個別指導塾への参入戦略:成功への道筋とターゲット選定の極意

個別指導塾への参入戦略

少子化の波に反し、教育サービスへのニーズは多様化・個別化の一途をたどっています。

特に生徒一人ひとりの学習進度や目標に合わせた指導が可能な個別指導塾は、市場においてその存在感を増しています。

しかし、参入障壁が低いとされる一方で、競争も激しく、成功を収めるためには緻密な戦略が必要です。

この記事では、「個別指導塾参入」を成功させるために、

事業者が押さえるべき注意点、市場における狙い目、そして小・中・高別のターゲット戦略について徹底的に解説します。

そして、潜在的な高収益分野として、特に中学受験個別指導塾に焦点を当ててその優位性をお伝えします。


個別指導塾参入前に押さえるべき重要ポイント(注意点)

個別指導塾の経営は、「教える」スキルがあれば成り立つものとは言い切れません。

・昔、塾の講師をやっていた
・教育学部の出身である
・他人に教えると教え方がうまいと言われる
・他塾で教室長の経験がある

数的に言いますと、このように指導スキルを持った人たちはたくさんいます。塾講師として雇えば、即戦略になってくれる・・・教室長、塾長として雇えば顧客対応もそこそこできてよいかも・・・

そう考えるのが普通ですし、確かにその枠に当てはまる人たちでしょう。

しかしながら、「指導できる」ということと「経営」は一線を画するものです。この点はよく注意しておきましょう。

持続可能なビジネスとして成長させるために、参入前に以下の4つの注意点を深く理解し、対策を講じる必要があります。

1. 競争環境の激しさと差別化戦略

市場の飽和と明確なポジショニング

都市部を中心に、個別指導塾の数はそれなりに多く存在します。大手フランチャイズ(FC)から地域密着型の個人塾まで形態はさまざまではありますが、夜遅い時間まで煌々と明かりがついているのは学習塾であることが多いです。

  • 注意点: 「個別指導」という看板だけでは集客が出来るわけではありません。
  • 対策: 「誰に」「何を」「どのように」提供するかを明確にし、競合他社にはない明確な強み(例:特定の学校の専門対策、特定の学習障害への対応、オンラインとのハイブリッド指導など)を打ち出す必要があります。

その昔は、集団塾との差別化を明示すれば顧客化がしやすかったですが、今は、一歩先にいくサービスがあったほうが集客できます。

2. 人材(講師)の確保と質維持の難しさ

個別指導塾のサービス品質は、講師の質に直結します。

  • 注意点: 多くの個別指導塾では、大学生アルバイトが講師の中心となりがちですが、彼らのシフトの不安定さ指導スキルのバラつきが、サービス品質の不安定さにつながります。
  • 対策:
    • 研修制度の充実 マニュアルだけでなく、模擬授業や定期的なフィードバックを通じて、講師の指導力を一定水準以上に保つ仕組みを構築します。
    • 採用基準の明確化 教科知識だけでなく、生徒とのコミュニケーション能力モチベーション管理能力を重視した採用を行います。
    • 正社員講師の活用 塾のコアとなる部分(進路指導、カリキュラム作成、保護者対応など)には、経験豊富な正社員講師やプロ講師を配置し、サービスの中核を担わせる戦略が不可欠です。

講師によって指導力にばらつきは、塾経営者の悩みの一つでもあります。講師たちの性格や指導方法などは、よく言えば個性集団と言えますが、保護者からの目線で言うと異なります。

やはりお金を払っているのだから、わが子にはベストな教育を与えたいということが本音です。契約後複数回通ううちに、わが子からの報告を受けて講師についての希望が明確になってくると

「〇〇先生に担当を変えてください」
「今教えてくれている先生はわが子には合わないので、違う先生に変えてください」

これらは、保護者の権利ですから、止めることは出来ません。

もっと言えば、

私たちは生徒を選ぶことは出来ませんが、生徒側(保護者を含み)は講師を選ぶことが出来るということです。

3. 固定費(特に人件費・家賃)のコントロール

個別指導は集団指導に比べ、生徒一人当たりの人件費比率が高くなる傾向にあります。

  • 注意点: 収益性を確保するためには、高い指導料を設定するか、あるいは徹底したコスト管理が必要です。特に、立地の良い場所は家賃が高くなり、初期投資を回収するまでに時間がかかるリスクがあります。
  • 対策:
    • 損益分岐点の明確化 開業前に、生徒数、単価、経費から損益分岐点を厳密に計算します。
    • 賃料と集客のバランス 駅から近い一等地でなくても、オンライン指導を組み合わせる、あるいは地域の学校の近くで口コミによる集客を狙うなど、賃料を抑える工夫が必要です。

箱物を構えて塾を運営する場合には、固定費である家賃は、これはもう仕方ないとあきらめましょう。
オンライン形式での実施の場合であっても、塾の場合は面談やその他のイベント実施、などもありますし、保護者の一定の安心感という面で、まだまだ箱物(教室として存在する)運営がベターだと思われます。

対して、人件費はいろいろと対策を講じる必要があります。
1:1個別指導に徹底してこだわるのであれば、講師費用は高単価になりますので、授業料は高めに設定しなければなりません。
1:2から1:3の個別指導であれば、講師1名に対して生徒2名、または3名までですから、工夫して確実に1:2または1:3になるようにセットすることがコストカットにつながります。

または、個別指導でも形式を少し工夫することで1:N型の指導が可能です。その際には、デバイスの活用は必須です。
1:N方式なのに、すべてを講師が全部やり抜くというのは、かなり無理があります。

コスト的に考えると、1:N型指導を工夫して実施することが大きな人件費カットにつながります。

4. 保護者への進捗報告と信頼構築

個別指導の顧客は生徒自身だけでなく、授業料を支払う保護者です。

  • 注意点: 保護者は高額な個別指導料に見合った成果と安心感を求めます。指導内容が「見えにくい」個別指導では、不安を感じやすいです。
  • 対策:
    • 定期的な面談・報告書 授業内容の記録、生徒の理解度、次のステップを具体的に記した進捗報告書を定期的に発行します。
    • ITツールの活用 生徒の学習ログや理解度テストの結果などを保護者がいつでも確認できる専用のアプリやシステムを導入し、透明性を高めます。

保護者を大切にする、これは言葉だけじゃなく、実際にそのスタンスを濃く出したほうが無難です。上記で「定期的な報告」と書きましたが、これは当然のことで、サービスでもなんでもないです。

それ以上に、不定期に状況を報告する、相談する、意見を伺うという姿勢が大切です。

よくあるのが「生徒第一」とする考え方を全面に出すやり方です。これは保護者の安心も得られますが、保護者を2番手にしてもいいですよ、という意味ではありません。
生徒と保護者第一・・・このように言い換えてもいいでしょう。

定期的でまるでテンプレートじみた報告、機械的内容よりも、不定期で何か気になることがあれば連絡したり、生徒の塾での状況がわかるように報告してあげることで信頼も増していきます。


競争優位性を生む「狙い目」市場

個別指導塾が特にニーズが高く、差別化しやすい市場は以下の2点です。

1. 特定のニーズに特化したニッチ市場

集団塾や大手塾では対応が難しい、細分化されたニーズに特化します。

  • 潜在的な狙い目例:
    • 特定教科専門 数学・理科に特化した理系専門個別指導
    • 高付加価値層 医学部受験専門、難関大学院入試専門など、指導単価が高く設定できる専門分野。
    • 非受験層 学校の補習や、不登校・発達障害を持つ生徒への学習支援(療育)。この分野は行政や福祉サービスとの連携も視野に入り、ニーズが非常に高いです。

2. 地域密着型の「かかりつけ学習塾」

大手FCでは難しい、地域特有の受験事情や学校のカリキュラムに徹底的に特化します。

  • 狙い目: 特定の中学校・高校の定期テストの傾向や、公立高校の入試選抜方法に精通し、「この地域・この学校ならここ」という地位を築きます。地域イベントへの参加や、地元企業との連携も有効な集客手段となります。

例えば、SNSやブログ、サイトなどでの記事、情報発信においても学校名を明確に出していくのは非常に有効です。
タイトルの中で「〇〇中学、▲▲中学、■■中学向けの勉強会」などと明示し、本文内でもキーワードとなる学校名をしっかりと入れて、どのようなことをやるのかを告知するなどの方法です。


小・中・高別のターゲット戦略

個別指導塾の成功は、ターゲットとする学年層の特性とニーズを深く理解し、それに応じた指導モデルを構築できるかにかかっています。

1. ターゲット:小学生(基礎学力・受験準備)

特性ニーズ個別指導の役割と狙い目
集中力の幅が大きい学習習慣の確立基礎学力の定着「自発性」を引き出すコーチング指導、学習計画の作成指導。中学受験対策では、集団塾のフォローアップとして利用されるケースが多いです。
保護者の関与度が高い進捗の明確な報告と、子どもの将来への不安解消保護者への頻繁なフィードバック、学習成果の可視化。

2. ターゲット:中学生(内申点・高校受験)

特性ニーズ個別指導の役割と狙い目
定期テストの対策が最優先内申点(通知表)向上のための学校別・単元別対策「オーダーメイド」のテスト対策。苦手科目の徹底的な穴埋めと得意科目の伸長。講師との信頼関係モチベーションに直結します。
部活動との両立融通の利くスケジュール自習環境授業時間や振替制度の柔軟性、いつでも使える自習室の提供。

3. ターゲット:高校生(大学受験・定期テスト)

特性ニーズ個別指導の役割と狙い目
目標の多様化大学受験対策(共通テスト、二次試験)と学校推薦型選抜(旧AO/推薦)対策「戦略」を提供する指導。受験科目や配点に合わせた学習計画の作成と、論述・面接指導などの付加価値提供。
自己管理の重要性増大プロ講師による専門的な質問対応と、学習管理の徹底。経験豊富なプロ講師の活用。単なる質問対応だけでなく、参考書選び勉強法の指導に注力します。

筆者おすすめ!「中学受験個別指導塾」参入の優位性

先に述べた学年別ターゲットの中で、筆者が特に参入をおすすめしたいのが中学受験個別指導塾です。この分野には、他の学年層にはない大きな優位性があります。

1. 高い指導単価と安定した収益性

中学受験は、教育熱心で経済力のある保護者層が中心となります。

  • 優位性 指導内容が専門的かつ高難易度であるため、指導料を高めに設定しやすいです。また、期間が小学4年生〜6年生の約3年間と定まっており、一度入塾すれば継続率が高く、安定した収益が見込めます。プロ講師を導入する費用対効果が高い市場です。

2. 集団塾の「補完役」としての強力なニーズ

中学受験のメインの学習は依然として集団塾(サピックス、日能研、四谷大塚など)が担っています。しかし、そのハイペースな授業についていけない生徒は少なくありません。

  • 優位性 中学受験個別指導塾は、集団塾のカリキュラムを理解させるための「伴走者」という重要な役割を担えます。集団塾の教材の質問対応、宿題の管理、弱点単元の徹底的な復習など、ターゲットを明確に絞り込むことで、強力なニーズを獲得できます。

3. 地域に特化した「専門性」の発揮

特定の中学(例:御三家、〇〇大学附属校など)の入試傾向は非常に専門的です。

  • 優位性: その学校の過去問対策出題傾向に特化したノウハウを蓄積することで、強力な地域特化ブランドを確立できます。「〇〇中学に強い」という実績は、強力な集客要因となります。

成功のために意識すべきこと(まとめ)

個別指導塾への参入成功の肝は、「競争回避」と「高付加価値化」に尽きます。

  1. 市場調査とポジショニングの明確化 まずは地域の競合他社を徹底的に分析し、誰にも負けない強み(USP)を決定します(例:中学受験専門、オンラインと対面のハイブリッドなど)。
  2. ターゲットの絞り込み: 中学受験層など、指導単価が高く、ニーズが明確なターゲットに集中投資します。
  3. 講師の「プロ化」 サービスの核となる指導の質を担保するため、プロ講師や徹底的に訓練された正社員講師の比率を高め、指導の標準化と専門性を両立させます。
  4. テクノロジーの導入 授業管理、進捗報告、講師間の情報共有にITツールを積極的に活用し、経営効率と保護者への安心感を向上させます。

個別指導塾経営は、初期の計画と人材育成に手間がかかるものの、教育という社会貢献度の高い分野で、地域に根差した安定経営を実現できる可能性を秘めています。緻密な戦略を立て、市場に参入しましょう。

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