クレームは教室を成長させる最高の「声」

どんな業界にもクレームは存在します。

それは学習塾や習い事の教室も例外ではありません。

「うちの子、全然成績が上がらないじゃないですか!」
「月謝を払っているのに、先生の教え方が合わないみたいで……」


このような保護者からの声を聞くと、つい身構えてしまうかもしれません。しかし、クレームを単なる「厄介ごと」として片付けるのは非常にもったいないことです。

なぜなら、クレームの裏側には、その教室に対する強い期待感が隠されているからです。

クレームを避けて通ることはできません。むしろ、クレームを真正面から受け止め、それを教室をさらに良くするための貴重な「声」として活かす姿勢こそが、これからの教室運営には不可欠です。

クレームを成長のチャンスと捉えることで、教室はより信頼され、生徒も保護者も安心して通える場所へと進化できるでしょう。

なぜ保護者はクレームを言うのか

保護者がクレームを言う背景には、様々な心理が働いています。表面的な不満だけでなく、その奥にある本当の感情や要望を理解することが、適切な対応の第一歩となります。

1. 期待と現実のギャップ

「塾に通わせたら、すぐに成績が上がるはず」
「この習い事を始めれば、うちの子は自信を持つようになるだろう」


保護者は、お子さんの未来のために、大きな期待を抱いて入会します。しかし、努力がすぐ結果に結びつかなかったり、思うように成果が見えなかったりすると、その期待が裏切られたと感じ、不満がクレームとなって現れます。これは、保護者が教室を心から信頼し、大きな希望を託している証拠とも言えるのです。

では、実例を見てみましょう。


事例(実話)コーナー

【実例(実話)】

ある学習塾で、中学3年生の保護者から

「夏期講習に通わせたのに、志望校の判定が上がらない。お金を返してほしい」

というクレームが入りました。詳しく話を聞くと、その保護者は「夏期講習で一気に偏差値が10上がる」と期待していたことが判明。
しかし、お子さん自身の学習習慣は身についておらず、宿題もほとんど手つかずの状態でした。この場合、保護者の「お子さんが成長してほしい」という強い願いが、現実とのギャップによって不満に変わってしまったのです。

保護者は、不安をお金に換算して言ってくることがあります。
上記のような事例です。期待した結果が出ていないから返金してほしい「ぐらいだ」というニュアンスであることがほとんどです。
つまり実際には、それは無理なことがわかっているけれど、口に出して不満を表明したいのです。
学習塾や習いごと教室は、授業やレッスンを提供するサービス業であるため、実施した授業料やレッスン料の返還は行いません。授業やレッスンの対価としてお金を支払っていただく仕組みだからです。保護者は、その返金は叶わないことは百も承知しています。

でも言える材料とか不満を表明する形が思いつかないため、そのように言うのです。
しかし、これも保護者の気持ちになって、逆の立場で考えれば理解できる・・・そう思うようにするだけでも、とてもいいクレーム対応になります。

心の中で「理解できる」という気持ちを持つのか・・・はたまた「何を言ってるのだこの保護者は?」という反感的な気持ちを持つのか・・・この両者では、顔つきや言葉が全く異なるでしょう。

まずは相手の気持ちを理解しようという気持ちで接してみてください。


続いては、「不安」についてです。
人は不安を感じると、その不安を心のうちに留めておくことが難しくなり、早く不安から解消されたくなります。これは誰でもそうです。

2. 不安の解消

保護者は、お子さんの成長を一番に願っています。しかし、その一方で

「本当にこのやり方で大丈夫だろうか」
「うちの子、他の子についていけてるかな」


といった不安を常に抱えています。

教室からの情報が不足していると感じたり、お子さんの様子が掴めなかったりすると、その不安はどんどん膨らんでいきます。

その結果、「どうなっているんですか?」という形で、教室にSOSを送るのです。

これは往々にして教室側からの報告不足が大きな原因であることが多いです。では実例を見てみましょう。


事例(実話)コーナー

【実例(実話)】

あるピアノ教室で、小学2年生の保護者から「先生のレッスンは本当に効果があるのですか?毎週通っているのに、発表会の曲が全然弾けないんです」という問い合わせがありました。

先生は、日頃から生徒の小さな成長を丁寧に見ていましたが、保護者へのフィードバックが不十分でした。保護者は、お子さんが練習している姿を見ても、その努力が報われているのか、レッスン内容が適切なのかが分からず、強い不安を感じていました。

このケースは、実は多いです。
教室からのアナウンスメントの不足、連絡事項の不徹底、事務的な連絡のみの対応・・・などなど、教室のスタンスに対する不満の表明であるともいえます。

CROSS M&A(通称:クロスマ)のアドバイザーは教室運営をする際に、保護者の存在を大切にすることをかなり意識しています。
お預かりしたお子さんを大事にするのは当然なのですが、それと同等、またはそれ以上に保護者の存在を意識します。

・生徒さんの保護者全体への連絡
・属性ごとの連絡(例えば小学生向け、中学生向け、高校生向け、中学1・2年生向け、受験生向けなど)
・個別の連絡


この3つを毎日意識しています。特に「個別の連絡」は非常に重要です。

生徒全員ではなく、個の案件として、その子の内容を保護者へ送信するということは大切です。

そして、メールであれ、その他の連絡ツールであれ、保護者からのreplyがあるかどうかについても実は重視ポイントにおいています。

これはどういう意味かというと、
結論から言えば、保護者とのやり取りが希薄な教室では退塾が多くなるのです。これは長年運営をしてきて、教室ごとに退塾率が異なるわけですから、よくわかります。

その尺度として、保護者へのメッセージ、連絡はどの程度徹底されているのかというものを掲げているのです。
実際、保護者への能動的なメッセージ送信が少なければ、保護者からの返しが少なくなります。
いつも同じようなテンプレメールの連絡事項であれば、やはり保護者からの返しはほぼなくなります。

こうなったら末期症状とみていいです。

保護者とのコンセンサスが取れない教室が大いに繁盛することはないからです。



続いては、保護者の自然な心理についてです。

3. 責任感と自己防衛

お子さんの学習や習い事の結果が思わしくないとき、


「もしかして、私の選択が悪かったのかも」

と自分を責めてしまう保護者も少なくありません。

その自己防衛の心理から、

「塾の教え方が悪い」
「先生との相性が悪い」
と、

責任を教室側に求めることで、自分を正当化しようとする場合があります。この心理の根底には、「お子さんにとって最善の選択をしたい」という強い責任感があることを忘れてはいけません。

自己防衛本能は人間がだれしも持っている自然なものです。「責任」を取りたい!と思っている人はそうそういません。責任は回避したいのが本音です。
そのときに、誰かのせいにしたくなるのは、これまた自己防衛本能からうまれるものなのです。

この理解を持っていれば、やはりこのようなクレームがあった際も、あたたかく対応できるのではないでしょうか。


さて、それでは、実際にクレームがあった場合に、どうしたらいいのか。具体例を交えてお伝えしてまいります。


クレームを「最高の改善提案」に変える対応術

クレームの裏側にある保護者の心理を理解した上で、次に大切なのは具体的な対応です。クレームは、教室運営における潜在的な課題を浮き彫りにしてくれる貴重な機会。それを改善へと繋げるための対応術を解説します。

1. 傾聴と共感:まずは受け止める姿勢

クレーム対応の最も重要なポイントは、

「まずは相手の話を最後まで聞く」ことです。

「それは違います」「そうじゃないんです」と途中で反論したり、言い訳をしたりするのは絶対にNGです。

まずは保護者の感情に寄り添い、「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません」と、共感の姿勢を示すことが大切です。

相手の話をさえぎらず、相槌を打ちながら、保護者が何を不満に思っているのか、何に不安を感じているのかを丁寧に聞き出しましょう。

この第一段階の最後まで話を聞くということが出来ていれば、たいていのクレームはきちんとまとめることが出来ます。

2. 事実確認と迅速な対応

話を聞いたら、次にやるべきは事実確認です。

「そうだったんですね。すぐに担当講師と状況を確認し、改めてご連絡いたします」

と、具体的な行動を伝えることで、保護者の安心感を高めます。 事実確認は、保護者の言い分だけを鵜呑みにせず、担当講師やスタッフからも状況をヒアリングし、客観的に把握することが重要です。この段階で、保護者との間に認識のズレがないかを確認しましょう。

でも・・・
実際にやってもらうとわかりますが、この方法だと保護者のもやもやは晴れません。

この「改めてご連絡」よりも保護者の安心を高める方法は、

「そうだったのですね。大変失礼いたしました。私の責任のもとすぐに状況を確認して、具体的に指示をして二度とこのようなことが起こらないようにいたします」

と、責任のありかを「自分」にもっていくことです。
上記では、担当講師にもっていっていますが、教室の責任者は対応しているオーナー、または教室長、塾長ですから、責任回避をせずに、

「私がここの教室長ですから、この教室で起こったことのすべては私に責任があります」ぐらいの覚悟できちんと目をみて伝えることです。


事例(実話)コーナー

【実例(実話)】

保護者の話を聞いた後、教室長がお子さんを呼んで面談を実施しました。

その結果、宿題に手をつけていないことや、授業で分からないところを質問できていないことが判明しました。塾長は、この事実を隠さず、保護者に丁寧に伝えました。

そして、「まずは夏期講習の復習から始め、日々の学習習慣を身につけることを目標に、宿題の量を調整し、個別フォローを強化します」と、具体的な改善策を提案をしました。

その上で、保護者にもお子さんへの声かけを協力してもらうよう依頼しました。結果として、保護者は「塾に丸投げしていた」と気づき、連携して取り組む姿勢に変わりました。

3. 具体的な改善策と情報共有

事実確認ができたら、次は具体的な改善策を提示します。

「今後気をつけます」という抽象的な言葉ではなく、

「今後は毎週、保護者さまへメールで授業の様子をご報告いたします」
「次回から、担当講師を〇〇に変更して様子を見てみましょう」

など、具体的にどう変わるのかを明確に伝えましょう。

また、クレーム対応の内容は、必ず教室全体で共有し、再発防止に努めることが大切です。

クレームは特定の生徒や保護者だけの問題ではなく、教室全体の課題として捉えるべきです。


クレームを未然に防ぐための日常の工夫

クレームを「最高の改善提案」として活用できるようになったとしても、できればクレームは少ないに越したことはありません。クレームを未然に防ぐためには、日頃からの小さな努力が欠かせません。

1. 密なコミュニケーション

クレームの多くは、保護者の不安や不満が蓄積された結果として起こります。これを防ぐためには、日頃から保護者と密にコミュニケーションを取ることが最も効果的です。 定期的な面談や電話連絡はもちろん、授業後の簡単なフィードバック、お子さんのちょっとした良い変化を伝えるメッセージなど、こまめな情報共有が信頼関係を築きます。

このことが徹底されていれば、そうそうクレームは起こらないです。

仮にあったとしても日常の中で、保護者との信頼関係が出来ていますから、保護者は言いやすい環境になっており、教室側も裏表なく実態を示すことでてきているわけです。

いあゆる風通しがとてもよくなっている状態ということです。
組織でもそうですが、言いたいことが言えない環境は淀みます。それと一緒です。

2. 小さな成功体験を共有する

「成績が上がらない」というクレームは、保護者がお子さんの成長を実感できていないことが大きな原因です。 テストの点数だけでなく、「計算ミスが減った」「苦手だった漢字が書けるようになった」「先生に自分から質問できるようになった」など、小さな成功体験を具体的に伝えることで、保護者は「うちの子は頑張っている」と実感でき、安心感につながります。

3. ルールや目標の明確化

入会時に、教室の指導方針や目標を明確に伝え、保護者と共通認識を持つことも大切です。「この塾では、〇〇を目指します」「この習い事では、まずは〇〇ができるようになることを目標とします」といった具体的な説明をすることで、期待値のズレを最小限に抑えられます。

まとめ:クレームは教室を成長させる「声」

クレームは、避けて通るべきものではありません。それは、教室がより良いサービスを提供するためのヒントであり、成長するための「声」です。 クレームを言ってくる保護者は、その教室に対して失望しているのではなく、「もっと良くなってほしい」という強い願いを抱いています。その期待に応えようと真摯に対応することで、教室は保護者との信頼関係を深め、生徒にとっても、より安心して学べる場所へと進化していくでしょう。

クレームを単なる「厄介ごと」ではなく、教室を成長させる最高のチャンスと捉え、前向きに向き合ってみませんか。その一つひとつの対応が、やがて教室の大きな財産となり、多くの生徒と保護者から愛される場所を作り上げていくはずです。



BATONZ×CROSS M&A

学習塾・習いごと専門M&AサービスCROSS M&A(通称:クロスマ)は、業界ナンバー1の成約数を誇るBATONZの専門アドバイザーです。BATONZの私の詳細プロフィールはこちらからご確認ください。
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