成約事例05|突如、雇い入れていた教室長が退職!新規採用とM&Aのコスト差から譲渡を決断。
塾オーナーの皆様、こんにちは。今回は、教室運営において誰もが直面しうる、しかし予測不可能な事態から生まれた決断について、神奈川県で4つの学習塾を経営するあるオーナー様の事例を物語形式(しかし実話です)でお届けします。

譲渡案件概要
■教室所在地
神奈川県横浜市
■指導形態
個別指導
■生徒数
29名
■売上高
1640万円
■営業利益
300万円(年間)
■譲渡金額
420万円→380万円
事業譲渡 ご決断の理由
お問合せ内容
突然の退職と迫られた決断:新規採用か、それとも譲渡か
神奈川県内で4つの学習塾を成功させていたAオーナーは、まさに順風満帆な経営を行っていました。各教室には信頼できる教室長を配置し、オーナー自身は全体的な運営と新たな戦略立案に注力できる環境が整っていました。
自分のライフスタイルも理想に近い形になっていきました。
特に、長年苦楽を共にしてきたベテラン教室長Tさんが率いる1教室目は、派手さはないですが、だいたいいつも安定した実績を出しており、オーナーにとって精神的な支柱とも言える存在でした。
しかし、ある日のこと、その平穏は突然の報によって打ち破られます
T氏からの退職願いでした。通常であれば数ヶ月前の申し入れが常識ですが、今回は家庭の深刻な事情により、急遽遠方への転居を余儀なくされたとのことです。
T氏とは良好な人間関係を築いていただけに、オーナーは彼の苦渋の決断を理解しつつも、自身の教室運営に与える影響の大きさに頭を抱えました。
岐路に立つオーナー
突然の教室長不在という事態に、Aオーナーは一時的に自身が1教室目の運営を引き継ぐことを決断します。
しかし、それは決して容易なことではありませんでした。なぜなら、4教室目にはまだ経験の浅い新人教室長がおり、その育成とサポートにも時間を割く必要があったからです。
多忙を極める中で、2つの教室の運営を同時に見ることは、肉体的にも精神的にも大きな負担となります。
このような状況下で、オーナーの前に現れた選択肢は2つでした。
- 新規で教室長を募集し、採用する(リニューアル開校?)
- 1教室目を売却・譲渡する
この段階でご相談があり、対応をしていくことになりました。オーナーはかなり気持ちが揺れていらっしゃいましたが、具体的なコスト差が最終決断の材料になりました。
【新規で教室長を募集して採用するパターンと譲渡をした場合の比較】
最初はこの選択を取ろうという気持ちが6割ぐらいはあったのではないでしょうか。しかし、お話をしていくと、心に重くのしかかってしまっていることが、やはり一番信頼していた社員Tさんの退職決定でした。
そのため、心の中につないであった糸がプツリと切れてしまってような感覚があったのかもしれません。
感情が揺れ動く中で、最終決定までのお話は1回ではなく3回でした。揺れる気持ちは当方もよく理解できましたし、しかしながら、1教室目をオーナーメインで見て、4教室目の教室長がまだ新人であることから鑑みて、オーナーの経験を必要とする場面が出てくる可能性が高いと判断しました。
そのため、感情面のお話がメインになるよりも、ここはビジネスライクに、コストの差について、テーブルに並べてみました。
新規採用で社員を募集するパターンでは、今の1教室目の社員と同額給与での募集となると、正直難儀する予想がありました。
したがって、採用コストを60万円と見積もりました。
うまくすれば30万円、40万円ぐらいで収まるかもしれませんが、昨今の応募事情などから給与と待遇がマッチするかどうか微妙なラインだったのです。
そして、これを機にリニューアルOPENという形をとってみたらどうなのだろう?というオーナーからのご意見もありました。
そうなると、どこまでを新調するかにもよりますが、かなりコスト高になります。
①外から見た感じでは看板の交換
②内部ではクロスはそうでもなかったですが、床のタイルカーペットが、カーペットとは言えないぐらい、擦れておりこの全体交換
③学習用机の軋みとか椅子の歪みなども散見されていましたので、これらの買い替え
どう安く見積もっても①②だけでも100万円は超え、③を入れてしまうと、机がと椅子のセット数からして、約60万円はかかる予想でした。
募集費用+リニューアルで約220万円ぐらいはかかるのではないでしょうか、という読みの数字とその裏付けとなる資料をお見せしました。
次にあったのが
「譲渡っていうのはどういう手順でやって、いくらぐらいかかるの?」
という質問でした。
なるほど、オーナーは、譲渡そのものにもお金がかかるイメージをお持ちだったようです。
「譲渡される側には費用はかかりませんよ」
そうお応えしたところ、一気にその気持ちに傾いた様子で、
「そうなんだ!?私はてっきり譲渡するには、そのオタクにけっこう多い手数料とかを支払うものだと思っていました」
「いえいえ、無料ですし、サポートいたしますので」
ここでお話の一区切りがついたのです。
まとめると
常に最善を求めて:リニューアルと譲渡の選択
Aオーナーはこれまでであれば、迷わず「人事募集をして採用する」という選択をしていたでしょう。しかし、今回は状況が異なりました。
・長年一緒に苦楽をともにした最初に最小した社員との別れ
・リニューアルをして、新しく人を雇う可能性
最初は感覚的なもの、気持ち的なものが渦巻いていましたが、冷静にコスト面から判断をしていきました。
・新規採用にかかる時間、コスト
・4教室目新人教室長の育成
・さらに新しい教室長が教室に馴染むまでのリスク
・求人広告費、面接の手間
いろいろな不確実性を考えると、リニューアル費用と合わせてかなりの投資が必要となります。
そこに「譲渡側はお金はかからない=手数料無料」という事実と、いろいろと根拠を示した提示資料から
「教室譲渡をする」という決断に至りました。
担当者との出会い:スムーズな案件進行の予感
相談先に選んでくださったのは、もともとはご紹介です。
初めてのzoomミーティングで、上記のような感情の動きがよくわかりましたし、オーナーの人間性の良さが伝わりました。
オーナーが案件のある場所が神奈川県横浜市であることを伝えてくださったときにはすぐにその場所をイメージできました。元々横浜市に住んでいた経験があったからです。
「ああ、あのあたりの雰囲気ならよくわかります。」
この言葉に、オーナーは安堵感を覚えくださったのかもしれません。地理的なイメージが共有できることは、物件の立地や周辺環境の特性を理解してもらう上で思いのほか重要だということがわかりました。
この小さな共感が、その後の話合いを円滑に進める上で後押しの一つになっていたように思います。
募集開始
買い手様の募集
最近、買い手様のご相談よりも売却を考えている方からのご相談のほうが多くなってまいりました。
それらすべては学習塾と習いごとについてのことですから、私どもCROSS M&A(クロスM&A)の専門、特化型という宣伝効果がちょっとだけ出てきたのかなという印象を持っています。今までにない学習塾特化型サービスということで、自信をもってサービス提供をしておりますので、是非内容をご確認ください。
さて、その中でも神奈川県案件が連続しています。東京と中心とした首都圏として神奈川県、千葉県、埼玉県は塾や習いごと教室の数も多いです。住んでいる人口や学校数も多いのですから、これもまた当然なのかもしれません。
全国的に「事業承継」の動きは盛んになっていますが、どちらかというと神奈川県はちゅっとだけ遅れをとっていることが数字データから見てもわかります。
募集開始は、やはり独自ネットワークへの声掛けから開始しました。幸い、神奈川県とか千葉県(特に千葉県は学習塾モデルルームもありますので)埼玉県、そして東京は、この地域における営業年数が多いため、比較的営業活動がしやすいのです。
よく情報をくれる方にも内容を伝えてきましたが、時期的なものもあったのか初期段階は反応がいまいちでした。そのため、今度は大手サイトへの登録を代行して実施するなどの措置を取りました。
閲覧件数が急増したため、これは何か問い合わせがあるだろうと予感したその日のうちに、実名での交渉が開始されました。
2名の方と同時進行でチャットでの連絡がありました。その中で、年齢的にも対応の早さからも「この人会ってみたい」とアドバイザー側が思った方がいらっしゃいました。
3か月ほど前に金融機関を退職された30代の方でした。
初期面談
zoomで打ち合わせ約束をしました。非常にさわやかな印象の方でした。笑顔がとてもよくて、話を始める前から、第一印象としてすごく琴線に触れた方でした。
チャットでの会話とかでもその話しぶり(タイプぶり)がソフトで、相手に嫌な印象を与えない方だったのです。
その印象とzoomで面等向かっての印象が合致しました。
すでに退職済で、ご自身がやりたい仕事が「教室運営」ということでしたので、動機が明確です。さらに大学生時代に講師としてアルバイトをしていたこともあるとのことでした。
何故金融機関を退職されたのかという質問に対しても、ごまかすことなくしっかりと伝えてくださいました。
「魅力ある職場で先輩も色々教えてくれて、チームとして動いていましたがそれらに何も不満はなかったです。
でも、やっぱり数字の世界ですので、その違和感がずっと取れず・・・・。」
自分がやりたいことって何だろうと何度も自問自答されたそうです。その中で、かつてお世話になっていた学習塾の雰囲気、ムードがいつも脳裏にあったとのことでした。
教えているときの楽しさとか、生徒たちが合格したときの笑顔であるとか、そういうものが全部しっかりと残っていて、また当時の教室長(オーナーだったのか?)のふるまいとか講師や生徒へ声をかけている様子が、「これだ!」と自信をもって思えるようになったとのことでした。
今回、譲渡主であるオーナーと、この30代の人との別個面談で、それぞれにドラマを持っていて、やはりこういう人間と人間のストーリーは紡がれているものなんだなと改めて思った次第です。
面談後から基本合意
条件のすり合わせ
いつものように、zoomでの面通しとなりました。オーナーと買い手希望の30代の男性の方、そして、私どものアドバイザーの三者で行う面談でした。
それぞれの挨拶を交わした後は、まずアドバイザーからこれまでの経緯を説明しました。
続いて譲渡主であるオーナーからの概要説明、そして買い手希望の方からも経緯説明と質問という流れを取りました。
買い手希望の方の質問の仕方が尋問的ではなく、自然でソフトな成り行きでの質問でしたので、間にたつアドバイザーとしても、物腰の危険さなどが全くなく、とてもいい内容で質問されている印象を持ちました。
同じようにオーナーも思ってくださったのでしょう。
きちんと丁寧に質問にお応えくださっていました。
初回でしたので、その場で具体的な条件はありませんでしたので、M&Aに必要な参考資料一式を用意し、精査していただく流れとなりました。
元金融機関の人ですから、やはり売上高とか生徒数推移、講習の売上高とかコストなどの細かい部分で見るべき部分をよく知っている方でした。
売上高の割に営業利益が高いのは、人件費が想定より安い印象を受けたようです。
これが、上記しました、新規で人材募集を図ったときにもしかすると、想定以上にコストがかかる可能性として、アドバイザーがオーナーに伝えた部分でした。
そのため、人材と雇い入れた場合には、もう少し人件費がアップする可能性があるのではないだろうかという読みをされていました。
最初のうちはオーナーチェンジして、自分自身が授業に入りながらマネジメントをこなすとしても、早期に軌道に乗せて複数店舗運営ということを現段階から考えているとのことでした。
そうなった場合の人件費増を想定計算されていましたので、正直鋭い感性の持ち主だと感じました。
何はともあれ、画像とかではわからないので、現地を見てみることになりました。
基本合意
現地見学の際は、
①看板の老朽化
②内部ではタイルカーペットの擦れた状態
この2つが気になる点というのはアドバイザーも同じように感じました。そこで譲渡の際にはこれを手直ししたい旨を買い手側から提案し、提示金額から値引きを交渉しました。
結果この段階で40万円ダウンで大筋合意となりました。
譲渡契約締結からフォローアップ
デュー・デリジェンス
元金融機関の方で、バランスシートとかプロフィットロスは見慣れていたようで、説明を多く加えずとも、内容はよくわかるようでした。売上高が計上された後の支払いサイトについても理解されて、このお金周りのついては、比較的早く解決しました。
というのも売上高とか支払いデータなどがかなりしっかりと作られていて、誰が見てもわかりやすい資料だったからです。
あとは労務管理上のトラブルも一切ないということも確認したため、すぐに譲渡契約締結となりました。
その際、譲渡日程が少し先に設定してくれたこともあり、勉強期間として、何日間か譲渡契約と資金の授受が終わった後に、研修っぽい内容を受けたいという申し入れもありました。
これのついては、譲渡主のオーナーが快諾さいてくださり、当方アドバイザーとオーナーと協力しあってアフターフォローに努めていく約束をしました。
譲渡契約
現場で口頭で受けていた内容で、重要な事項を追加する形で譲渡契約書を作成し、双方に確認してもらい契約となりました。
その際追加として追加したのが、アフターフォローについてです。
やはり、スムーズな移行を目指しており、買収後のトラブルというのをネットでも何度か見ていたようで、その点の確認もしていきました。
また、CROSS M&A(クロスM&A)は、サービスの核としてアフターフォロー・アフターサービスを謳っておりますので、その点を説明させていただいた際もとても安心している様子でした。
まとめ:予期せぬ出来事を乗り越え、最善の道を選ぶ
今回の事例は、学習塾経営における予期せぬ出来事が、事業譲渡という新たな選択肢を生み出した実話の物語です。
オーナーは、長年信頼してきたベテラン教室長の突然の退職という困難に直面しました。当初は新規採用を検討していましたが、採用コスト、リニューアル費用、そして新人教室長の育成といった不確実性を考慮すると、かなりの投資が必要になることが判明しました。
そこに「譲渡側は手数料無料」という事実と、冷静なコスト比較が後押しとなり、Aオーナーは教室譲渡を決断します。この決断は、感情的な側面だけでなく、客観的なデータに基づいて最善の道を模索した結果と言えるでしょう。
買い手である元金融機関勤務の30代男性との出会いもまた、この事業譲渡を成功に導いた大きな要因でした。彼の明確な動機、過去の経験、そして物腰柔らかな人柄は、オーナーとの信頼関係をスムーズに築き、円滑な交渉を可能にしました。また、金融機関出身ならではの知識が、デューデリジェンスを迅速に進める上で大いに役立ちました。
譲渡契約締結後も、譲渡側オーナーの快諾による研修期間の設けや、CROSS M&A(クロスM&A)によるアフターフォローの約束は、買い手にとって安心材料となり、スムーズな事業承継を後押ししました。
この事例は、単なる事業譲渡の成功物語にとどまりません。予期せぬ事態に直面した際の冷静な判断、客観的なデータに基づく意思決定、そして何よりも人と人との信頼関係が、困難を乗り越え、新たな可能性を切り開く上でいかに重要であるかを教えてくれます。
学習塾の事業承継は、単に経営権が移るだけでなく、生徒たちの未来、そして地域の教育を支えるという大切な役割を引き継ぐことでもあります。