学習塾の利益率向上戦略:成功者が実践する売上最大化とコスト最適化の秘訣

学習塾を経営する上で、生徒の学力向上とともに重要なのが、安定した利益率の確保です。教育への情熱だけでは事業は継続できません。本稿では、学習塾における利益率の基礎知識から、成功者が実践する具体的な売上増加策、コスト削減策、そして利益率を飛躍的に向上させるための取り組みについて、詳しく解説します。
まずは、重要な利益率と、「利益」と言う言葉が含んだ用語について確認していきましょう。
利益率とは?その基本を理解する
まず、利益率とは何かを明確にしましょう。利益率とは、売上高に対してどれだけの利益が残ったかを示す割合であり、企業の収益性を測る最も重要な指標の一つです。

ここでいう「利益」にはいくつかの種類があり、学習塾の経営で特に意識すべきなのは、
売上総利益、営業利益、経常利益の3つです。

学習塾の場合、売上原価はテキスト代や教材費、外部委託費用など、売上に直接連動する変動費が主です。講師の給与をここに含める考え方もありますが、多くの場合は次の営業利益の計算に含まれます。

販管費(はんかんひ)は販売管理費の略です。人件費(講師・社員の給与)、家賃、広告宣伝費、水道光熱費など、塾運営にかかる主要なコストが含まれます。これは、本業でどれだけ稼げたかを示す重要な指標です。

借入金の利息など、本業以外の収支を含めた企業の総合的な収益力を示します。
学習塾経営において最も重要視すべきは、営業利益率です。これが高ければ高いほど、本業の収益力が高いことを意味します。
学習塾の利益構造の特徴は?
学習塾の利益構造には、他の業種にはない特有の特徴があります。
1. 固定費の割合が高いビジネスモデル
学習塾は、人件費(講師の給与)と地代家賃という、売上の増減に関わらず発生する固定費の割合が高いのが特徴です。特に講師の給与は販管費の大きな部分を占めます。生徒数が多少減っても家賃や正社員講師の給与は簡単には減らせないため、損益分岐点(利益がゼロになる売上高)が高くなりがちです。
人件費=講師給与ですが、この質を落とせば、生徒から保護者に伝わる満足度が低いものになりますので、講師はいわゆる「商品」なのだという意識を持つことで必要な経費だと思えるでしょう。
学習塾の肝でもありますが、良い講師がいるところには人が集まります。
似た観点で言えば地代家賃も箱物の営業をしている以上は、それなりに覚悟をもって良い立地を選定したほうがいいです。
駅に近いほど家賃は高い
広いほど家賃は高い
空中よりも1F店舗のほうが家賃は高い
つまりは、「ここに塾があったらいいなぁ~」「この場所最高だなぁ」と思える場所はやはり家賃は高くなります。
その中で、自転車を置くスペースがあり、看板も目立つように掲げることが出来、視認性もばっちりの場所を選ぶとなれば、これも必要経費です。
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【実例(実話)】
物件立地を考える場合、今、ネットで見ている比較対象物件という観点で言うと、なかなか選びにくい、結論が出しにくいのではないでしょうか。やはり物件は見たほうがいいです。
そしてA物件、B物件での迷いが生じたら、当然内見をしたときの直感に従っていいのですが、「その先の未来」を是非想像してみてほしいのです。
A物件は、駅徒歩1分、坪単価15,000円、20坪 家賃300,000円 1F店舗
B物件は、駅徒歩20分、坪単価8,000円、30坪 家賃240,000円 1F店舗
こんな内容の比較だったとします。
どちらを選びますか。
家賃と広さ、そして駅からの距離が比較対象になると思います。どちらも1F店舗でしたら、私は迷わずA物件を重視します。
坪数の30坪は魅力です。家賃も坪単価8,000円でしたらリーズナブルに見えます。でも駅徒歩20分は相当遠いです。
この場合「その先の未来」を予見した場合、「講師採用にものすごく難儀するだろう」ことを目に見えています。
もし、これがまったくの塾開校の一歩で右も左もわからず、アドバイスしてくれる人もいなかったならば、B物件を選んだかもしれません。なんとなくお得感が漂うからです。
上記しましたように、講師は必要経費であり、優秀な講師を雇用しなければ、のちのち講師の授業についての感想が生徒から保護者に伝わります。
その際に退塾につながる可能性を踏まえて言えば、講師の質はやはり重要なのです。
しかし、ここでは講師の質を追えるどころか、駅徒歩20分の場合には、塾至近に運よく住んでいる優秀な人を雇う選択一つになりますので、ほぼ確実に難儀することになります。
この選択=B物件の選択は・・・・ないです。
重要な視点をさらに言うと、上記の家賃差は月額60,000円です。これを年間に直すと720,000円の差異が生じます。
しかし、これは2名の生徒がいれば、十分に埋まる金額です。
2名の顧客を獲得しやすい店舗(教室)は、A教室、B教室どちら?と言えば、A教室です。
2. 変動費が低い、または管理しやすい
教材費や消耗品費、コマ数に応じたアルバイト講師の給与など、生徒数や売上高に応じて変動する変動費の割合は比較的低く抑えられます。これは、一度生徒を集めてしまえば、その後は比較的高い利益率を確保しやすいことを意味します。
3. 季節性とピーク需要
学習塾の売上は、入試前の冬期講習や受験学年の入塾が増える春先にピークを迎えるなど、季節変動が大きいです。このピーク時期にいかに集中的に売上を伸ばせるかが、年間利益率を大きく左右します。
この構造から、学習塾経営で利益率を高めるには、「生徒一人あたりの売上を最大化し、高止まりする固定費をいかに効率良く活用するか」が鍵となります。
売上高をあげるために成功者が取る方法とは
固定費が高い学習塾において、利益率を向上させるためには、まず売上高を徹底的に引き上げることが不可欠です。成功している塾は、単に生徒数を増やすだけでなく、「質の高い売上」を追求します。
1. 生徒単価の引き上げと高付加価値化
単に授業料を上げるのではなく、生徒一人あたりの月額支払額(生徒単価)を増やす施策が有効です。
- コースの多様化とアップセル/クロスセル: 通常授業に加え、苦手科目の個別補習、映像授業の併用、自習室の有料オプション、定期テスト対策の特別講座などを提供し、生徒が必要とする付加価値を高め、提案します。
- 長期休暇講習の受講率向上: 春期、夏期、冬期の各講習を、既存生徒に「年間カリキュラムの一部」として位置づけ、ほぼ全員が受講する仕組みを構築します。特に単価の高い夏期講習の売上最大化は、年間利益率の肝となります。
2. 生徒の「継続率」と「紹介」の最大化
新規生徒の獲得には多大な広告宣伝費(販管費)がかかります。利益率の高い売上とは、既存生徒が長く在籍し続ける売上です。
- 徹底した満足度追及: 保護者面談の回数を増やし、成績向上だけでなく、進路相談や生活面でのサポートも行い、高い顧客満足度を維持します。
- クチコミ紹介制度の強化: 満足度の高い保護者からの紹介は、広告費ゼロで生徒を獲得できる最も利益率の高い方法です。紹介者に特典を設けるなど、積極的に促します。
3. 地域のニーズに合わせた商品開発
ターゲット層(例:難関校受験、地域密着型、内部進学対策など)を明確にし、そのニーズに合致した差別化された特化コースを開発します。
競合他社にはない「選ばれる理由」を確立することで、価格競争に巻き込まれず、高い授業料を設定しやすくなります。
コストカットをするために成功者が取る方法とは
売上高を上げる努力と並行して、コストを最適化することで利益率を向上させます。特に固定費の割合が高い学習塾では、人件費と家賃の効率化が最重要です。
1. 人件費の最適化と効率化
人件費は通常、販管費の50%以上を占める最大のコストです。
- 業務の標準化とIT活用: 授業外の業務(成績管理、出欠確認、保護者への連絡)をSaaSや専用システムで自動化・効率化し、正社員がコア業務(生徒指導、面談、カリキュラム作成)に集中できる体制を作ります。
- 正社員比率の見直し: 授業をアルバイト講師に任せきりにせず、集団指導においては、一人の正社員が複数のクラスや講師を管理・監督する体制を構築し、正社員講師一人あたりの担当生徒数を最大化します。
- 指導形態のミックス: 利益率の高い集団指導を主軸としつつ、集団指導ではカバーできないニーズを映像授業や自立学習型個別指導で補完することで、人件費を抑えながら多様な教育サービスを提供します。
2. 固定費(家賃・施設費)の最適化
家賃も大きな固定費です。
- 教室の多目的利用: 授業時間外は有料の自習スペースや貸し会議室として活用するなど、空間利用の密度を高めます。
- 立地の見直し: 駅から遠すぎないが、駅前一等地よりも安価な立地を選び、広告宣伝費で集客をカバーするなど、バランスを考慮します。また、オンライン授業の比率を上げることで、必要な教室面積そのものを縮小することも検討できます。
売上を上げるためにはコストが必要。連動させるコストとは
コストカットは重要ですが、売上を増やすためには「投資としてのコスト」を適切に使う必要があります。成功者は、売上に直結する変動費や投資的販管費を、利益率の向上に「連動」させます。
1. 広告宣伝費の「変動費化」と効果測定
販管費である広告宣伝費は、果たして効果があるのだろうか・・・そう訝しがりながらも、止めないほうがいいです。非常に重要な支出ですし、いうなれば新規生徒獲得のための「投資」です。
- Webマーケティングへのシフト: チラシのような固定費的な広告から、CPA(顧客獲得単価)を正確に測定できるWeb広告やSNS広告にシフトします。これにより、広告効果と売上増加を連動させやすくなります。
- 季節講習に連動: 費用対効果の高い春期・夏期講習前の時期に集中投資し、その後の通年講座への移行(アップセル)で利益を回収する戦略をとります。
2. 成果連動型人件費の導入
正社員講師の給与は固定費ですが、アルバイト講師の給与やインセンティブ制度は売上に連動させることが可能です。
- コマ数連動: アルバイト講師の給与を担当コマ数や指導実績に厳密に連動させ、無駄な待機時間を減らします。
- 成果報酬: 生徒の成績向上率や継続率、紹介獲得などに連動したインセンティブを講師に支払うことで、講師のモチベーションを高め、それが生徒満足度、ひいては売上向上に直結する仕組みを作ります。
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【実例(実話)】
こんな取り組みをしたら利益率が向上した!
具体的な成功事例から、利益率向上のためのヒントを得ましょう。
成功事例:集団授業と自立学習のハイブリッド導入
私の仲間内の学習塾では、従来の個別指導中心から、集団指導とAIを活用した自立学習システムを組み合わせたコースを導入しました。
個別指導は基本として残した状態で、土曜日に集団指導(そこでは「集団クラス」と言ってました)を実施する形でプログラムをつくり料金形態を変えて提供する形にしたようです。
その集団クラスにAIの自立学習を組み合わせたという珍しいやり方でした。
最初私は、集団指導は集団指導で実施して、そのあとに自習のような自学時間を設けるやり方を想像していました。
でも実際は、異なりました。
取り組みとしては・・・
知識インプットを映像とAI自立学習に任せ、集団授業は応用問題の演習とディスカッションに特化というスタイルです。個別指導は、真に必要とする生徒へのスポット対応のみに限定する形でした。
もう少しわかりやすく言うと
最初のスタートが短期インプットとして映像とAIで自立学習
次のステップが集団授業で、演習とディスカッション特化型学習
ここで終わらず
次のステップとして個別指導という流れです。
今までのコア業務である個別指導を一番最後にあてがい、尚且つ「必要とする生徒へのスポット対応」としたのです。
ここで想像できると思いますが、人件費が大幅にカットされているのがわかりますでしょうか。
- 効果: 講師の人件費効率が大幅に向上。特に集団授業で講師一人あたり30名の生徒を指導できるようになり、生徒単価は維持しつつ、人件費率が従来の45%から35%に低下。結果、営業利益率が5%以上向上しました。
効果的で実践可能なコストカットの実現!
最後に、すぐにでも実践できる効果的なコストカットの方法をまとめます。
1. 教材費・消耗品費の徹底管理
教材は年間の使用量を予測し、まとめて発注することで割引率を高めます。また、プリントやテストはすべて両面印刷を徹底し、ペーパーレス化できる部分はタブレットやクラウドツールに移行します。これは変動費削減に直結します。
2. 契約・インフラコストの定期的な見直し
家賃、水道光熱費、インターネット回線、複合機リース契約などは、一度契約すると見直さないことが多々あります。
- 定期的な相見積もり: リース契約やインターネット回線は、2〜3年ごとに他社と比較し、より安価なプランへの乗り換えを検討します。
- 電力会社の切り替え: 新電力への切り替えなど、インフラコストの最適化を図ります。
3. 未収金・滞納の防止
授業料の未収金は、売上を圧迫する隠れたコストです。口座振替やクレジットカード決済を徹底し、自動で授業料が回収できる仕組みを導入します。
学習塾の経営は、教育の質を落とさずに、いかに高い利益率を維持・向上させるかの挑戦です。売上高の最大化と、固定費の効率的な利用、そして変動費の適切なコントロールを両輪で回すことで、安定した収益基盤を築くことができます。成功事例を参考に、貴塾に合った利益率向上戦略を実践してください。

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