買収検討の方へ:他の業種にはある「未入金」が、なぜ塾にはほとんどないのか

学習塾の買収は即効性が高い理由の一つはコレ →

学習塾経営は、未入金は極めて極めて起こらない

はじめに

こちらの記事は、学習塾を買収検討の方向けの記事です。経営はすべて数字の世界です。一からのスタートの場合は、最初にコストをかけて一から立ち上げるわけで、売上は0からです。
しかし、買収の場合、多寡の差こそあれ、売上0からではなく、売上がある状態からのスタートであることがほとんどです。
(中には、ほぼ閉校前で生徒数が0人という案件もあるかもしれませんが、それはほとんど閉校と一緒です)

それでは、学習塾の売上に絡む話になりますので、じっくり読まれてください。

1. 学習塾で未入金が極めて少ない理由

多くのサービス業や小売業、BtoBビジネスにおいて、「未入金」や「売掛金の回収不能」は、経営を脅かす深刻なリスクの一つです。

しかし、学習塾という業態を長く観察すると、この未入金という問題が、他の業種に比べて極めて少ないという特殊な事実が浮かび上がります。

その理由は、学習塾のサービス構造と、保護者・生徒との契約関係に深く根ざしています。

1-1. 前払いまたは口座振替の徹底

未入金リスクを最小限に抑える最大の要因は、多くの学習塾が「前払い」、あるいはそれに準ずる「口座振替・クレジットカードによる自動引き落とし」を採用している点にあります。

  • 前払いの構造:

    多くの塾では、当月分の授業料を前月末までに支払う形式をとっています。例えば、4月分の授業料は3月末に支払うのが一般的です。これにより、サービス提供の時点で既に代金が回収されている状態となるため、実質的に「未入金」が発生する余地がなくなります。これは、必然的に前払い構造にしなくてはいけないからです。

    授業契約は講習や超短期のイベント的な要素もあるかもしれませんが、学習塾の授業はたいていは年度契約となっています。

    つまり退塾するまで、自動的に契約が更新される形になっています。月ごとの都度契約をやっていたら処理が煩雑すぎます。
    賃貸契約で一か月ごとに家賃を支払う、サービスの料金を一か月ごとに支払う・・・そのようなスタイルではなく、自動更新されるサービスとか期限付きで自動更新される契約と似ています。


  • 自動引き落としの仕組み:

    口座振替やクレジットカード決済は、指定された期日に自動的に料金が引き落とされるため、保護者による「振り込み忘れ」という最も一般的な未入金要因を排除できます。自動引き落としの承認を得ることは、入塾契約の一部であり、保護者側もこれをサービスの利用条件として受け入れています。

1-2. サービスの中断という強力な担保

学習塾のサービスは、その性質上、「毎月継続して提供される」ことが前提です。この「継続性」こそが、未入金発生を防ぐ強力な担保となります。

もし未入金が発生した場合、塾側は当然ながら、翌月以降の授業の提供を停止するという措置をとることができます。

他の業種では、例えば商品を購入された後の代金回収が滞った場合、その商品を回収するのは困難です。

しかし、

学習塾における「商品」は「未来の授業提供権」であるため、未入金が発生した時点でその提供を止めることが法的に、かつ契約上認められています。

子どもたちの「学習の機会」を中断させることは、保護者にとって最も避けたい事態です。

特に受験生を持つ家庭にとって、料金未納による授業ストップは、子どもの将来に直結する大きな問題となるため、最優先で支払いを履行するという強い動機付けになります。

1-3. 信頼関係と教育への投資意識

学習塾というビジネスは、単なる商品売買ではなく、「教育」という未来への投資に関するサービスです。保護者は、子どもの学力向上と将来のために費用を支払っており、その支払い行為には、単なる対価の支払いを超えた「責任感」や「投資意識」が伴います。

安易に支払いを滞納するという行為は、子どもの学習環境を危うくするだけでなく、塾との信頼関係を損ない、結果として子どもの教育に悪影響を及ぼすことを、保護者はよく理解しています。

この心理的な側面も、未入金が起こりにくい重要な要素です。

2. 未入金があっても入金してくれる可能性が99%

仮に何らかの理由で未入金が発生したとしても、学習塾においてはその後の回収率が極めて高い、すなわち99%以上の確率で最終的には入金されるというのが実態です。この高い回収率も、前述の理由によって支えられています。

2-1. 支払い遅延のほとんどは「うっかり」

未入金が発生するケースのほとんどは、意図的な支払い拒否ではなく、以下のような「うっかりミス」に起因します。

  • 振込忘れ: 銀行窓口やオンラインでの振込手続きを単に失念していたケース。
  • 残高不足: 口座振替の期日に、引き落とし口座の残高がたまたま不足していたケース。
  • 書類不備: 入塾時の口座振替依頼書に不備があり、初回引き落としが実行されなかったケース。

これらのケースは、塾側が丁寧に入金催促の連絡(電話、メール、手紙など)を行うことで、保護者はすぐに状況を理解し、迅速に不足分を振り込でくれます。

自動引き落としが一度失敗しても、翌月再請求をかける仕組みがあれば、さらに回収率は高まります。

2-2. 迅速かつ適切なコミュニケーション

学習塾では、入金遅延が確認された場合、比較的早い段階で保護者に対して連絡をとります。多くの場合、滞納が長期化する前にコミュニケーションが図られ、保護者も「子どものため」を思い、未払いを解消してくれるのです。

支払い意思自体がない家庭は、そもそも入塾の段階で契約しないか、数ヶ月で退塾する傾向があるため、長期にわたって未入金が続くケースは稀なのです。

3. きわめて特殊なケース:未入金が発生する1%の事例とは?

未入金が最終的に回収不能となる、極めて特殊な1%のケースとは、前述の「うっかりミス」や「意図的な支払い拒否」とも異なる、特殊な家庭環境や緊急事態に起因します。これは、個々の学習塾が経験する「例外中の例外」です。

3-1. 家庭環境の急変

最も多いのは、保護者の予期せぬ経済的な急変や、家庭事情(離婚、別居など)に伴う連絡不能状態です。

  • 保護者の失職・病気: 主たる支払い者が急な失職や重篤な病気に見舞われ、経済状況が一変して授業料の支払いが完全に不可能な状態に陥るケース。
  • 離婚・別居による支払い責任の不明確化: 夫婦間で支払いの責任の所在が曖昧になり、「私ではない、相手が支払うはずだ」といった理由で双方が支払いを怠り、結果的に未入金となるケース。特に、連絡窓口となっている保護者と、実際に支払いを行っている保護者が異なる場合に発生しやすい問題です。

  • 夜逃げや突然の転居: 稀ではありますが、家庭が突然夜逃げしたり、音信不通で転居したりした場合、連絡手段が途絶え、物理的に請求が不可能になるケースです。この場合、在籍生徒の安全上の確認も必要となり、未入金以上に深刻な問題となります。

これらのケースは、支払い能力や支払い意思の問題を超え、家庭の根本的な状況変化によるものであるため、通常の催促では解決が困難であり、最終的に塾側が不良債権として処理せざるを得なくなります。しかし、その発生率は極めて低く、多くの塾では10年以上にわたる経営の中で1件あるかないかという水準です。


事例(実話)コーナー

【実例(実話)】

今までの学習塾運営を振り返り、自分自身が教室長を兼任したケース、教室長として社員を雇い運営したケースなどをすべて思い出しても、完全未入金で終わってしまったのは、たったの1例です。
本来1例もあってはいけないことですが、それでも15年超の歩みの中で1例であれば、ものすごくひくい確率で起こるアクシデントだと言えるでしょう。

生徒がお金を払うわけではなく、保護者ですので、この入金、未入金に関してのことは、すべて保護者にかかってきます。

やはり、教育をしっかりと受けさせたいという思いはどの保護者さんもお持ちですから、そうそう未入金になることはありません。

とはいえ、うっかり間違えとか口座の残高不足で引落が出来ずにお振込みいただくという事例は、比較的多いです。

完全未回収で終わってしまうというのは、究極のところ簡易裁判で判決をもらっても回収できなかったという一回です。
簡易ですので、大がかりではないにしても内容証明を送達したり、訴状作成をしたりと、すべて自分でやったのですが(弁護士など入れません)勉強になりました。
判決を出してもらう裁判所でも被告となったお母さんは来ませんでした。
その後、強制執行という選択もありましたが、それはしませんでした。つまりこの件は未回収案件として自分の中に一つだけ失敗した事例です。


ここで一つ、この言葉が出たら要注意という言葉をマークしておきましょう。

「誰も払わないとは言っていない」

この言葉です。
よくドラマとかでも出てきます。

授業を実施した対価ですから、正当な請求権があったとしてもお金の問題には民法が絡んできます。
これがまた細かなルールというか民法上の凡例であるとかもありますので、簡単に決着がつく問題ではないのです。

上記の言葉を言うようになったら、もうかなりこじれています。
内容証明をやってもダメな場合も多くその先に進んでもかなり厳しいかもしれません。

一番は、そういう方を顧客にしないように見抜く力ですが、最初からそういうことを見抜ける人などいないです。

実例(実話)ですので、解決策、とっておきの策をこちらに記載出来れば一番いいのですが、今もって私もまだこの部分での経験が不足しているようです。

でも一つ言えることは、未入金の状態をシステム等で発見したら、後回しにしないですぐに連絡を取ることです。
それは電話が良いです。
メールとかSNSとかでは、なかなか通じない人もいます。
電話で直にお願いするというオーソドックスな方法が効果があります。

ほとんど大部分の方は、悪意はありません。
そして、きちんと入金してくださいます。

よって、99%(いや・・・それ以上です)は問題ないということです。

そして、この未入金はほぼない!という実態の良い意味での副産物が売上予測が立ちやすいということです。

では以降、その内容をご覧ください。


4. 売上予測の容易さがもたらす経営の安定性

学習塾における未入金の少なさと前払い制の徹底は、経営的な観点から非常に大きなメリットをもたらします。それは「売上高の正確な把握と予測の容易さ」です。

4-1. 在籍数に基づく精密な売上予測

前払い制と未入金リスクの低さにより、塾は毎月の売上高を、月末時点の「在籍生徒数」から極めて正確に予測することができます。

  • 月謝売上: 在籍している生徒数と、各生徒が受講しているコースの月額料金が明確であれば、翌月およびそれ以降の月謝売上高はほぼ確定します。
月謝売上=生徒i(選択コース×コース単価)

未入金によるブレがほぼないため、この計算式がそのまま実績に繋がります。

4-2. 講習売上高の予測の精度

さらに、この在籍情報からは、年間で大きな売上を占める季節講習(春期、夏期、冬期)の売上高も高い精度で予測可能です。

  • 受験生の把握:

    小学生、中学生、高校生の在籍状態に加え、特に「非受験生」と「受験生」の区別が明確であれば、夏期講習などの大口の講習に申し込む生徒の母数が明確になります。受験生は講習への参加率が高く、受講コマ数も多い傾向にあるため、彼らの在籍数は講習売上高を予測する上での最重要ファクターとなります。

  • 過去データとの比較:

    「昨年の受験生比率」と「今年の受験生比率」を比較し、さらに「一人生徒あたりの講習平均受講単価」といった過去のデータを適用することで、営業努力を織り込まないベースの講習売上高が事前に算出できます。

この売上予測の容易さは、人件費、家賃といった固定費の支払い計画を狂わせることがなく、新規開校や設備投資などの将来的な経営判断を安定的に下すための強固な基盤となります。

学習塾は、「教育」という特性と、その支払システムによって、他の業種では避けられない未入金リスクを極限まで低く抑え込んでおり、この「未入金が極めて少ない」という特殊な経営環境こそが、学習塾業界の安定性の源泉となっているのです。

さて・・・最後の最後、
上記に「営業努力を織り込まないベースの講習売上高」と書きました。

わかりやすく言うと、データから営業上の努力をしなくても読める売上高というものがあるということです。

そこに「営業努力のある講習売上高」を加算していくのですが、それについては、また別の記事で詳細書いてあります。
いくつか書いていますが、その中で、

学習塾の売上高は、月間売上高の12倍ではなく16倍で計算する!?
↑ ↑ ↑
こちらの記事で何となくのイメージをつかんでみてください。


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