買収検討の方へ:個別指導塾は、コスト管理をしてこれからの新しい分野をコース設定すれば確実に成長分野になる!

塾だけど、新しいコースを生み出す
情報活用能力(STEAM教育)
金融リテラシー
アート思考

今日の記事も、どちらかと言うとこれから学習塾を買収して、事業を開始しようという方向けの内容です。個別指導塾メインの内容になっています。

個別指導塾産業の未来と、確実な成長をもたらす戦略的転換について

少子化が加速する日本において、教育産業、とりわけ学習塾業界は斜陽産業であると安易に語られがちです。

語られがち・・・と言いますか、すでにかなり昔から少子化、少子高齢化と言う言葉はあちこちで踊りまくりでした。

子供の数が減れば、当然ながら顧客母数は減少する・・・もはや学習塾は「オワコン」では?という内容のネット記事も散見されています。

しかし、このマクロな視点だけで事業の将来を悲観するのは早計です。むしろ、個別指導塾というビジネスモデルは、経営の質を変革し、提供する教育価値を再定義することで、これからの時代にこそ確実な成長分野となり得るポテンシャルを秘めています。

今までも成長していきているのですが、個別指導塾そのものの在り方がまた形を変えて改造されて、ニューブランドが出てくる過渡期のような時期ではないでしょうか。

産業や事業は、骨までなくなることはよほど時代マッチがいかなければ別ですが、あまりあることではありません。
肉の部分、余計ない脂分がそぎ落とされて、すっきりとスマートな筋肉部分に、新鮮な皮膚をまとってまた生まれ変わる・・・そんな風にして整理淘汰再編が進む、私はそう考えています。

教育産業はそもそもなくならないと思っているからです。

国家が反映する流れを考えた場合、教育は切って切れないものだからです。通常の教科指導だけではなく、運動面や倫理、道徳面も含めて教育は幼少時から絶対に必要なものだと思うのです。

これについて、皆さんはどう思われますか。

生れたばかりの赤ちゃんが放置して勝手に育つことはないわけで、親の世話が必要です。そこからすでに学びの日々が始まっていて、いつしか親御さんの手を離れ、独り立ちするまでの期間は、今の日本の平均寿命から考えても人生の1/4ぐらいです。実に20数年の歳月がかかるという前提でとらえても、教育の重要性がわかります。

再度、教育は絶対になくならないという前提のもと、先に進んでいきましょう。

さまざまな業種というものが存在する中で、ここでの焦点はやはり学習塾にあててみましょう。

勝利の方程式は極めて明確です。

これから学習塾を買収される方は、ここを相当意識されるといいと思います。

徹底した「コスト管理」による筋肉質な経営体質の構築と、時代の要請に応える「新しい分野」へのコース設定です。

既存の受験指導のみに固執する塾が淘汰される一方で、この二軸を戦略的に実行できる事業者は、かつてない収益性とブランド力を手にすることになるでしょう。

本記事では、なぜこの戦略が確実な成長を約束するのか、その論理と具体策について詳述します。

第一章:既存モデルの限界と構造的課題

まず、現状の個別指導塾が抱える構造的な脆弱性を直視する必要があります。

従来の個別指導塾の収益モデルは、主に「講師の人件費」と「教室の家賃」という二大固定費に縛られています。

また、売上の大半を「受験対策」や「学校の補習」に依存しているため、少子化の直接的な打撃を受けやすく、さらには競合他社との差別化が困難で価格競争に巻き込まれやすいという特徴があります。

この部分、一度 顔を上げて天を仰ぎ、頭の中で想像してみてほしいのです。

塾と言えば、その数が数万とあれば、そのすべてが「成績を上げる」と言っています。そのすべてが「知志望校合格」を声高に宣伝します。

「うちの塾に来たら成績が下がります!」「志望校はこぞって不合格!」

そんな宣伝をしている塾は、ふざけてると思われ誰にも相手にされないかもしれません。メディア受けはして、もしかしたらヤフーニュースに画像入りで紹介されるかもしれません。
それが狙いで、やる人もいるかも?しれません。

子どもたちは、面白がって話題に乗るかもしれませんが、親御さんはそこには乗れないでしょう。

それがゆえに、塾と言えば、成績UP、塾と言えば志望校合格!という猫も杓子も状態になってしまうのです。ある意味では仕方ないことです・・・。

ですが、

「成績を上げる」「志望校に合格させる」という価値提供は、もはや当たり前の前提条件であり、それだけでは高単価を維持することが難しくなっています。


加えて、講師の採用難は年々深刻化しており、質の高い学生講師を確保するためのコストは上昇の一途をたどっています。

売上が頭打ちになる中でコストが増加すれば、利益率は必然的に低下します。

この悪循環を断ち切るために不可欠なのが、守りの戦略としてのコスト管理と、攻めの戦略としての新分野開拓なのです。


事例(実話)コーナー

【実例(実話)】

比較検討があまりにも大変すぎる・・

これはどういうことかと言うと、学習塾の比較サイトがあるがために、余計に保護者の比較検討が難しくなっているという側面を示しています。

つまりこうです。
比較サイトは便利ですが、ひとたび資料請求をする段になると、A塾とB塾、そしてC塾にも・・・と資料請求をします。
顧客側の資料請求はコストがかかりませんが、やろうと思えば、5社でも10社でもまとめて資料請求できます。

そうするとそれらすべての学習塾に自動メールが送信されて、「〇〇さんから資料の請求がありました」的な内容が届くのです。

当然ながらそのメールを受けた学習塾は、「あ!問い合わせだ!」とすぐに書かれている電話にこぞって架電することになります。

同時資料請求をした保護者のもとには、その日からかなりの数の電話がかかってくることになります。
最初のうちは説明を聞いても、そのうち、どの説明がどの塾で・・・・どの塾が一番感じが良くて・・・ということすらもわからなくなります。

比較検討疲れとでも言いましょうか、
この存在が顧客を余計に悩ませる皮肉な結果になっているのです。

もうわかりますね。

どの学習塾も

「うちは成績を上げます!」
「志望校合格させます!」


というような まさに金太郎あめを切ったかの如く同じような売り文句になるわけです。
仕組みや制度が保護者を混乱させ、学習塾側が同じようなことを言うので、さらに混乱させ・・・という全くもって負のスパイラル状況、これが実態です。

だからこそ、頭一つ抜けるための「何か」が必要で、まずは自助努力である無駄なコストをカットして、投資できるところを増やし、「新しい分野」の開拓が必須だと思います。


第二章:徹底したコスト管理による損益分岐点の引き下げ

最初はコスト面から考えましょう。

「コスト管理」と言っても、単に人件費を削る、チラシを減らすといった縮小均衡のアプローチではありません。

ここで言うコスト管理とは、テクノロジーを活用した業務プロセスの抜本的な改革(デジタルトランスフォーメーション)と、固定費の変動費化を指します。

まず、

教室運営における間接業務の自動化です。

・生徒のスケジュール管理
・保護者との連絡
・毎月の月額月謝請求
・講師のシフト調整


これらに教室長が多くの時間を割いている現状は異常と言えます。

これらを一元管理するシステム(LMSやCRM)を導入し、徹底的に自動化することで、人件費を抑制しながら、

教室長が本来注力すべき「生徒へのコーチング」や「新規問い合わせ対応」に集中できる環境を作ります。

これにより、少ない人員でも高品質なサービスを維持することが可能になります。

次に、指導のハイブリッド化による原価低減です。すべての指導を対面の人間が行う必要はありません。知識のインプット部分は映像授業やAI教材に任せ、講師はモチベーション管理や躓きの解消といったコーチングに特化する。

これにより、講師一人あたりが担当できる生徒数を増やし、かつ教育効果を高めることができます。

AI教材は初期投資こそかかりますが、ランニングコストは人件費に比べて圧倒的に低く、スケールメリットが働きやすい分野です。

このように損益分岐点を極限まで下げることで、生徒数が一時的に減少したとしても赤字になりにくい体質を作ります。

この「負けない財務体質」があって初めて、次章で述べる「新しい分野」への投資が可能になるのです。

したがって、最初にコスト管理からスタートするのが肝要です。
無尽蔵にお金を放出出来る経営者はそうそういません。
コスト管理は徹底しすぎるぐらい徹底してちょうどいいと思います。

第三章:成長のエンジンとなる「新しい分野」のコース設定

コスト管理で捻出した資金とリソースを投下すべきは、

既存の5教科指導の強化ではなく、これからの社会で必須となる「新しい教養」の分野です。

保護者のニーズは変化しています。単に良い大学に入ることだけがゴールではなく、

「変化の激しい社会で生き抜く力」を子供に授けたいという切実な願いがあります。

まさに今、文部科学省がつくりあげている学習指導要領は、生きる力です。指導要領は後にまた改訂されますが、この「生きる力」という力強いメッセージは是非残してほしい、そうまで思います。

生きる力

私は、この言葉がとても好きで、学習塾用のブログにも何度も登場させているぐらいです。

今、学問だけでは、この世知辛い世の中を生き抜くのは、あまりにも厳しいのです。いくら机上で学問を積んでも、実経験に勝るものはありません。
しかし、良いことも悪いことも、甘いことも苦いことも全部経験しないと世の中が見えないのか・・・というのではなく、事前の知識を実生活、実体験に近い形で疑似体験してもらうことは非常に有効だと思うのです。

そこでCROSS M&Aのアドバイザーは個人的に3つの分野を推奨したいです。

具体的には、以下の3つの分野が、実は極めて有望な成長領域だと言えます。

  1. プログラミングと情報活用能力

    小学校でのプログラミング教育必修化は始まりに過ぎません。大学入試においても「情報」科目の重要性が増しています。しかし、公教育の現場ではリソース不足により質の高い指導が十分に行き届いていないのが実情です。ここに民間の勝機があります。

    単なるコーディング技術だけでなく、論理的思考力や問題解決能力を養う「STEAM教育」の文脈でコースを設計すれば、受験勉強とは異なる軸で、早期(低学年)からの入塾を促すことができます。これはLTV(顧客生涯価値)の最大化に直結します。

  2. 金融リ教育(金融リテラシー)

    高校での金融教育が始まりましたが、家庭内で体系的にお金のことを教えられる親は多くありません。インフレ、円安、年金問題など、経済的な不安が社会を覆う中、「子供にはお金で苦労させたくない」と考える親は急増しています。経済の仕組み、投資の基礎、起業家精神などを教えるコースは、他塾との圧倒的な差別化要因となります。これは「勉強」という枠を超えた「生きる力」の提供であり、高単価でも納得感を得やすい分野です。

  3. アート思考と探究学習

    AIが台頭する時代において、正解のある問題を解く能力の価値は相対的に低下します。代わって重要になるのが、0から1を生み出す創造性や、自ら問いを立てる力です。デザイン思考やアート思考、あるいは特定のテーマを深掘りする探究型の学習コースは、特に教育感度の高い富裕層の保護者に強く響きます。これらのコースは、偏差値という単一の指標から自由であるため、成果の定義を塾側が主導でき、独自のブランドを構築しやすいメリットがあります。

3つを挙げましたが、いずれも可能性の高い分野です。
それぞれの分野に学びの不足感があり、それぞれが独自の発展性をもっていて、それぞれが「日本」だけを土俵にする必要がないという点で、共通項があります。

ここにひっそりと書いていますが、本当はもっともっと大体的に取り上げたいテーマです。

第四章:シナジー効果が生み出す確実な成長

コスト管理と新分野進出、この二つは独立した施策ではなく、相互に作用し合うことで強力なシナジーを生み出します。

まず、新分野のコースは、既存の5教科指導への入り口として機能します。「プログラミングが楽しいから塾に通う」という動機で入塾した生徒が、中学生になるタイミングでそのまま英語や数学のコースも受講する、というクロスセルが自然な形で発生します。

これにより、従来なら獲得できなかった層を顧客に取り込むことができます。

また、新分野のコースは、設備稼働率の向上にも寄与します。受験指導のピークタイムは夕方から夜にかけてですが、

不登校生の支援や、通信制高校生のサポート、あるいは社会人のリスキリング講座として日中の時間帯を活用できれば、家賃という固定費に対する生産性は飛躍的に向上します。

さらに、これらの新しい取り組みは、採用ブランディングにも好影響を与えます。

「ただ勉強を教えるだけの塾」よりも、「最先端の教育で子供の未来を創る教育機関」の方が、優秀で志の高い人材が集まりやすくなります。

優秀な人材が集まれば、サービスの質が向上し、それがさらなる集客につながるという好循環(フライホイール効果)が生まれます。

第五章:実行へのロードマップ

この戦略を実現するためには、経営者の強い意志とスピード感が求められます。

まずは現状の経費構造をゼロベースで見直し、削減可能なコストと投資すべきITツールを洗い出すことから始めます。ここで聖域を設けてはいけません。

次に、自社の商圏におけるニーズ調査を行い、どの新分野が最も親和性が高いかを見極めます。

いきなり全教室で展開するのではなく、モデル校を定めてスモールスタートで検証を行い、成功パターンを確立してから横展開するのが定石です。

その際、外部の専門機関や教材会社と提携することで、コンテンツ開発の時間を短縮することも有効な手段です。自前主義にこだわる必要はありません。

そして最も重要なのが、保護者へのメッセージングです。

「なぜ今、この教育が必要なのか」を言語化し、啓蒙していくマーケティング活動が不可欠です。

ブログ、SNS、セミナーなどを通じて、塾の教育理念と新コースの意義を発信し続けることで、地域における「選ばれる塾」としての地位を確立します。

結論

個別指導塾は、決してオワコンではありません。

むしろ、公教育が硬直化し、社会の変化に追いつけていない今こそ、柔軟にカリキュラムを変えられる民間教育機関の役割は大きくなっています。

コスト管理によって筋肉質な身体を手に入れ、新しい分野という武器を持つこと。

この両輪が揃えば、少子化という逆風さえも推進力に変えることができます。

子供たちの未来を切り拓くのは、過去の成功体験にしがみつく塾ではなく、変化を恐れずに進化し続ける塾だけです。

確実な成長は、その覚悟と行動の先に待っています。



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