出来る仕組みがあるか否かだと思います。最近は、買収した教室を自前で教室長を準備するよりも、今いる教室長の継続があるかどうかも買い手候補に響くか否かを決定づける要素の一つになっています。

ちなみにBATONZなどでは、「自走」という言葉はつかえません。従いまして、タイトルや本文でそのキーワードを見つけても載っていないはずです。

「教室長継続可」という言葉か「教室長継続」というワードになると思います。

もし、この教室長継続案件の場合には、その部分を強く前面に出したほうが確実にアピールになります。

その場合の注意点は、

①今、雇用している教室長をそのまま新オーナーに
というパターンと
②今のオーナーが教室長としてしばし継続する
というパターン


これは、意味合いが全く異なります。
①は雇用主がチェンジしてその社員が残るパターンで、②は今のオーナーが今度は新オーナーに雇われる形になるパターンです。

どちらも新オーナーにとっては、すぐに今の陣容で事業譲渡が成り立ち運営に滞りがなく開始出来るのでメリットはあります。
ただ②の場合は、いつまでもオーナーが雇用され続けるかというと、たいていは「一時的」ということになります。

この点は、オーナーが自分の学習塾を売却する際には、しっかりと交渉過程で明確にしておく必要があります。


2.税務申告とは異なる「足し戻せるコスト」

通常の確定申告や決算では、節税のために利益を低く見せることが推奨されますが、売却時には逆に「利益がこれだけ出ている」と証明しなければなりません。

この意味はわかりますでしょうか。

よく税金対策という言葉が言われますが、会社経営または個人事業主として経営されている場合、普通の感覚であれば、なるべく税金は少な目にしたいと思うはずです。

もちろん納める税金が少ないということは儲かっていないということにもつながりますので、あまり変な節税はよくありませんが・・・。
それでも正当なやり方で節税をするのは、経営者目線で言えば、それもまた当然なのです。

しかしM&Aで自分の教室を売却する場合には、上記で節税のためにいろいろ工夫したものを今度はしっかりとコストから差し引いておく必要があります。

つまり確定申告や決算の内容の「通り」ではないという意味です。

実態利益を算出する際、以下の項目は経費から除外し、利益として足し戻す(差し引いてもかまわないコスト)ことができます。

オーナー個人の生活費に関連する費用

  • 私的な飲食代や交際費: 会食や贈答品など、事業との関連性が薄い個人的な支出。
  • 車両関連費: オーナーが自家用車として利用している車のリース代、保険料、ガソリン代。
  • 社宅扱いの家賃: オーナーの自宅を法人名義で借りている場合の家賃負担分。

交際費は節税目的によく使われる常套手段ですが、実際に学習塾のオーナーさんで、激しく飲み食いに時間を費やしている方はそうそういません。
学習塾のメイン時間帯が夕方から夜ですので、その黄金時間帯から外れるからでもありますし、
今は部下を(講師を)を引き連れて飲み歩くなんていう時代でもありません。

大学生講師を雇っている場合などはなおさら講師たちにとっても迷惑な誘いになるかもしれません。ですから、この項目は少ないかもしれません。

節税を目的とした支出

  • 過大な役員報酬: オーナーやその家族に対し、相場よりも高く支払っている給与。譲渡後は一般的な教室長の給与(年収400万円から600万円程度)に置き換えて計算します。
  • 倒産防止共済や小規模企業共済: 将来の備えとして積み立てている費用。これは実質的な利益の蓄積とみなされます。
  • 生命保険料: オーナーを被保険者とした節税目的の保険料。

あり得るのは、この部分です。
役員報酬というのは、一度決めたら年度で変更することは出来ません。相場より大きく支払っている部分は置き換え計算をするのが普通です。

個人塾の場合、利益の多くをオーナーが役員報酬として受け取っています。

例: 報酬800万円を払っているが、実務は450万円のスタッフで回せるなら、差額350万円は「事業が生み出している利益」です。



また節税目的の保険に入っている人も多いので、こういうオーナー独自のもの(共済もそうです)はカットして考えます。

修正方法: 「現在の役員報酬」から「譲渡後に雇う教室長の相場給与(例:年収450万円)」を差し引いた差額を、利益に足し戻します。

一時的な特別損失

  • 教室の修繕費: 数年に一度しか発生しない大規模なリフォーム費用。
  • 退職金: 譲渡のタイミングで発生する従業員への一時的な支払い。

これらを利益に足し戻すことで、決算書上は赤字であっても、実態は黒字であることを証明でき、譲渡価格の大幅なアップにつながります。


3.買い手候補にアピールすべき強み

買い手は「投資を何年で回収できるか」を見ています。数字以外の価値を可視化して伝えることが、高値売却の鍵となります。

安定した生徒数と継続率

  • 在籍期間の長さ: 小学校低学年から入塾し、中学卒業まで通い続ける生徒がどれだけいるか。
  • 兄弟入塾の割合: 地域での信頼度を測る指標になります。
  • 講習会の参加率: 春・夏・冬の講習に、通常授業の生徒がどれだけ参加しているか。

優秀な講師陣と低い離職率

  • 講師の勤続年数: 学習塾の資産は人です。ベテラン講師や、卒業生が講師として戻ってきている実績は、教育の質と文化の継承を証明します。
  • マニュアルの有無: オーナーの属人的なスキルに頼らず、誰が教えても一定の成果が出る仕組みがあることは、買い手にとって大きな安心材料です。

合格実績と地域でのブランド力

  • ターゲット校への占有率: 地域の中学校や高校において、どの程度の合格シェアを持っているか。
  • 口コミの影響力: 近隣住民からの評判や、保護者の紹介による入塾率。

独自のノウハウやIT活用

  • 自社開発の教材やカリキュラム: 他塾にはない独自の指導法。
  • ITツールの導入状況: LINEを活用した保護者連絡や、学習管理システムの運用状況。DX化が進んでいる塾は、運営の引き継ぎが容易であると判断されます。

買い手が「本当に見ている」アピールポイント

プラットフォーム上の買い手は、数字の裏にある「継続性」を最も不安視しています。以下の4点を具体的にアピールすることで、価格交渉を有利に進められます。

① 「オーナー依存度」の低さを証明する

買い手が最も恐れるのは「塾長がいなくなったら生徒が辞める」ことです。

  • アピール方法: 「全授業のうち、オーナーが担当しているコマ数は3割以下である」「進路指導マニュアルがあり、他の講師でも対応可能である」といった定量的な事実を伝えます。

② 募集コスト(獲得単価)の低さ

  • アピール方法: 「新規入塾者の7割が在塾生・卒業生の紹介である」というデータは最強の武器です。これは、広告宣伝費をかけずに利益を維持できることを意味し、将来の収益性を強く保証します。

③ 地域のドミナント(支配力)

  • アピール方法: 「近隣のA中学校の生徒の3割が当塾に通っている」など、特定の学校に特化した強みを伝えます。学校ごとの定期テスト対策資料や過去問の蓄積は、大手が参入しにくい強固な壁となります。

④ 教室の「損益分岐点」の低さ

  • アピール方法: 家賃や光熱費などの固定費が低く、「生徒が何名いれば赤字にならないか」のラインが低いことを示します。学習塾は損益分岐点を超えた後の利益率が非常に高いため、このラインが低いことは安全資産としての評価に繋がります。

4.売却価格を高めるための準備

売却を検討し始めたら、最低でも1年から2年前から準備を行うのが理想的です。

  1. 不透明な経費の削減: 公私の混同を避け、できるだけ利益が出る決算書を作成するように切り替えます。
  2. 教室の整理整頓: 内見時に、教室の清潔感や整理状況は第一印象に大きく影響します。
  3. 生徒名簿と運営資料の整理: 生徒数、単価、退塾率などのデータを即座に提示できるようにしておきます。

学習塾の譲渡は、子どもたちの教育環境を守り、講師の雇用を維持する重要な決断です。自社の価値を正しく把握し、それを適切に言語化することで、最適な後継者とのマッチングが可能になります。

今回の内容を踏まえ、まずは直近の決算書から「足し戻せるコスト」がどの程度あるか、簡易的に計算してみることをお勧めします。

上記で一番大切なのは、やはり「データ」です。
「事業譲渡」にしての「株式譲渡」「持ち分譲渡」にしても、そうそう経験することではありません。

それがゆえに、このデータの部分は、意外と税理士任せであることも多く、細かく把握できている方は多くありません。
これは、仕方のないことではあります。
日々の業務に追われてしまうことは、私自身も学習塾を運営しているからこそ弁護できる内容です。

とは言え、実際に事業を譲渡することになれば、データがものを言います。
データがあいまいであったり、用意されていなければ、買い手候補が不安に思います。

文章などはいくらでも改造するこが出来ます。
しかし、過去のデータ(経理データ、会計データ)、それにまつわる資料は改ざんすることは許されませんでし、そんなことをすれば、トラブルの原因を自らつくるようなものです。

ですから、すべてを正直に、すべてを明らかに、すべてを吐き出して誠意をもって買い手候補の人と向き合うことが非常に重要だと思います。



学習塾・習いごと教室のM&A成功の鍵はPMIにあり!クロスM&Aが提供する「安心の譲渡」とは?

閉校・廃業を考える前に「譲渡」を
①仲介不動産会社への連絡
自分が望む金額でスピーディーに
習いごと教室の事業承継
②FC加盟の学習塾・習いごと教室
③スムーズ引継ぎ シート管理
買い手の心を掴む概要説明の極意
中学受験対応ができる場合の価値増加
BATONZの学習塾・習いごと専門家
学習塾の譲渡:ベストな時期はいつ?
学習塾譲渡:電話番号の引き継ぎ
売りっぱなしの時代は終わっている
後継者がいない学習塾オーナー様へ
習いごと教室の事業承継
個人塾の閉鎖、 費用はいくら?
英会話教室売却完全ガイド
学習塾の事業譲渡契約書

夏期講習の売上ダウンは

【学習塾譲渡】仲介ガイド
プログラミング教室のM&Aを
塾の譲渡、気になる「相場」は?
生徒数減少に直面した塾オーナー様へ
急募 不動産・FC契約更新間近
塾の譲渡は「面倒」じゃない!
塾の譲渡:理想の買い手を見つける
NN情報(ノンネーム情報)の重要性
売り手市場から買い手市場へ!
売却する際に準備すべき資料
企業概要書(IM)の作り方
売却、今こそ決断の夏!生徒数で
「譲渡」が「買収」の5倍検索される
【初心者向け】M&A簡易概要書
同族承継が第三者承継になる実情
「教育モデル改革」が譲渡価値UP
事業譲渡と株式譲渡の基本
株式譲渡と事業譲渡の税務
M&Aの税務基礎知識

【CROSS M&A(クロスマ)からのお知らせ】

当記事をお読みの皆様で、当社の仲介をご利用いただいた学習塾・習いごとの経営者様には、ご希望に応じて無料でメール送信システムの作成をお手伝いいたします。システム作成費も使用料も一切かかりません。

安全かつ効率的な報告体制を構築し、保護者との信頼関係を強化するお手伝いをさせていただきます。ぜひお気軽にご相談ください。

BATONZ×CROSS M&A
CROSS M&A(クロスマ)は、BATONZ(バトンズ)認定パートナーとして皆様の事業承継をサポートいたします。

学習塾・習いごと専門M&AサービスCROSS M&A(通称:クロスマ)は、業界ナンバー1の成約数を誇るBATONZの専門アドバイザーです。BATONZの私の詳細プロフィールはこちらからご確認ください。
また、弊社は、中小企業庁のM&A支援機関です。

学習塾・習いごとのM&Aについて、さらに詳しい情報や具体的な案件にご興味はありますか?どのような点でお力になれるか、お気軽にご相談ください。

M&Aの会社なのに学習塾もデールルーム
(学習塾への新規参入をご検討中の皆様が内部をよりイメージしやすいように、リアル学習塾モデルルームのサービスを開始しました)

 ↑ 中小企業庁ウェブサイト」へのリンク

学習塾・習いごと教室の譲渡・買収をご検討の方、
または教室運営に迷いを感じている方はこちら!