【初心者向け】M&A簡易概要書(IM)の書き方|譲渡を成功させる7つのポイント

譲渡を考えている経営者にとって、自社の魅力を最大限に伝え、理想の買い手と出会うための重要なツールとなるのが簡易概要書(IM)です。
この記事では、簡易概要書(IM)の作り方と成功のポイントを、具体的な内容や活用方法を交えて解説します。少し前にも学習塾・習いごと教室のM&A:成功に導く企業概要書(IM)の作り方というタイトルで記事を書いていますので、そちらもご参考にされてください。
なぜ簡易概要書(IM)が必要なのか?
簡易概要書は、M&Aの世界ではインフォメーションマテリアル(Information Memorandum)、略してIMと呼ばれます。IMを作成するメリットは、主に以下の3つです。
1. 会社の魅力を正確に伝えるプレゼンテーションツール
IMは、あなたの会社の事業内容、財務状況、強みなどを体系的にまとめた資料です。
これがあることで、買い手候補はあなたの会社について深く理解でき、より魅力的に映ります。 特に、買い手候補が初めてあなたの会社に触れる際、IMが会社の顔となります。
内容がしっかりしていれば、その後の交渉もスムーズに進むでしょう。
例えば、学習塾や習いごと教室であれば、ただ「生徒数が多い」と記載するだけでなく、「なぜ生徒が集まるのか」「競合と比べてどのような強みがあるのか」といった点をIMで具体的に示すことで、買い手はあなたの教室の魅力を肌で感じることができます。
2. 正しい情報を共有し、信頼関係を築く
IMを作成する過程で、売り手のアドバイザーは、あなたの会社に関する情報を整理し、正確性を確認します。この正確な情報を買い手候補に提供することで、両者の間で誤解のない情報共有が可能になります。 事前に確認された情報に基づくIMは、信頼関係を構築する上で非常に重要です。後から事実と異なる情報が出てきた場合、信頼を失い、交渉が決裂する原因にもなりかねません。IMは、透明性の高いM&Aを実現するための第一歩となります。
3. リスクを事前に把握し、トラブルを回避する
IMには、事業に関するリスクや課題も記載しておくことで、買い手は事前にそれらを把握できます。 例えば、
「最近、売上が減少傾向にある」という事実を隠すのではなく、「〇〇年のコロナ禍以降、オンライン授業への移行が遅れたため、対面授業の生徒数が減少した」といった背景を正直に記載することで、買い手はリスクを正しく評価できます。
これにより、後々のトラブルや交渉の決裂を防ぎ、お互いが納得した上でM&Aを進めることができるのです。
簡易概要書(IM)に記載すべきこと
簡易概要書には、会社の全体像を網羅的に記載する必要があります。以下の4つの項目を軸に、内容を整理しましょう。
1. ビジネスモデル
会社の事業内容や強みを定性的に評価する項目です。具体的な記載内容は以下の通りです。
- 事業内容: あなたの会社がどのような事業を行っているのかを簡潔に説明します。
- ビジネスフロー: 事業の全体像を視覚的に示すフロー図は、買い手の理解を深める上で非常に有効です。例えば、学習塾であれば、「集客→体験授業→入塾→通常授業→テスト・成績管理」といった流れを絵で示すことで、事業の全体像が掴みやすくなります。
- 取引先・仕入先: 主要な取引先や仕入先を記載します。学習塾の場合、教材の出版社や、システム開発会社などが該当するでしょう。
- 強み・弱み: 競合他社と比べて何が優れているのか、どのような課題があるのかを正直に記載します。
- 業界内での位置づけ: 業界全体の中でのあなたの会社の立ち位置や、地域における役割などを記載します。
2. 人事情報
会社の「人」に関する情報を記載します。
- 役員・従業員名簿: 従業員の構成(年齢、勤続年数など)を記載します。個人名は記載せず、「Aさん(40代、勤続10年)」といった形で記載します。
- 組織図: 会社や教室の組織体制を図で示します。教室が複数ある場合は、各教室の責任者やスタッフの配置状況を視覚的に示しましょう。
- キーマンの状況: 事業運営において重要な役割を担っている従業員(キーマン)がいる場合、その人物の担当業務や能力について記載します。
3. 設備・資産情報
会社の「モノ」に関する情報を記載します。
- 譲渡資産の範囲: 会社・事業譲渡の対象となる資産を明確に記載します。学習塾であれば、校舎、備品(机、椅子、PC)、教材、システムなどが含まれます。
- 設備情報: 内装費、家賃、リース資産など、事業運営に必要な設備に関する情報を記載します。
- 不動産: 自社所有か賃貸かを記載し、賃貸の場合は家賃や契約内容を明記します。
4. 財務情報
会社の「お金」に関する情報を記載します。
- 財務諸表: 過去3期分の損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)を記載します。
- 販売管理費内訳: 売上総利益から営業利益までの間に発生する経費(給与、家賃、広告宣伝費など)を詳細に記載します。
- 部門別の損益計算書: 学習塾や習いごと教室の場合、複数の教室を運営しているケースが多いでしょう。その場合、教室ごとの売上や経費を把握できる部門別の損益計算書を準備すると、買い手はどの教室に魅力があるのかを正確に判断できます。
簡易概要書(IM)の作成と構成
IMを作成する際は、買い手候補が「読みやすく、理解しやすい」ことを第一に考えましょう。 以下の構成を参考に、見やすいIMを作成してください。
1. エグゼクティブサマリー(Executive Summary)
IMの冒頭に、会社の全体像を1〜2枚にまとめたページを作成します。 ここには、会社の概要、事業内容、簡単な財務ハイライト(3期分の売上・利益の推移など)を記載します。 買い手候補はまずこのページを読み、興味を持てば次のページに進むことになります。 ここで「何か違う」と感じれば、その時点で交渉が打ち切られることもあるため、このサマリーは非常に重要です。
2. 会社の概要
会社の沿革、代表者のプロフィール、株主構成などを詳細に記載します。 代表者のプロフィールには、これまでの経歴や、なぜ事業を始めたのか、どのような想いで経営してきたのかなどを盛り込むと、買い手の共感を呼びやすくなります。
3. 事業概要
具体的な事業内容を詳細に記載します。 学習塾や習いごと教室の場合、以下の項目を盛り込むと、より魅力的なIMになります。
- コース・カリキュラム: どのようなコースやカリキュラムを提供しているのかを具体的に説明します。
- 教材: どのような教材を使用しているのか、その教材を選んだ理由なども記載すると、教育へのこだわりが伝わります。
- 生徒数・入塾実績: 過去3期分の生徒数の推移や、合格実績(進学校や難関大学など)を記載します。
- 教室(校舎)の状況: 教室(校舎)の写真や平面図、教室のレイアウトなどを掲載すると、買い手は具体的なイメージを掴みやすくなります。
- 競合との差別化: 周辺の学習塾や習いごと教室と比べて、どのような点で優れているのかを明確に記載します。
4. 財務状況
過去3期分の財務諸表や販売管理費の内訳を記載します。 単に数字を並べるだけでなく、「〇〇年に売上が急増したのは、新規事業としてオンライン授業を開始したため」といった、数字の背景にあるストーリーを補足することで、より説得力が増します。
5. ディスクレイマー
ディスクレイマー(免責条項)とは、「この資料はあくまで参考情報であり、内容の正確性を保証するものではない」といった注意書きのことです。 IMの最後にこのディスクレイマーを記載しておくことで、万が一、記載内容に誤りがあった場合でも、トラブルを防ぐことができます。
簡易概要書(IM)作成のヒント
IM作成は、あなたの会社の魅力を改めて見つめ直す良い機会です。 以下のヒントを参考に、効果的なIMを作成しましょう。
1. ヒアリングシートを活用する
IM作成にあたっては、通常はM&Aアドバイザーが詳細なヒアリングによってアウトラインを掴んでいきます。 IM作成のための詳細なヒアリングシートを使う場合がほとんどです。 ただし、ヒヤリングシートを売り手オーナーに丸投げすることはありません。
ヒヤリングそのものも非常に重要ですし、文章に起こすとオーナーの微妙な気持ちを捉えられなかったり、間違った解釈をしてしまう可能性があるからです。
まずは簡単なヒアリングシートで大まかな情報を得て、後日、詳細なヒアリングシートを使っていくという二段構えで実施することもあります。
このM&Aアドバイザーとのやり取りの中で、実はオーナーも自分で気づかなったことに再度向き合うきっかけになることもあります。対話によって掘り下げていくという作業は、意味があることなのです。
2. 写真や動画を活用する
百聞は一見にしかず、という言葉があるように、写真や動画は文字情報だけでは伝えきれない魅力を伝えてくれます。 学習塾や習いごと教室の場合、以下のような写真や動画を準備しておくと良いでしょう。
- 教室の様子: 授業風景や自習室の様子など、教室の雰囲気が伝わる写真や動画。
- 設備: 使用している教材やPC、備品などの写真。
- オーナーインタビュー: オーナーが事業への想いを語るインタビュー動画は、買い手候補の心を動かす強力なツールになります。
特に動画は、授業の進め方や、生徒と講師のコミュニケーションの様子など、静止画では伝えきれない情報を伝えるのに適しています。
個人情報が写りこまないように注意しながら、教室内部や外からの様子を動画や画像で提供することで、イメージがわきます。
最近は、居ぬき店舗や物件、中古車販売などでも動画が多用されています。それぐらい動画はインパクトを強く与えることができるからです。

動画の効果的な情報伝達力について
2014年4月にForrester Research社のJames L. McQuivey博士が行った研究では、動画の情報伝達能力の高さが示されています。博士は、1分間の動画がテキストに換算すると180万語、一般的なウェブページにすると約3,600ページ分の情報量に匹敵すると論じています。これは、視聴覚に同時に訴えかける動画の特性が、文字のみに比べてはるかに多くの情報を短時間で効率的に伝えられることを示唆しています。
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【実例(実話)】
画像を60枚、動画を1本
クロスマ扱いの案件で、このように画像と動画を提出したことがあります。
買い手様は、動画をとても気にってくださいました。画像よりも動画を何回もみたようです。
駅から歩きながら、案件までの道のりと、教室周りの様子、自転車を置くところ、そして入口から入って、中をぐるりと一周して、天井や床、廊下、物置、棚、壁、トイレ、給湯室と撮影した動画です。スマホ撮影でしたので、ぶれていましたし、決して見やすい動画ではありませんでしたが、「すごくイメージがわきました」というお言葉を頂きました。
3. テンプレートを活用する
IMをゼロから作成するのは大変な作業です。 CROSS M&A(通称:クロスマ)では、IM作成が難しい方には、ヒヤリングシートから、わかりやすいIM、買い手に伝わるIMの作成代行を致します。また、ご希望の場合は、IMのテンプレートもございますので、ご安心ください。
ご自分で思いの全てをぶつけるようにつくるもよし、私たちにご依頼いただくもよし、またはオーナーが書いてくださったものを、私どもが添削と言う形でお手伝いするもよしです。
必要な項目を漏れなく記載し、スムーズな取引ができるよう、丁寧にIMを作成して参りましょう!
まとめ:簡易概要書(IM)は「あなたの会社を語るストーリー」
簡易概要書(IM)は、単なる会社紹介資料ではありません。 あなたの会社がこれまで歩んできた歴史、事業への想い、そしてこれからM&Aを通じて目指す未来を伝える「ストーリー」です。 学習塾や習いごと教室の場合、生徒一人ひとりの成長を支え、地域に貢献してきたというストーリーをIMに盛り込むことで、買い手はあなたの事業をより深く理解し、その価値を正しく評価してくれるでしょう。
この記事を参考に、あなたの会社の魅力を最大限に引き出すIMを作成し、理想の承継相手を見つける第一歩を踏み出してください。

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