初めての経営、初めての教室運営で注意すべき点(資金計画編)※日本政策金融公庫融資

創業融資の味方
日本政策金融公庫

はじめに:創業者は孤独な戦い。相談やアドバイスを求める先として、最適な金融公庫の担当者

新しい一歩を踏み出すとき、誰もが直面するのが「資金」という現実的な壁です。

特に学習塾という事業は、派手な設備投資は必要ありませんが、物件の保証金、内装工事、什器の備品、そして何より生徒が集まるまでの運転資金など、ある程度まとまった資金は必要です。

そんな時、多くの創業者が門を叩くのが日本政策金融公庫(以下、公庫)ではないでしょうか。私自身も創業のとき、その後の追加融資(コロナのときにお願いしました)などで公庫の門を叩きました。

電話で問合せた際も、実際にお伺いした際も職員の方々がいずれも丁寧で、相談の際もとても安心してお話を伺うことが出来た、そんな思い出もございます。

最初にお断りしておきますが、私は融資の専門家でも、元銀行員でもありません。

一人の学習塾経営者として、自らサイトで調べ、自らの足で歩き、悩みながら計画書を作成し、そして融資を勝ち取った経験を持つ「一歩先を行く先輩」に過ぎません。

この記事では、私の実体験に基づき、学習塾をスタートさせる際の融資相談で、何を準備し、どのような姿勢で臨むべきかをお伝えします。

これから夢を形にする皆さんの、小さな指針になれば幸いです。


1.事業計画書は、数字の羅列ではなく「情熱そのもの」

公庫の担当者がまず目にするのは、あなたが提出する「創業計画書」です。

これは、ただの事務書類ではありません。もちろんアバウトな数字を羅列するだけのものでもありません。どう表現したらいいか・・・言うなれば、「情熱そのもの」だと私は思います。

創業、起業、事業に対しての熱い想いがそこに表現されるのです。したがって、事業を成功に導くための設計図と言ってもいいでしょう。

具体的な書き方のアドバイスとして、私が特に重要だと感じたポイントを3つ挙げます。

① 独自の強みを「これでもか」と言語化する

「親身な指導をします」
「地域密着です」


といった抽象的な言葉は、残念ながら公庫の担当者には響かないと思います。なぜなら、どの塾も同じことを言いますし、それは言わずとも当然のことだからです。

・なぜその地域なのか(競合他社の分析と、自塾のポジション)
・ターゲットは誰か(補習塾なのか、難関校受験なのか、それとも特定の科目に特化するのか)
・既存の塾にない独自のメソッドは何か

これらを数字や客観的な事実を交えて説明することが肝要です。

私の場合はこんなことをやってみました。


事例(実話)コーナー

【実例(実話)】

CROSS M&A(クロスM&A)の代表である私も、長きにわたり、そして今も学習塾を運営しております。

最初の創業者融資や、その後、返済を終えた後の再度融資、そしてコロナ禍で利用させていただいた追加融資と経験がございます。

一番最初のときには、その事業計画の書き方でかなり悩みました。何しろ経験がないため、よくわからなかったというのが率直のところです。

また、当時は誰にも頼らず自分ひとりで作成したこともあり、多分、ところどころに甘いところがあったのでしょう。お願いしていた金額通りではなく、減額されて承認がおりました。
遮二無二1年目、2年目とやっていくうちに、最初の融資を返済終えました。

少しブランクがあきましたが、今度は塾運営が慣れたときに、教室複数開校の最中、ご利用させて頂きました。つまり返済を済ませ、そのあと再度という流れです。
ここでは、

・学習塾運営の特色
・学費と講習の関係性
・講師の配置にともなう合理的な運営

などなど、自分が得た経営の概要を数字に落としこんで担当者様に、説明することが出来ました。その際も担当の方とお話したり、追加で資料を提出するなどして、審査を通すことが出来ました。

そして、コロナです。
実際は、借入をしなくても運営できる可能性が十分あったのですが、「転ばぬ先の杖」的な感覚もあっての申し込みでした。

ですから、追加融資の際には、担当の方も

「このように資金が預金高にもあるのに、どうしてまた借りるのですか?」という質問されました。しかも2回か3回ぐらい聞かれましたので、

余裕を多くもっておきたい・・・という端的なレベルの回答では納得は得られないのだなということを学びました。

融資には設備投資と運転資金融資がありますが、私がお伝えしたのは、当時「設備投資と運転資金」のダブルでお願いしていたため、いろいろなお話をして、「運転資金」としての融資に落ち着きました。
余裕資金をまた次の教室立ち上げてで使いたいという内容プラス運転資金でしたので、担当者様も先を急ぎすぎている・・・と判断されたのかもしれません。

しかしながら、この追加融資(運転資金)もちゃんと通りました。

あのコロナが全国蔓延したとき、経営者として気持ちは全く落ち着きませんでしたが、こういう人たちとお話をすることで、建設的に考えることが出来ましたし、とても良い機会をいただいたと思っております。

そして、きちんと審査を通すことが出来たのは、やはり整合性ある計画書の提出だったと思えるのです。

すべては書面からのチェックです。
そして担当者の方はそこに「整合性があるのか」「実現性はあるのか」というところを見るのだと思います。

一番役立ったのは、

★自分なりにまとめた学習塾経営のシミュレーション

です。
これは、例えばAさんという生徒が入ったら、その時期が中学2年生だった場合、在籍期間がどの程度になるのか、月額の月謝がいくらになり、春、夏、冬にある講習ではどの程度の受講をしてくれる可能性があるのかという 個々のケースにおける売上高予測が一つ。

もう一つは、そのAさんという生徒さんから得られる売上高の事例が小学生の場合、中学生の場合、高校生の場合などのカテゴリわけした内容。

さらには、コストです。
運営するために、家賃、水道光熱費、通信費、事務用品費、人件費、支払い手数料などの販売管理費用がどの程度かかるのか、これもシミュレーションしました。

言うなれば、物語的に語れるような内容に数字データをしっかりと入れ込んだもの・・・です。

少なくともすべてがオリジナルで誰かの受け売りではない、説明するための資料としてこういう内容がわかりやすいだろうと、聞き手目線で作成したオリジナルのものです。


② 収支計画は「保守的」かつ「具体的」に

多くの創業者が陥る罠が、楽観的すぎる売上予測です。

「開校半年で生徒50名」と書くのは自由ですが、担当者は「どうやってその50人を集めるのか?」を冷徹に見ています。

・チラシの配布枚数と反応率の予測 ・体験授業からの入塾率 ・退塾率の想定

これらの要素を盛り込み、最悪のシナリオ(生徒が集まらない期間が長引いた場合)でも事業が継続できる根拠を示しましょう。

利益が出ることを見せるのも大事ですが、それ以上に「事業を潰さないためのリスク管理ができているか」が評価されるように感じました。

③ 創業の動機に「覚悟」を宿らせる

意外と軽視されがちなのが「創業の動機」欄です。

ここには、あなたがなぜ「雇われの講師」ではなく「経営者」になろうとしたのか、その魂を込めてください。

私の場合、教育業界の現状に対する不満と、自分が理想とする教育を実現したいという強い意志を書きました。

ここがしっかりしていると、後の面接での受け答えに一本の筋が通ります。


2.面接は「信頼」を勝ち取るための真剣勝負

書類が通れば、次はいよいよ担当者との面接です。

ここで最も大切なのは、知識をひけらかすことでも、無理に大きく見せることでもありません。「この人なら、貸したお金をきっちり返してくれる」という信頼感を与えることです。

清潔感と誠実な姿勢

学習塾の経営者は、保護者や生徒から信頼される存在でなければなりません。

面接には必ずスーツで臨み、言葉遣いや振る舞いにも細心の注意を払ってください。当たり前のことのように思えますが、これができない創業者は意外と多いそうです。

数字を頭に入れておく

事業計画書に書いた数字は、何も見ずに答えられるようにしておきましょう。

「損益分岐点は生徒何名の時か?」
「1人あたりの獲得コストはいくらか?」


担当者からの質問に対し、いちいち書類をめくって確認していては、経営者としての資質を疑われます。自分の事業の数字は、自分の血肉となっているべきです。

「わからないこと」への対処

もし、答えに窮するような鋭い質問をされても、嘘をついたり誤魔化したりしてはいけません。

「その視点は漏れていました。すぐに調査して、後ほど回答させていただきます」

と素直に認め、誠実に対応することが、結果として信頼に繋がります。知ったかぶりは、プロの目にはすぐに見抜かれます。


3.自己資金は「本気度」のバロメーター

実体験として痛感したのは、自己資金の重要性です。

「お金がないから借りる」のは当然ですが、

公庫側からすれば「これから事業をしようという人間が、これまでどれだけ準備をしてきたか」を、貯金額という客観的な数字で判断します。

親からの援助や、一時的に借りてきた「見せ金」は、通帳の履歴を見ればすぐに分かります。

毎月コツコツと積み立ててきた跡が見える通帳は、それだけで「この人は計画性があり、我慢強い人物だ」という強力な推薦状になります。

もし、今から起業を考えているのであれば、たとえ少額でも「起業のための貯金」を記録として残しておくことを強くお勧めします。


4.最後に:融資はゴールではなくスタート

融資が決まった瞬間、大きな達成感に包まれるはずです。

正直な話、私もそうでした。

しかし、忘れてはならないのは、融資を受けたお金は「自分のお金」ではなく、いつか返さなければならない「社会から託されたお金」だということです。

学習塾の運営は、生徒の人生を預かる非常に責任の重い仕事です。

公庫から融資を受けられたということは、公的な機関から「あなたの事業には社会的な価値がある」と認められたということでもあります。

壁にぶつかったとき、融資相談の際に作成したあの熱い事業計画書を読み返してみてください。

そこには、あなたがなぜこの道を志したのか、その原点が刻まれているはずです。

これから学習塾を始める皆さんが、公庫という力強い味方を得て、素晴らしい教育の場を創り上げられることを心より応援しています。


補足追記

1.日本政策金融公庫の面接で「よく聞かれる質問リスト」

面接では、計画書の数字の裏付けと、経営者としての「危機管理能力」が問われます。以下の質問には即答できるよう準備しておきましょう。

創業動機・強みについて

  • なぜこの激戦区(あるいはこの立地)で開校しようと思ったのですか?
  • 近隣の競合塾(大手・個人)と比較して、生徒があなたの塾を選ぶ決定的な理由は?
  • 講師としての実績は十分でも、経営者として「数字」を管理する自信はありますか?

集客・運営について

  • 開校初月の目標生徒数は何名ですか?また、その根拠は?
  • チラシやWeb広告以外に、地域に認知されるための独自の工夫はありますか?
  • もし開校から3ヶ月間、生徒が一人も来なかった場合、どう対処しますか?

資金・収支について

  • この事業の損益分岐点(固定費を賄える生徒数)は何名ですか?
  • 自己資金はどのように準備しましたか?(通帳の履歴に基づいた説明が必要)
  • 今回の融資希望額のうち、運転資金の使い道を具体的に教えてください。

2.学習塾・開校初期の集客アクションプラン

開校前後は、いかに「この場所に塾ができた」という認知を広げ、信頼を構築するかが勝負です。

① 【開校1ヶ月前〜】徹底した地域への認知広報

  • ポスティングの戦略的実施: 大手業者に頼まず、自らターゲットエリア(小学校・中学校の通学路沿いなど)を歩いて撒き、地域の特性を肌で感じます。
  • Googleビジネスプロフィールの登録: 「地域名+塾」で検索された際に出るよう、外観や教室内の写真を10枚以上掲載し、情報を最新にします。

② 【開校15日前〜】「無料体験会」という名のイベント化

  • 単なる体験授業にしない: 「最新入試分析セミナー」や「定期テスト対策勉強会」など、保護者が「行ってみよう」と思えるテーマを設定します。
  • 特典の明確化: 「先着10名、入会金無料+初月授業料半額」など、初期ユーザーを確保するための強力な動機付けを用意します。

③ 【開校当日〜】「顔の見える」情報発信

  • 校門前配布(門配): 登校時間や下校時間に合わせて、講師自らが消しゴムや付箋を付けたチラシを配り、顔を覚えてもらいます。
  • SNSでの日常発信: 指導風景や教室のこだわり、講師の教育観をInstagramやブログで発信し、親近感と安心感を醸成します。

④ 【開校後1ヶ月〜】紹介制度の構築

  • 紹介キャンペーン: 最初の生徒が1人でも入ったら、その生徒と保護者を全力で満足させます。「友達紹介特典」を整備し、初期メンバーからの口コミを加速させます。


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