なぜ「低単価・多人数」の塾は強いのか?長期繁栄を実現する経営戦略

学習塾経営の妙!それは落とし穴ともいえる。
知ってるか知っていないかで業績に大きな差が生じる

学習塾を経営する中で、多くの経営者が直面するパラドックスがあります。

それが「生徒数と一人当たりの授業頻度(および単価)の反比例」という現象です。

一見すると、一人あたりの単価が高く、密度の高い指導を行っている「少人数・高単価型」のモデルの方が、手離れが良く利益率も高いように感じられるかもしれません。

しかし、経営の安定性、スケーラビリティ、そして何より「教育機関としての本質的な強さ」という観点から見れば、生徒数を最大化し、一人当たりの頻度や単価が適正化(あるいは低下)している状態の方が、長期的には圧倒的に優位に立ちます。

なぜ、単価を下げてでも生徒数を追うべきなのか。

もちろん、学習塾はバナナのたたき売りではありませんから、安かろう良かろうの考えが完全蔓延しているわけではありません。中には、安い=品質が悪いと直感的に知っている保護者も非常に多数いるからです。
従いまして、この議論は多岐に渡る要素が複雑に絡み合ってのことですから、完全にそれが正しいというわけではないのですが、実経験に基づく見地もありますので、今回の記事のテーマは「それも一理あるな」ぐらいの感覚で受け止めていただければ幸いです。


それでは、なぜ「薄く広く」見えるモデルの方が、最終的に強固な経営基盤を築けるのか。その理由を深掘りしていきます。


生徒数と授業頻度の反比例が起こるメカニズム

まず、なぜ生徒数が増えると一人当たりの授業頻度が下がるのか、その構造を理解する必要があります。

1. 顧客層の「(一般層)マジョリティ層」への移行

生徒数が少ない時期、その塾に集まっているのは

「非常に意識の高い層」
「深刻な悩みを抱えた層」


のいずれかである場合がほとんどです。

これらはいわゆるニッチな層であり、教育への投資を惜しみません。
結果として、週に何度も通い、季節講習でも大量のコマ数を購入するため、一人当たりの単価は自然と高くなります。

しかし、

生徒数が増えていくプロセスは、市場における「一般層(マジョリティ)」を取り込んでいくプロセスに他なりません。

一般層は、教育費にかける予算に一定の限界を持っています。

生徒数が増えるほど、顧客ポートフォリオは平均化され、一人当たりの授業頻度は「無理のない範囲」へと落ち着いていきます。

2. 運営の標準化と選択肢の分散

生徒数が少ないうちは、経営者が一人ひとりに深く介入し、属人的な魅力で「もっと授業を増やしましょう」という提案が通りやすい環境にあります。

しかし、規模が拡大し組織化が進むと、サービスは標準化されます。

特定の生徒に過剰なリソースを割くよりも、多くの生徒に等しく質の高い教育を提供する体制へとシフトするため、一人当たりの突出した頻度は抑制される傾向にあります。


「生徒数が多い(低単価・低頻度)」モデルが圧倒的に有利な5つの理由

それでは、
なぜこの「反比例の法則」を受け入れ、生徒数を優先したモデルを目指すべきなのでしょうか。

1. リスク分散と経営の安定性

学習塾経営における最大の経営リスクは「退塾」です。

高単価・少人数のモデルでは、一人の生徒が退塾した際の影響が甚大です。

例えば、生徒数10人で一人当たり月謝5万円の塾と、生徒数50人で一人当たり月謝1万円の塾を比較してみましょう。

どちらも売上は50万円ですが、一人が辞めた時の売上減少率は、前者が10%、後者がわずか2%です。

特定の少数の顧客に依存する経営は、常にその顧客の「満足度」や「家庭環境の変化」という不確定要素に首を絞められることになります。

生徒数が多い状態は、確率論的に経営を安定させ、一時的な離脱が全体に与えるダメージを最小限に抑えます。

2. 「口コミ」という最強の広告塔の母数

学習塾の集客において、最も強力なのは紹介と口コミです。

この口コミの発生源は、売上の金額ではなく「生徒の数」に比例します。

1人の生徒が3人分の月謝を払ってくれても、その生徒が発信できる口コミは1人分です。

しかし、3人の生徒がそれぞれ1人分の月謝を払っていれば、口コミの発生源は3倍になります。

「あそこは生徒が多い」
「みんな通っている」


という空気感そのものが、地域におけるブランド力となり、さらなる新規入塾を呼び込む「正のループ」を生み出します。

生徒数が多いことは、それ自体が最強のマーケティング戦略なのです。

3. 講師の採用と育成の合理化

生徒数が多い塾には、それなりの数の講師が必要になります。

一見すると人件費の管理が大変そうに見えますが、実は「数の原理」が働きます。
多くの生徒を抱えることで、時間割のパズルが組みやすくなり、講師の稼働効率を最適化できます。

また、多くの生徒と接することで、講師自身の指導スキルも多様なケースに対応できるようになり、組織としての教育ノウハウが蓄積されるスピードが飛躍的に向上します。

4. 出口戦略と多角化の可能性

生徒数(=会員数)は、その塾が持つ「リスト」の価値そのものです。

将来的に新しい教材を販売する、オンラインコースを新設する、あるいは別事業を展開する際、10人のファンがいる状態と100人のファンがいる状態では、テストマーケティングの精度も成功確率も桁違いです。 LTV(顧客生涯価値)を最大化する鍵は、短期的な授業頻度ではなく、長期的な関係性を築ける「分母」の大きさにあります。

5. 市場の変化に対する耐性

景気後退局面において、真っ先に削られるのは「過剰な教育投資」です。

週に4回、5回と通っている高単価な生徒は、家庭の経済状況が変化した際に「回数を減らす」か「辞める」という選択を迫られます。

一方で、週に1回、2回という「生活に組み込まれた適切な頻度」で通っている生徒は、教育の必要性が維持される限り、継続する可能性が高いのです。

生徒数が多いモデルは、不況時においても底堅い強さを発揮します。


指導の質と効率を両立させる「システム化」の妙

生徒数が増え、一人当たりの頻度が下がることを「サービスの質の低下」と捉えるのは早計です。むしろ、それは「教育の効率化」と呼ぶべき進化です。

少人数の密着指導は、言い換えれば「生徒の自立を妨げている」側面があるかもしれません。

週に何度も授業を入れなければ成績が維持できない状態は、学習習慣の形成という観点では不十分です。 生徒数が多い塾は、限られた授業頻度の中でいかに成果を出すかという課題に対し、自習室の活用、映像授業の導入、あるいは確認テストの自動化といった「システム」で回答を出します。

この「システム化」こそが、経営者が現場を離れ、次なる一手を打つための時間を生み出す源泉となります。

経営者の「妙」とは、属人的な労働を生徒数に転換し、その生徒数をシステムで支える構造を築くことにあります。


短期的な「単価の誘惑」を捨てる勇気

多くの経営者が、

目の前の利益を求めて季節講習で過度なコマ数を提案し、一時的な単価向上を狙います。しかし、これが過剰になると、保護者の財布を疲弊させ、長期的な継続を阻害します。

「生徒数が多い」ということは、その塾が地域社会において「適正な価格で、必要な価値を提供している」と認められている証拠です。

一人当たりの授業頻度が適正(少なめ)であることは、顧客満足度を維持しながら、他塾へ流出する隙を与えない「程よい距離感」を保っていることを意味します。


結論:目指すべきは「高密度」ではなく「広範囲」

学習塾経営における成功の指標は、一人からいくら取るかではなく、何人の人生に関われるかです。

生徒数と授業頻度の反比例を、ネガティブな現象として捉えないでください。

それは、あなたの塾が「特殊な場所」から「地域のインフラ」へと脱皮しているサインです。

生徒数が増え、平均単価が落ち着いてきた時、あなたの塾の経営基盤はかつてないほど強固になっています。その安定した基盤の上でこそ、さらなる教育サービスの改善や、校舎展開といった攻めの経営が可能になるのです。

経営者として、目先の「一人当たりの売上」に一喜一憂するのではなく、いかにして「通いやすい環境」を整え、生徒数の分母を最大化させるか。この一点に集中することが、10年、20年と続く繁栄への唯一の道です。

それではここで、生徒数と単価のバランスが、経営の安定性にどう直結するかを可視化するために、2つの異なるモデルでシミュレーションを行ってみましょう。

「高単価・少数精鋭モデル」と「適正単価・多人数モデル」では、年間の収益構造とリスク耐性にこれだけの差が出ます。


学習塾経営シミュレーション:収益構造とリスク比較

以下の条件で、月間の売上が同じ150万円になる2つの塾を比較します。

項目モデルA:少数・高単価型モデルB:多人数・適正単価型
生徒数30名100名
1人当たりの月謝単価50,000円(週3〜4回)15,000円(週1〜2回)
月間総売上1,500,000円1,500,000円
講習時の平均単価120,000円35,000円
講習期総売上(年3回)3,600,000円3,500,000円

一見、モデルAの方が効率的に稼げているように見えますが、ここから「経営の妙」が試されるシナリオを想定します。

1. 退塾リスクのインパクト

もし、家庭の事情などで3名の生徒が退塾した場合を考えます。

  • モデルA(30名)の場合
    • 売上損失:150,000円(全体の10%減)
    • 影響:講師のシフト変更だけでなく、固定費の支払いに即影響が出るレベルの打撃です。
  • モデルB(100名)の場合
    • 売上損失:45,000円(全体の3%減)
    • 影響:微減にとどまり、経営の安定性は揺るぎません。

2. 紹介による新規入塾の可能性(口コミ係数)

満足した生徒が「年に10%の確率で友人を紹介してくれる」と仮定します。

  • モデルA: 年間に発生する紹介数は、30名 × 0.1 = 3件
  • モデルB: 年間に発生する紹介数は、100名 × 0.1 = 10件

モデルBは広告費をかけずとも、分母の大きさだけでモデルAの3倍以上の集客力を持ちます。これが「生徒数が多い方が長い目で見て得をする」最大の理由です。

3. 講習単価の「心理的限界」

モデルAの生徒は、普段から5万円払っているため、講習で12万円を提示されると家計への負担が限界に達しやすく、失注(授業削減)や不満に繋がりやすい傾向があります。

対してモデルBは、普段が1.5万円と安価なため、講習での3.5万円という提案は「必要な投資」として受け入れられやすく、継続率が高まります。


結論:どちらのモデルを目指すべきか

シミュレーションが示す通り、モデルB(多人数・適正単価)は、一人当たりの授業頻度が少なくても、圧倒的な「集客の自動化」と「経営の弾力性」を持っています。

生徒一人に依存しすぎず、多くの生徒に薄く広く価値を提供できる仕組みを作ること。これが、経営者が現場の労働から解放され、塾を永続させるための最適解です。

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