塾・習い事の営業:話し上手より「聞き上手」が未来を拓く
学習塾や習い事の経営において、「営業」と聞くと、つい流暢に話すスキルや説得力のあるプレゼンテーション能力を思い浮かべるかもしれません。
しかし、本当に未来を切り拓く営業とは、単に「話す」ことではありません。むしろ、顧客の声に耳を傾け、その真のニーズを理解する「聞く」力こそが、圧倒的な差別化を生み出す鍵となるのです。

なぜ「聞き上手」が塾・習い事の営業を変えるのか?
現代の保護者や生徒は、情報過多の時代を生きています。
インターネットを開けば、無数の塾や習い事に関する情報が溢れかえり、どれを選べば良いのか迷ってしまうことも少なくありません。広告を見ても同じようなことが書かれていて、ひとたび3社、4社と広告の中身を見てしまえば、果たしてどれがどの会社(学習塾)のものだったか・・・一晩寝たら忘れてしまうぐらい同じようなことが書かれれています。
そんな中で、一方的にサービスをアピールするだけの営業は、もはや心に響かないでしょう。
1. 顧客の「潜在的なニーズ」を引き出す
保護者や生徒が塾や習い事を探す背景には、明確な学習目標だけでなく、将来への漠然とした不安、自己肯定感の向上、あるいは単に「居場所が欲しい」といった潜在的なニーズが隠されています。
話し上手な営業は、時にこれらのニーズを見落とし、表面的な課題解決に終始してしまうことがあります。
「ニーズ」とは必要性のことです。
保護者や生徒が求めているニーズですが、教室の責任者と対面したときには、
「成績をあげてほしい」
「苦手な教科を克服してほしい」
「〇〇の分野をできるようにしてほしい」
「〇〇大学に合格できるようにしてほしい」
そのような、今できていないことや、パッと頭に浮かぶ要望的なものを伝えるのが精いっぱいになるかもしれません。
つまり、面談とか相談に来ているのは学習塾の現場だから、その内容に即したものを教室責任者に伝えなくてはいけない・・・そんな強迫観念めいたものが働いてしまうので。
しかし、聞き上手な営業は違います。
彼らは、顧客の言葉の裏にある感情や、まだ言語化されていない願いを注意深く探ります。
「なぜ、この塾に興味を持たれたのですか?」
「お子様は、どんなことに悩んでいますか?」
といった問いかけを通じて、顧客自身も気づいていない「本当のニーズ」を引き出すことができるのです。
例えば、「うちの子は算数が苦手で…」と相談されたとします。話し上手な営業ならすぐに「当塾では、個別指導で苦手克服をサポートします!」と提案するかもしれません。
しかし、聞き上手な営業はさらに掘り下げて質問します。
「算数のどこでつまずいていると感じますか?」
「お子様は、算数に対してどんな気持ちを持っていますか?」と。
もしかしたら、その子の問題は単なる計算ミスではなく、算数への苦手意識からくる「自信のなさ」にあるのかもしれません。その本質的な課題に寄り添うことで、初めて真に価値のある解決策を提案できるのです。
2. 営業が苦手であっても これなら出来る!実践するだけで確実に効果が出るやり方
質問をうまく投げかけることや、効果的な発問をすることは、よほど営業訓練を受けていないとサッとできることではありません。慣れてくればできるようになりますが、即効性を求めている学習塾の教室長や、塾長、オーナーさんは、この項目をメインで読んでインプットしておいてもらえたら幸いです。
保護者との面談や三者面談で対面したときには、
・どんな内容から話をしよう
・どのような資料を最初に見せたらいいのだろう
・どのようにして体験授業にもっていこう
・どうやってクロージングしたらいいのだろう
このようにトークの設定とか、提示資料などで悩むかもしれません。それが高校生、中学生、小学生といれば余計に選択する内容も混乱しそうです。
しかし、どの属性の人たちでも、同一のスキルで同じように好結果を出せる方法があります。
それが、
「相手の話を聞く(聞くことに徹する)」ということです。
営業の初心者でしたら、恐れることなくこう言ってみてください。
「太郎君のお母様、今日はお時間を割いていただきありがとうございます。早速ですが、お母様が今お困りのこと、太郎君のお勉強の件ですね、、、こちらをお母さん目線でけっこうですので、なんでもお伝えください」
そうするとお母さんは、太郎君の学習状況について話し始めます。
「うーん、算数がちょっとわからなくなってきているようなんです・・・計算はそこそこできると思うんですけど、文章題になるとまったくできなくなって・・・あとは図形がダメで、この間も学校のカラーテストで、表面は90点だったんですけど・・・裏面が半分しかできてなかったんですね」
このように堰を切ったように話し始めることが多いです。
さて、そのときの聞きの姿勢ですが、
メモをしてください。
ヒヤリングノート、または無地の白い紙でもいいですが、お母さんの話を一つ残らずメモする気持ちで書くのです。
自分が読める字でいいです。自分がわかればいいので、とにかく全部書きます。
もし、書き漏れしそうであれば、
「あ、お母さん、ごめんなさいね。今のところすみません、もう一度教えてもらえますか?」
というと、お母さんは丁寧にまた同じことを話してくれます。
そして聞き手は全部書くのです。
さて、これだけのことですが、どれだけ素晴らしい効果があるか想像して、なおかつ、是非今日の面談から実践してみてください。
①保護者からすれば真剣に書いてくれていることに安心感を覚える
②自分の要望をしっかりと聞いてくれていることで、教室に対しての信頼が一気に増す
③そもそも人の話を聞くより、今の現状をしってほしい、共感してほしいという気持ちのほうが大である
この3つ、是非理解してください。
「安心感」「信頼」「共感」
この3つがキーワードです。
【実例(実話)】
実例(実話)のコーナーは脚色入りの物語ではなく実話です。いろいろな記事に実例(実話)が入っていますが、是非ご参考にされてください。
とても営業が苦手な教室長がいました。仮称Bさんです。どのぐらい苦手かというと、声とか手が震えてしまうぐらい苦手でした。
保護者との面談では少なくともコミュニケーションは取らなくてはいけません。
(この苦手ぶりは、ちょっときついかも)
そう思ったこともあります。しかし、何度か練習をしたり、打ち合わせを重ねたときに気づいたことがあります。
まじめで、素直に人の話を聞くことができ、しっかりと相槌も打てて、メモ習慣があるということでした。
とにかく聞く姿勢が素晴らしいと思いました。
「Bさん。君は、その聞く姿勢を武器にしたらどうだろう?」
これがアドバイスでした。
そこから、Bさんの営業スタイルは大きく変わりました。聞く営業に大変更したのが功を奏してきました。震えてしまってなかなか厳しかった状況がだんだんと変わっていったのです。
保護者が言ってくることを、とにかくメモする。ふんふんと相槌を打ちながら懸命にメモする。その姿勢ははたから見ても真摯で、とてもまじめで安心感を与えるものでした。
今まで出会った中でもっとも営業が苦手だったBさんは、今では堂々と対応できる営業ができるようになりました。
きっかけは営業手法の大転換、つまり
「聞きに徹する」の一言です。
3. 信頼関係を築き、長期的な関係性を構築する
人は、自分の話を真剣に聞いてくれる相手に心を開きます。
聞き上手な営業は、顧客に「この人は私のことを理解しようとしてくれている」という安心感を与え、深い信頼関係を築くことができます。この信頼関係こそが、単発的な契約で終わらず、長期的な顧客関係へと発展させる土台となります。
例えば、生徒が途中で学習意欲を失ってしまったとします。表面的なコミュニケーションしか取れていなければ、「塾に通わなくなった」で終わってしまうかもしれません。
しかし、普段から生徒や保護者の話に耳を傾け、深い信頼関係を築いていれば、早期に異変を察知し、適切なサポートを提供できる可能性が高まります。
生徒の悩みを聞き、保護者と共に解決策を探ることで、「この塾は、本当に私たちのことを考えてくれている」という強い絆が生まれるのです。
4. 顧客にとっての「最適な選択」を共に探すパートナーになる
営業は、時に自社のサービスを売り込むことに注力しがちです。
しかし、顧客の視点に立てば、本当に求めているのは「自分にとって最適な選択肢」です。ここのくだりは、プッシュ型営業を推している方とは意見が分かれてしまう部分ですが、実際皆さんはいかが思いますか。
聞き上手な営業は、顧客のニーズを深く理解しているからこそ、自社のサービスが最適でないと判断すれば、正直にその旨を伝える勇気も持ち合わせます。
この感覚は、なかなか持てないものかもしれませんが、決して営業そのものを放棄しているのはありません。
そしてもちろん、これは安易に顧客を諦めることではありません。
顧客の状況や希望を総合的に判断し、もし自社サービスが最適解でなくとも、別の選択肢を提案したり、情報提供を行うこともできます。このような姿勢は、顧客にとって「売りつけようとしていない、信頼できるパートナー」としての印象を与え、結果的に「また何かあったらこの人に相談したい」という未来の顧客へと繋がる可能性を秘めています。
これは、そのときに契約とならずとも有力な見込み客とてストックできたことと同じになるのです。
「聞く」を磨くための実践的アプローチ
では、具体的にどのようにして「聞き上手」になることができるのでしょうか?
1. 傾聴の姿勢を徹底する
「傾聴」とは、ただ音として聞くのではなく、相手の言葉、声のトーン、表情、ジェスチャーから、その背景にある感情や意図までを汲み取ろうとすることです。
これは営業の教科書的な本とか、ネットでもよく書かれていることです。
- 相槌と共感の言葉: 「なるほど」「そうなんですね」「それは大変でしたね」など、適切な相槌や共感の言葉を挟むことで、相手は「聞いてもらえている」と感じ、安心して話すことができます。
- オウム返しと要約: 相手の言葉を繰り返したり、話の要点をまとめることで、理解度を確認し、相手に「きちんと理解してもらっている」という印象を与えます。
- 非言語コミュニケーション: 相手の目を見て話す、身体を相手に向ける、腕を組まないなど、開かれた姿勢で接することで、安心感を与えることができます。
2. 質問力を高める
良い質問は、相手からより多くの情報を引き出し、思考を深めるきっかけとなります。適度に質問を入れることで、相手が話をする回数が増えます。
自分ばかりが話をするのではなく、相手が話す回数のほうが多くなるようにするためにも「質問」「発問」を意識して入れていきましょう。
- オープンクエスチョンを多用する: 「はい/いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンだけでなく、「~についてどう思いますか?」「~なのはなぜですか?」など、相手が自由に答えられるオープンクエスチョンを積極的に使いましょう。
- 「なぜ」を深掘りする: 「なぜそう思われるのですか?」「具体的にはどのような状況ですか?」など、表面的な回答のさらに奥にある理由や状況を探る質問を投げかけます。ただし、詰問にならないよう、あくまで共感的に。
- 未来志向の質問: 「もしそれが解決したら、どうなりたいですか?」「お子様が成長するために、どんなサポートがあれば嬉しいですか?」など、未来への希望や目標に焦点を当てる質問は、ポジティブな気持ちを引き出し、具体的な解決策を共に考えるきっかけになります。
傾聴と質問、この2つが板についてくると、営業はだいぶ完成します。
以下の点も是非知っておいてください。
①父親の場合は決定権を持っているから決断が早いので、結論を変に伸ばさないほうが良い
②母親の場合は「共感」重視で、解決策を延々と述べるよりも「共感」してあげることが大切
③どちらの場合でも「目の前でメモをとる」ことは必ずプラスに作用する
3. 沈黙を恐れない
相手が考えている時、沈黙が生まれることがあります。この沈黙を怖がってすぐに次の質問をしたり、話を遮ったりしないことが重要です。沈黙は、相手が考えを整理したり、深く内省している時間かもしれません。焦らず、相手が話し始めるのを待つことで、より本質的な言葉を引き出すことができるでしょう。
これは営業慣れしていないと、耐えがたい時間になるのです。
ただし、そう頻繁に沈黙のシーンがあるわけではありませんので、そんなに心配しなくて大丈夫です。
4. 固定観念を捨てる
過去の経験や成功体験から、「このタイプのお客様はこうだろう」という固定観念を持ってしまうことがあります。しかし、一人ひとりの顧客は異なる背景とニーズを持っています。先入観を捨て、目の前の相手にまっさらな気持ちで向き合うことが、真の聞き上手への第一歩です。
また、
電話をしたときの声の印象から、イメージ、像が出来上がってしまう場合があります。
「なんとなく つっけんどんでイライラしたムードがある」
「言葉をさえぎられてしまい、伝えたいことが言えないかも」
「苦手な雰囲気の保護者だ」
などです。
しかし、電話の印象と実際に会ってみた印象はがらりと違うことも、かなり多いです。どちらかというと、電話ですごいソフトな印象だったけれど、わが子のことになるとかなり神経質っぽく、対応に苦慮うする保護者だったりとか、
逆に、すごくぶっきらぼうな印象だったけれど、会ってみたらとても腰が低くしかも即決できてしまったとか・・・
電話やメールの印象と実際会ったときの印象が異なる場合は往々にしてありますので、まずはどんな場合でも丁寧に接して、少なくとも相手側が「この人電話と会ったときは(悪い意味で)ぜんぜんちがう」と思われないようにしていく必要があります。
クロスマは、学習塾のオーナーや教室長、塾長、これから塾を買収しようという人たちを応援します!
私達 CROSS M&A(通称:クロスマ) は、塾開業や塾の買収を通じて、新たな教育事業の道を切り拓くオーナー様を全力で応援しています。
教室運営、経営の肝はやはり生徒さんが集まってくれるかどうかです。
人的魅力を身に着けていくためにもこの「聞き上手」営業を是非会得してほしいです。
そして塾の経営は、生徒を集めること以外にも、一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、保護者の期待に応え、地域社会に貢献していく、非常にやりがいのある事業です。
そのためには、生徒や保護者との日々のコミュニケーションが不可欠であり、そこでの「聞く力」が、塾の成長を大きく左右します。
塾オーナーにとっての「聞き上手」の価値
- 生徒のモチベーション維持と向上: 生徒が何を学びたいのか、何に悩んでいるのかを真摯に聞くことで、最適な学習プランやサポートを提供し、学習意欲を持続させることができます。
- 保護者との強固な連携: 保護者の教育方針や子育ての悩みに耳を傾けることで、塾と家庭が一体となって子どもを育む環境を築けます。
- 優秀な講師陣の育成: 講師の声に耳を傾け、彼らの成長をサポートすることで、質の高い指導を提供できる魅力的なチームを作ることができます。
- 地域社会との信頼構築: 地域の教育ニーズや課題を深く理解し、それに合わせたサービスを提供することで、地域に根ざした存在となれます。
クロスマは、M&Aの専門知識と豊富なネットワークで、皆様の塾経営を多角的にサポートします。最適なM&A戦略の立案から、具体的な物件探し、資金調達、そして買収後の経営支援に至るまで、経験豊富なコンサルタントが伴走します。
私たちは、単に塾の売買を仲介するだけでなく、オーナー様が「聞き上手」な経営者として成功し、多くの生徒の未来を輝かせることができるよう、長期的な視点でのサポートをお約束します。
あなたの「聞く力」が、新たな教育の形を創造する
学習塾・習い事の市場は、常に変化しています。その中で勝ち残るためには、型にはまった営業手法や、表面的なサービス提供だけでは不十分です。生徒や保護者一人ひとりの声に耳を傾け、その心に寄り添う「聞き上手」な姿勢こそが、新しい価値を創造し、塾の成長を加速させる原動力となります。
クロスマは、あなたの「聞く力」を信じています。そして、その力が最大限に発揮されるよう、最適な経営環境を共に築き上げていくお手伝いをさせていただきます。塾の開業や買収を検討されている方は、ぜひ一度、私たちの声に耳を傾けてみてください。そして、あなたの教育への情熱と「聞く力」を、ぜひ私たちに聞かせてください。共に、子どもたちの未来を拓く、新たな教育の形を創造していきましょう。
CROSS M&A(クロスM&A)は学習塾・習いごと専門のM&Aサービスで、業界ナンバー1の成約数を誇るBATONZの専門アドバイザーです。BATONZの私の詳細プロフィールはこちらからご確認ください。
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