学習塾の売上高は、月間売上高の12倍ではなく16倍で計算する!?
学習塾の買収、あるいは新規事業としての参入を検討されている皆さんが、本記事をご覧頂き、「なるほど!そういうことか」とイメージしやすいように書いて参ります。
学習塾の売上高をどのように積み上げていくのか?
事業計画を立てる際、売上高をどう見積もっていくべきなのか?
このことをなるべく早く知って、具体的な計画を立てて行動を起こせるようにしていきたいと思います。
多くの方は、年間売上高の予想計算を月間売上高の12倍として計算するかもしれません。これはこれで正しいですし、年間から月ごとの予算と売上の分析をしていくことも多いでしょう。
しかし、学習塾においては、いい意味で予想を上回る結果になることもあるのです。特に「講習」という要素は、通常の月謝収入とは別に、事業の収益性を大きく左右する重要な要素ですから、その仕組みをまずは知っていただき、講習の売り上げ高をどのように確保したらいいのか!?という超現場的な実践編というのがあるのです。
本記事では、まずは「講習」というのはどういうものなのか、というアウトラインを押さえてみてください。

学習塾事業における「講習」の特殊性
通常のビジネスであれば、月間の売上を12倍すれば年間売上高の大まかな予測が立ちます。しかし、学習塾には春期講習、夏期講習、冬期講習という、通常の月謝とは異なる特別な売上が存在します。
これらの講習は、学校の長期休暇に合わせて実施され、普段塾に通っていない生徒が参加することもありますし、既存の生徒も追加で受講することが一般的です。
学習塾のスタンスとか方針によって講習受講は必須としているところと、任意としているところがあります。
特に中学受験の専門コースとか、集団塾等では、「受けないという選択肢はない」という塾もあります。
いずれにせよ、この季節講習の存在があるがため、月間売上高の単純12倍ではないということです。
なぜ講習が重要なのか?
講習が学習塾の売上高に与える影響は計り知れません。
- 単価が高い: 一つの授業あたりの単価の多寡もありますが、基本的に講習を一コマ授業ずつ追加というのはなく、まとめて〇コマ追加というパターンです。短期間で集中的に行われるため、通常の月謝時期よりも売上高は高くなります。
- 新規顧客獲得のチャンス: 講習は、既存の内部生徒が受講することが多いですが、外部から「講習だけ参加したい」というニーズもあります。この講習受講のあとに「入塾をどうしようか」と検討する事例も多いです。通常の体験授業よりも長い期間、塾との付き合いがスタートするため、生徒も保護者も次第に帰属意識が芽生えてくる可能性が高いのです。つまり講習をきっかけに入塾する生徒も少なくないということです。
- 既存生徒の囲い込み: 長期休暇中に学力低下を防ぐ目的で、多くの既存生徒が講習に参加します。これにより、生徒の定着率向上にも繋がりますし、特に夏期講習は、長期の夏休み時期と被ることから、生徒側にも講師たちにも、教室全体としても、どこか「思い出」のような形で残りやすいという側面もあります。
- 季節変動による売上向上: 月謝収入が安定している中でも、講習は季節的な売上ピークを生み出し、年間売上を大きく押し上げる効果があります。もし、月間売上高がプラス勘定であれば、ほぼ確実に年間売上高は黒字が大きく伸びます。
月間売上高が多少マイナスであっても講習で巻き返すことも十分に可能です。
私が以前に携わった学習塾では、夏期講習だけで年間の総売上の約4分の1を占めることも珍しくありませんでした。
この経験から、月間売上高の16倍は計算できるということを計算によって気づかされました。これは最初の頃の嬉しい誤算だったのですが、2号、3号と展開しても大方この内容で推移しましたので、安定はしていました。
但し、慢心すれば努力の手を少し緩めてしまいがちです。
学年として考えれば、受験生と非受験生と大きく分けて考えることが出来ます。その際、「非受験生はそんなに講習受講はさせなくてもいい」という考えをもってしまったら、そこから癖になってしまいますので、
講習は生徒全体数から考察して「受講率」がどのぐらいなのかという部分と「受講単価」がどの程度なのかという部分には、自分でしっかりとデータ取りをしていくようにしたほうがよいでしょう。
「月間売上高の16倍」は全然難しくない
「16倍」という数字がなぜ登場したのかは、もう皆さんおわかりかと存じます。まとめて言うと、以下のようになります。
- 月謝収入: 毎月安定して入ってくる売上。
- 講習収入: 年に3回(春、夏、冬)発生するまとまった売上。
仮に、通常の月間売上高を150万円とします。すると、12ヶ月分の月謝収入は1800万円です。
次に講習収入ですが、これは塾の規模、立地、提供する講座の内容によって大きく異なります。しかし、経験上、年間売上高に占める講習の割合は無視できないほど大きいのが実情です。
私が分析してきた複数の学習塾のデータでは、講習による年間追加売上は、月間平均売上高の約4ヶ月分に相当するケースが散見されました。つまり、150万円の月謝収入に加えて、さらに600万円程度の講習収入が見込めるということです。
合計すると、1800万円+600万円=2400万円となります。もちろん、これはあくまで一つの目安であり、塾の規模や特性によって変動する数字であることは言うまでもありません。しかし、少なくとも12倍という単純計算では見えてこない「上乗せ分」があることを理解することが重要です。
この「約4ヶ月分」という数字は、講習分の加算です。以下のような要素から導き出されることが多いです。
- 夏期講習: 最も売上が大きい講習で、通常の月間売上高の1.5〜2ヶ月分程度の売上を叩き出すこともあります。
- 冬期講習: 夏期に次ぐ規模で、月間売上高の1ヶ月分程度の売上を見込むことができます。
- 春期講習: 規模は小さいものの、月間売上高の0.5ヶ月分程度の売上となることがあります。
これらの講習による売上を合計すると、年間で通常の月間売上高の3ヶ月分から4ヶ月分程度の追加売上となることが多いのです。
ちなみに月間150万円の売上高ということは、顧客単価が4万円とすると38名の生徒が在籍しているということになります。
これは十分に一人の社員で回せますし、上記の講習追加分はきちんと読めます。
そうすると、年間コストがどの程度なのかによって、粗利計算が出来ます。
事業計画における講習の捉え方
学習塾の買収や新規参入を検討する際、この「講習」という要素をどのように事業計画に落とし込むべきでしょうか。
1. 売上予測の精度向上
前述の通り、単純な12倍計算ではなく、講習による追加売上を考慮した「16倍」という考え方を取り入れることで、より現実的な年間売上高を予測できます。これは、事業のキャッシュフローや損益計算に大きな影響を与えます。
あと必要なのは、講習を提案してどのような結果を創出するかです。
これは教室長の腕にかかっています。
しかしながらご安心ください。
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2. ターゲット層と講習内容の整合性
どのような層の生徒をターゲットにするかによって、講習の内容や集客方法も変わってきます。
- 受験生向け: 志望校対策に特化した講座や、弱点克服のための集中講座が中心となります。
- 学力向上を目指す層: 基礎固めや苦手科目の克服に重点を置いた講座が有効です。
- 非受験学年: 学校の定期テスト対策や、新学期に向けての予習講座などが考えられます。
ポイントは、春と夏にあります。
冬は受験生にしても非受験生にしても利用者は黙っていても多いです。
春と夏のいわゆる「顧客への対応の仕方」で冬はすでに決まっているようなものです。
受験生でも非受験生でも、この決定を最終的に下すのは保護者です。
従って、保護者を納得せしめるきちんとした計画、整合性のある計画立案と提示が必須なのです。この作業は、一朝一夕出来るものではないかもしれませんが、
「カリキュラム(計画)」をしっかりと立てていくことが出来たならば、その時間をかけた分だけ、効果は歴然と出てきますし、手間をかけた分の時間コストは全部回収できます。(断言します)
また、非受験生に対しては、春や夏、冬は家族のイベントもしっかりと考慮してあげるといいでしょう。
「夏の期間は特に講習をやらなくてもいいです」
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そして、実際、この方は講習を受講することになるのです。その奥義は難しくありません。是非真似てみてください。
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3. マーケティング戦略への組み込み
講習は、新規顧客獲得の絶好の機会です。講習の募集時期には、普段よりも積極的に広告宣伝を行う必要があります。チラシ、ウェブサイト、SNS、地域イベントへの参加など、多様なチャネルを活用し、効果的な集客を目指しましょう。
夏前の時期はどこの学習塾でも習いごと教室でもキャンペーンのような企画ものがあったりします。何個か説明を聞くうちに、保護者はどこがどこだかわからなくなってくることも多いのです。
いかに頭抜けた印象を残せるかがポイントです。
4. 人員配置計画への反映
講習期間中は、通常の授業に加えて追加の授業が発生するため、講師の増員やシフト調整が必要になります。事前に適切な人員計画を立てておくことで、サービスの質を落とすことなく、スムーズな運営が可能になります。
5. 教室運営の効率化
講習期間は、教室の利用率が一時的に高まります。教室のレイアウト変更や、休憩スペースの確保など、生徒が快適に学習できる環境を整えることも重要です。
買収・新規参入時のチェックポイント
学習塾の買収を検討している場合、以下の点を特に注意して調査してください。
- 過去の講習実績: 過去数年間の春期、夏期、冬期講習の売上実績を詳しく確認しましょう。単価、参加者数、新規入塾に繋がった割合なども重要です。
- 講習の集客方法: どのような方法で講習の集客を行っていたかを確認し、効果的な集客チャネルを特定しましょう。
- 講師陣の質と体制: 講習を高品質で提供できる講師陣が確保されているか、また、講習期間中の講師の確保体制についても確認が必要です。
- 競合塾の講習状況: 周辺の競合塾がどのような講習を提供しているか、価格帯や内容を調査し、自塾の差別化ポイントを見つけましょう。
- 契約生徒数と講習参加率: 既存の生徒がどの程度の割合で講習に参加しているかを確認することで、潜在的な講習売上の伸びしろを把握できます。
ある学習塾のデューデリジェンスを行った際、提示された年間売上高は非常に魅力的でした。しかし、詳細に内訳を確認すると、その大部分を夏期講習に依存しており、通常の月謝収入が想定よりも低いことが判明しました。これは、もし夏期講習の集客に失敗した場合、一気に経営が傾くリスクを意味します。このような状況を事前に把握できたことで、買収価格の交渉材料とすることができましたし、買収後のリスクヘッジ策を事前に講じる準備ができました。
但し!
その教室長、オーナーさんは、具体的な営業手法が確立されていなかった「だけ」かもしれません。
教室は、教室長(塾長)によって大きくかわります。
今の表数字の売上高は、それだけをもって決定要素にするのは非常にもったいないです。
「もし、自分ならこういう部分にメスを入れることが出来る」
そんな視点をもって売り出し案件を探していくと、本当にいい掘り出しものに出会えるかもしれません。
まとめ:講習を制する者が学習塾ビジネスを制する
学習塾の売上高は、月間売上高の12倍で計算するのではないということはご理解いただけたかと存じます。
「月間売上高の12倍」ではなく、「月間売上高の16倍」という試算は、講習による追加売上を織り込んだ、より現実的な年間売上高の予測に繋がります。
これは、事業の潜在的な収益性を正確に把握し、適切な投資判断を下す上で不可欠な視点です。
学習塾ビジネスは、生徒の学力向上という社会貢献性の高い事業でありながら、収益性も十分に期待できる魅力的な分野です。しかし、その特殊性を理解し、特に「講習」という大きな収益源を計画に適切に組み込むことが成功の鍵となります。
これから学習塾事業に参入される皆さん、あるいは既存の塾の買収を検討されている皆さんにとって、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。講習の戦略的な活用こそが、学習塾ビジネスを成功に導くための重要な要素であることを、ぜひ心に留めておいてください。
