大学受験の「衝撃の数字=78.3%」が示す未来:学習塾運営者が今、考えるべき課題

衝撃の数字=78.3%
現行制度メインなら受験予備校はサバイバル

はじめに:数字が突きつける現実

大学受験における78.3%、そして93.0%という数字は、ただの合格実績のデータに留まらず、受験市場の構造変化と、それに対応しきれていない従来の学習指導の限界を突きつける「衝撃の数字」「衝撃の現実」だとも言えます。

まずはこの数字の意味を押さえておきましょう。

  • 78.3%:第一志望大学への合格率
  • 93.0%:第二志望大学まで含めた合格率

これらの数字は、主に総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜(旧推薦入試)といった、非一般選抜入試における特定の調査結果から抽出されたものです。

重要なのは、これらの高合格率が「学力試験の点数」だけでは測れない、多面的な能力や戦略によって実現されている点です。

従来型の受験指導に特化してきた学習塾にとって、この現実は「従来の成功の方程式の崩壊」を意味します。

本稿では、この「衝撃の数字」が学習塾運営者に突きつける課題を深掘りし、今後の生存と発展のために不可欠な戦略転換について考察します。


課題1:入試制度の変革への対応遅れ

一般選抜から総合型・学校推薦型へのシフト

「78.3%」「93.0%」という驚異的な合格率は、多くの場合、一般選抜ではなく総合型選抜(以下、総選)や学校推薦型選抜(以下、学推)において見られます。

文部科学省のデータを見ても、私立大学を中心に、これらの非一般選抜入試の定員充足率、及び利用者の割合は年々増加傾向にあります。

これは、大学側が「学力試験のペーパーテスト能力」のみならず、「主体性・多様性・協働性」や、特定の分野への「熱意・適性」を持つ学生を求めていることの表れです。

従来の学習塾の限界

従来の学習塾は、依然として「一般選抜対策」に最適化されています。

  • 授業内容の偏り:英語、数学、国語といった主要科目の知識・技能の習得と、過去問演習が中心。
  • 評価軸の偏り:模試の偏差値や定期テストの順位のみを重視。
  • 指導者のスキル:科目指導のエキスパートは多いが、小論文指導、面接対策、活動報告書・志望理由書の作成指導といった総選・学推に必須のスキルを持つ講師が不足している。

運営者が取るべき戦略転換

  1. 指導体制の再構築
    • 非一般選抜専門チームの設立:小論文・志望理由書指導経験者、キャリアコンサルタント、企業でのプレゼンテーション経験者など、「知識伝達」ではない「思考力・表現力・探究力の育成」ができる人材の採用・育成。
    • プログラムの多様化:従来の科目授業に加え、「探究活動支援」「テーマ別ディスカッション」「ニュース解説と意見構築」など、総合型選抜で問われる非認知能力を鍛えるプログラムを標準化する。
  2. 情報戦略の強化
    • 入試情報の多角化:一般選抜のボーダーライン情報だけでなく、各大学の総選・学推の募集要項、アドミッションポリシー(AP)、過去の合格事例を体系的に収集・分析し、生徒・保護者への的確なコンサルティングに活かす。
    • 早期介入の徹底:高校1年生の早い段階から、総選・学推を視野に入れた「ポートフォリオ作成指導」や「探究活動のテーマ設定支援」を開始する。

このような背景にあるのは、常に国が掲げる学習指導要領、文部科学省の方向性指針です。今の学習指導要領は、ひとことで言うと、「思考・判断・表現」の力を増長させたいプログラムになっています。

その成果をはかるものが大学、高校、中学、小学校で課される試験ですので、踏襲された内容になるのは当然なのです。

上記の非認知能力であるとか、アドミッションポリシーに即した人物を合格させる大学側の意向は、まさにこの延長線上にあるものです。


課題2:指導概念のパラダイムシフト – 「知識」から「探究」へ

求められる能力の変化

「78.3%」の数字が示すのは、受験生が「点数を取る」だけでなく「大学で何を学びたいか、将来社会で何をしたいかを明確に語れる」能力を持っているということです。

これは、文部科学省が推進する高大接続改革の根幹であり、高校現場でも「探究活動」が必修化されている流れと完全に一致します。

知識注入型の指導の弊害

従来の塾は、生徒の頭に「知識」を注入し、それを「テストで正確に出力させる」訓練に長けていました。

しかし、総選や学推では、「知識をいかに活用し、自分の頭で課題を設定し、解決策を導き出すか」が問われます。

知識注入型の指導だけでは、生徒は「与えられた問いに答える」ことはできても、自ら問いを立てることができません。

これは、総選において致命的な弱点となります。

探究型学習への全面移行

  1. 「課題解決型学習(PBL)」の導入
    • 単なる小論文対策ではなく、社会の具体的な問題(例:AIと倫理、地方創生、環境問題など)をテーマに、リサーチ、ディスカッション、プレゼンテーションを一連の流れとして行う授業を義務化する。
    • 生徒自身に「興味のあるテーマ」を選ばせ、そのテーマに関する専門的な知識を深掘りさせ、それを志望理由書や面接での深掘り質問に耐えうるレベルまで昇華させる指導を行う。
  2. 指導の「コーチング化」
    • 講師の役割を「先生」から「メンター/コーチ」へ変える。知識を教え込むのではなく、生徒が自発的に考え、行動し、壁にぶつかったときに、その思考プロセスを補助・修正する役割を担う。
    • 特に、志望理由書作成においては、「なぜこの大学、この学部でなければならないのか」という生徒自身の根源的な動機(Why)を引き出し、言語化する対話型コーチングが不可欠です。

課題3:地域社会・高校との連携不足

「93.0%」の実現に必要な外部リソース

「93.0%」という高い合格率は、生徒が第一志望に不合格でも第二志望に合格できたという事実を含んでいます。

これは、単に偏差値帯の異なる大学に出願したという話だけでなく、多岐にわたる入試チャンスを戦略的に活用できたことを意味します。

総選や学推では、高校の先生からの推薦状や活動実績の評価が極めて重要になります。塾が単独で完結するサービスであった時代は終わりを告げています。

塾と高校の「断絶」

従来の塾と高校の関係は、しばしば「ライバル」や「情報の非共有者」であり、生徒の学力向上の責任を巡って、互いに牽制し合う構造がありました。

しかし、総合型選抜では、

生徒の「学校内での活動(部活、生徒会、ボランティア等)」「評定平均値(GPA)」「担任の先生の推薦」が合否に直結します。

塾がこれらの情報を無視して受験戦略を立てることは、生徒の可能性を狭めることになります。

外部連携を核とするサービスモデルへ

  1. 高校との「パートナーシップ」構築
    • 塾運営者が地域の高校と定期的な情報交換会を持つ。高校が注力している探究テーマや進路指導の方針を把握し、塾の指導内容を高校の教育活動と「補完関係」にする。
  2. 学校推薦型選抜に必要な評定平均値を上げるためのサポート(定期テスト対策)と、総合型選抜に必要な探究活動の深化のサポートを両立させる。
  3. 地域社会リソースの活用
    • 生徒の探究活動を深めるため、地域の企業、NPO、自治体職員などを講師やメンターとして招き、実社会の課題に触れる機会を提供する。
    • これにより、志望理由書に書く「実体験に基づく深い考察」を提供し、説得力を高めることができる。

事例(実話)コーナー

【実例(実話)】

ここで披露できる実例(実話)としては、学習塾運営における総合型選抜や推薦入試の実績を背景したものになるのですが、

高校生授業の一番の核は、やはり総合型や推薦入試が隆盛の昨今においては、

「いかに評定平均値をあげげいくか」

つまりは、考査結果にいかに反映させることができるかが最大のポイントです。

高1年からではなく

2年からとか、2年の途中からの入塾の場合には、1年次にあまりよくなかった事実を引きづっていることが多いため、一般受験向け対策が多くなります。

「一年生のときの評定がめちゃくちゃ悪いので・・・・」
「一年生のときにサボりすぎてしまって・・・」
「学校からはこのままでは総合型とか推薦は無理と言われたので」


きっかけは多岐ですが、たいていは、総合型と推薦がダメだと悟った場合に、一般受験になってしまって塾通いというコースが多くなりました。

〇〇大学へどうしても合格したいから塾へ行くのだ という感覚とはかなり遠いかもしれません。


課題4:料金体系と顧客への価値提供の再定義

顧客が求める「合格」の定義の変化

保護者や生徒が塾に払う対価は、もはや「偏差値の向上」だけではありません。彼らが求めているのは「第一志望合格(78.3%)」、そして最低でも「希望の進路への切符(93.0%)」です。

総選・学推対策は、一般選抜対策と異なり、個々人のテーマ設定、志望理由書作成、面接対策と、圧倒的な個別指導とコンサルティングの要素が強くなります。

一般選抜型の一律料金体系の限界

従来の料金体系は、「週当たりの授業コマ数」や「科目数」に基づいています。しかし、総選対策は「週何コマ」といった計り方が難しく、「志望理由書の最終添削回数」「模擬面接の回数」「探究テーマ決定までのコーチング時間」といった、成果ベース・時間非固定のコンサルティングサービスの要素が強くなります。

成果連動型・コンサルティング型料金体系への移行

  1. 「合格保証型パッケージ」の検討
    • 総選・学推に特化したコースとして、「第一志望合格」を目標に設定し、必要な全ての指導(探究テーマ設定から最終面接まで)をパッケージ化し、高付加価値な料金設定を行う。
    • 指導の価値を「講師の質や授業時間」から「戦略の質や合格という成果」へシフトさせる。
  2. 個別最適化コンサルティングの有料化
    • 生徒一人ひとりの適性や活動実績を分析し、最適な受験方式(一般選抜、総選、学推の併願戦略)を提案する「受験戦略コンサルティング」を、入塾時の有料サービスとして位置づける。
    • これにより、生徒・保護者の戦略なき不安を解消し、塾のプロフェッショナリズムを高める。

結論:学習塾の未来は「戦略家」への進化にある

大学受験における78.3%、93.0%という数字は、受験指導のあり方が「知識伝達」から「戦略構築と非認知能力の育成」へと完全にシフトしたことを示しています。

学習塾運営者が今考えるべき課題は、「いかにしてこの新しい波に適応するか」、そして「いかにして生徒の可能性を最大限に引き出す戦略家となるか」に集約されます。

  • 入試制度の変革に対応した人材とプログラムの導入
  • 指導の核を「知識」から「探究」と「コーチング」へ転換
  • 高校・地域社会との連携による外部リソースの活用
  • 高付加価値なコンサルティング・成果連動型のサービス設計

これらの戦略を実行に移すことが、今後の学習塾の持続的な発展、そして何よりも生徒の成功に繋がる唯一の道です。戦略なき指導は、この新しい受験時代において、生徒を「その他21.7%(78.3%に含まれない第一志望不合格者)」や「その他7.0%(93.0%に含まれない不合格者)」に追いやるリスクを高めることに他なりません。

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