拡散力のあるネットの世界だからこそ徹底したいM&Aの情報管理(NDAサンプルDL可能)

M&A(企業の合併・買収)は、企業の成長戦略において非常に有効な手段です。
しかし、そのプロセスは非常にデリケートであり、情報管理を徹底しなければなりません。特に、情報が瞬く間に拡散する現代のインターネット社会においては、たった一つの情報漏洩がM&Aの成否を左右するだけでなく、企業そのものの存続に関わる重大な事態に発展する可能性があります。
本記事では、M&Aにおける秘密保持の重要性、情報漏洩によって発生しうる大きな被害、そして情報漏洩を防ぐための具体的な対策について、M&Aアドバイザーの視点を交えて詳しく解説します。
M&Aにおける情報漏洩が招く「大きな被害」とは
M&Aの情報漏洩は、単なる機密情報が流出する以上の、深刻で多岐にわたる被害を企業にもたらします。その被害は、金銭的なものに留まらず、企業の存続そのものを脅かす可能性を秘めています。
M&Aには必然
「売り手」と「買い手」が存在します。
情報漏洩によってダメージを受けるのは、「売り手」です。
学習塾や習いごと教室の場合、教室内の電話の受け、zoomなどのオンラインミーティング、メールやLINEその他のチャットツールのやり取り、郵送物などの受け渡し、など・・・対応する期間が長くなるほどに防備が不十分になりがちです。
また、買い手の教室見学においても日程、時間帯に十分に気を付け、講師や生徒が多い時間帯は極力避けたほうがいいでしょう。
確かに、売り手からすれば、多くの授業が実施されているところを見学してもらって、その盛況ぶりをアピールしたい気持ちもあるかと存じます。
しかしながら、講師も生徒も普段見慣れない人が来ていることに、すぐに反応しますので、やり取りをする言葉の端から、わかってしまうことが多いです。
午前中の時間や午後一番の時間であれば、講師も生徒もいない時間帯になりますが、情報漏洩の点を考慮すればそのほうが安全です。
基本的にM&Aは成立するかしないかは、双方の話し合い、交渉によってですから、決まるか決まらないかわからない段階では、それが例えステークホルダーに位置する人たちにでさえも口外しない、一切の情報を漏らさない!
というスタンスが重要です。
講師や生徒、保護者に伝えるのは、すべてが完全に決まった「後」です。その前段階ではいかなるシーンにおいても情報は秘密、秘匿状態にしておく必要があります。
1. M&A交渉の決裂と機会損失
M&Aの情報が漏洩すると、まず買い手候補や売り手候補の信用が失われ、交渉が中断・決裂する可能性が高まります。交渉が一旦白紙に戻れば、再び同じ条件で交渉を再開するのは困難であり、最悪の場合、M&Aの機会そのものが失われてしまいます。
2. 株価への悪影響と風評被害
上場企業の場合、M&Aの情報漏洩は株価の急騰・急落を引き起こす可能性があります。インサイダー取引の疑いをかけられるリスクも生じ、企業への信頼は大きく損なわれます。また、非上場企業であっても、「あの会社は売却を検討しているらしい」といった噂が立つことで、取引先や金融機関からの信用を失い、事業活動に支障をきたす恐れがあります。
3. 従業員のモチベーション低下と離職
M&Aの噂が社内で広まると、従業員は「自分の雇用はどうなるのか」「会社は今後どうなるのか」といった不安に駆られ、モチベーションの低下や優秀な人材の離職につながります。これはM&A成立後の統合プロセス(PMI)にも悪影響を及ぼし、事業の停滞を招く原因となります。
4. 競合他社への情報流出
M&Aの交渉過程では、経営戦略、財務情報、技術情報、顧客リストなど、企業の根幹に関わる機密情報が多数開示されます。これらの情報が競合他社に漏洩すれば、事業の優位性を失い、大きな損害を被る可能性があります。
M&Aにおける「主な情報漏洩ルート」を把握する
M&Aにおける情報漏洩は、特定の悪意を持った人物によるものばかりではありません。多くの場合、意図せず、あるいは不注意によって引き起こされます。どのような漏洩ルートがあるのかを事前に把握しておくことが、効果的な対策を立てる第一歩となります。
1. 人間関係を通じた漏洩
「飲み会の席での軽い口論」「家族や友人への不注意な発言」「社内の噂話」など、個人的な人間関係を通じて情報が漏れるケースは少なくありません。特に、M&Aの当事者やそのアドバイザーは、知人から「何か面白い話はないか?」と聞かれた際に、安易な発言をしてしまう危険性があります。
2. 物理的な媒体からの漏洩
「M&Aに関する資料をカフェに置き忘れる」「パソコンやUSBメモリを紛失する」といった物理的な媒体の管理不備も、情報漏洩の大きな原因です。特に、機密情報が記載された紙媒体の資料は、シュレッダーにかけるなど厳重に管理する必要があります。
3. デジタル媒体からの漏洩
メールの誤送信や、M&A関連の資料をクラウドサービスにアップロードした際のセキュリティ設定の不備など、デジタル媒体からの情報漏洩も多発しています。また、M&Aに関する情報をパソコンのデスクトップに保存したまま、画面を第三者に見られるといった、ヒューマンエラーも漏洩の原因となります。
4. アドバイザーからの漏洩
M&Aアドバイザーは、複数のM&A案件を同時並行で進めていることが多いため、情報の取り扱いには細心の注意が必要です。担当者間で情報共有のルールが徹底されていなかったり、アドバイザーの従業員が安易に情報を扱ったりすることで、情報が漏洩するリスクがあります。
コーナー-1024x154.png)
【実例(実話)】
狭い教室だからこそ、情報管理は非常に重要です。これはM&Aにかかることではありませんが、うっかりパソコンをつけっぱなしにして失敗した事例です。
保護者あてのメールで、少々込み入った長文メールを書いているときに、授業中に講師から質問を受けたことがあります。
それはシステムから古文の内容を取り出すための方法についての質問でした。
パソコンは教室内に2台あり、教室責任者がメインで使うパソコンと、講師や生徒も使うことが出来るパソコンと分けて管理していました。
質問を受けたのは、後者のパソコンについてのことでした。ログインのIDは自動で出るようにしていたのですが、パスワードは手入力するようにしていたのです。そのため、席を離れて説明することになりました。
そのとき、たまたま、生徒から話しかけられて、自分の席に戻るのが遅くなりました。
要件が終わり席に戻ると、とある生徒さんが、教室長机のパソコンの内容をじ~~っと見ていました。
内容は生徒さんの保護者へ送信するセンシティブな内容を書いていたものですから、この時点で完全に情報漏洩です。
まさか、生徒が勝手にパソコンを覗き込むとは思ってもおらず、驚きました。
依頼、
メールソフトは最小化すれば自動でロックがかかるようにしました。
またPINも面倒ですが設定するようにしました。
狭い教室だと、こういうアクシデントもあるのです。
秘密保持を徹底するためにアドバイザーが行うべきこと
M&Aプロセスにおいて、情報管理の要となるのは、売り手・買い手の両当事者だけでなく、M&Aアドバイザーです。アドバイザーは、専門家としての知見と経験に基づき、情報漏洩を防ぐための万全の体制を構築する責任があります。
1. 秘密保持契約(NDA)の締結
M&Aプロセスにおいて、まず最初に行うべきは、当事者間での秘密保持契約(NDA)の締結です。NDAには、開示される機密情報の範囲、情報の利用目的、情報漏洩が発生した場合の措置などを明確に規定します。この契約を締結することで、情報の開示を受ける側が厳格な秘密保持義務を負うことになり、万が一漏洩が発生した場合の法的根拠となります。
以下は、秘密保持契約書(NDA)のサンプルです。PDFですが、コピー&ペーストをwordなどにして作り直すことが出来ます。
2. M&A担当者・情報の範囲を絞り込む
M&Aの初期段階では、情報開示の範囲を必要最低限に絞り込みます。具体的には、交渉に関わる人間を限定し、その担当者だけがアクセスできる情報管理システムを構築するなど、情報の「見える化」を徹底します。また、M&Aの事実を知っている従業員も限定し、不必要な情報が社内に広まらないように配慮します。
3. 情報の物理的・電子的管理の徹底
M&Aアドバイザーは、機密情報を物理的・電子的両面から厳重に管理しなければなりません。
- 物理的管理:M&Aに関する紙の資料は鍵のかかるキャビネットで保管し、不要になった場合はシュレッダーにかける。
- 電子的管理:M&A関連のファイルはパスワード付きで管理し、メールで送付する際は暗号化を行う。クラウドサービスを利用する場合は、アクセス権限を厳格に設定する。
4. 従業員への教育・啓蒙活動
情報漏洩は、個人の不注意から発生することがほとんどです。そのため、M&Aアドバイザーの従業員に対して、秘密保持の重要性や具体的な情報管理ルールに関する教育を徹底することが不可欠です。
- 「M&Aの情報を決して口外しない」という誓約書を交わす。
- 情報漏洩のリスクを具体例を挙げて説明し、当事者意識を持たせる。
- 定期的な研修や勉強会を実施し、常に最新のセキュリティ意識を維持する。
5. M&Aプロセスにおける情報開示の段階的管理
M&Aの交渉段階に応じて、開示する情報の粒度を調整することも重要です。初期のノンネーム(企業名を伏せた)での情報提供から始まり、交渉が進むにつれて徐々に詳細な情報を開示していく段階的なアプローチを取ることで、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることができます。
M&Aにおける情報管理の徹底は「成功の鍵」
M&Aは、企業の未来を左右する重要な経営判断です。そのプロセスにおいて情報漏洩という事態に陥れば、それまでの努力が無駄になるだけでなく、企業そのものが大きなダメージを被ることになります。
今回の記事で解説したように、情報漏洩の危険性を事前に把握し、NDAの締結、情報の範囲限定、物理的・電子的管理の徹底、従業員への教育など、徹底した事前対策を行うことが、M&Aを成功に導くための不可欠な要素です。
M&Aを検討されている企業の経営者や担当者の皆様には、情報管理の重要性を再認識していただき、トラブルを未然に防ぐための対応策を身に付けていただくことを強くお勧めします。専門家であるM&Aアドバイザーとともに、万全の体制でM&Aに臨んでください。

学習塾・習いごと専門M&AサービスCROSS M&A(通称:クロスマ)は、業界ナンバー1の成約数を誇るBATONZの専門アドバイザーです。BATONZの私の詳細プロフィールはこちらからご確認ください。
また、弊社は、中小企業庁のM&A支援機関です。
学習塾・習いごとのM&Aについて、さらに詳しい情報や具体的な案件にご興味はありますか?どのような点でお力になれるか、お気軽にご相談ください。

↑ 中小企業庁ウェブサイト」へのリンク
