学習塾の「閉鎖」を考える前に:事業譲渡・売却という賢明な選択

学習塾の経営者・オーナーにとって、長年情熱と心血を注いできた学習塾の閉鎖は、苦渋の決断であると同時に、多くの責任と負担を伴います。
私も閉鎖の経験がありますのでその痛みはよく理解しております。
生徒、保護者、講師、そして地域社会に対する責任、さらには閉鎖にかかるコスト(費用と時間)も無視できません。
しかし、その決断を下す前に、一度立ち止まって考えていただきたい選択肢があります。それは、「事業の譲渡(売却)」という道です。
一見すると、手間がかかるように思えるかもしれませんが、実は学習塾の事業譲渡・売却(M&A)は、単に閉鎖に伴うマイナスを避けるだけでなく、経営者、生徒、講師、そして地域社会にとって多大なプラスをもたらす、賢明な出口戦略となり得ます。
本記事では、学習塾の閉鎖を検討する前に、なぜ事業譲渡・売却を考えるべきなのか、そのメリット、そして具体的な進め方について、詳しく解説します。
なぜ閉鎖ではなく事業譲渡を選ぶべきか?
事業譲渡・売却を検討する最大の理由は、「価値の最大化」と「責任の継承」にあります。
1. 経営者にとってのメリット:事業価値の現金化とコスト回避
| 譲渡・売却のメリット | 閉鎖(廃業)のデメリット |
| 事業価値の現金化:売却益を得られる。 | コストの発生:生徒への返金、原状回復費用(内装工事費)、残存債務の清算、解雇手当など、多額の持ち出しが発生する。 |
| 責任からの解放:スムーズに事業を離れ、次のステージへ進める。 | 心理的・時間的負担:閉鎖手続き、生徒や講師への説明、事務作業に多くの時間を費やし、精神的な負担も大きい。 |
| 個人保証の解除:金融機関からの借入における個人保証を解除できる可能性がある。 | 個人保証が残る場合、廃業後も返済義務が続くリスクがある。 |
閉鎖の場合、経営者が最終的に手元に残すのはマイナスのコストと時間だけです。
一方、譲渡・売却に成功すれば、これまでに築き上げてきた信用、ノウハウ、顧客(生徒)基盤という「価値」を現金化でき、次の人生の資金源とすることができます。
2. 生徒・保護者にとってのメリット:学びの継続と安心
学習塾の閉鎖は、生徒の学びの機会を突然奪い、受験や定期テスト対策の計画を狂わせる可能性があります。
- 学びの機会の継続: 事業譲渡であれば、新しい運営者の下で、学習環境やノウハウが継承され、生徒は中断することなく学びを継続できます。
- 受験への影響回避: 特に受験を控えた生徒にとって、塾探しや新しい環境への適応は大きなストレスになります。譲渡は、この混乱を最小限に抑えます。
- 安心感の提供: 保護者にとっても、信頼できる新しい運営者が引き継ぐことで、子供の将来に対する安心感が保たれます。
3. 講師・従業員にとってのメリット:雇用の維持
優秀な講師陣は、塾の最も重要な資産です。閉鎖は、彼らの職を失わせることを意味します。
- 雇用の維持: 譲渡によって、多くの場合、講師・従業員の雇用が維持されます。彼らは慣れた職場で働き続けることができ、新しい運営者にとっても即戦力となるため、双方にメリットがあります。
4. 地域社会にとってのメリット:教育機会の存続
地域に根差した学習塾は、単なるビジネスではなく、地域の教育インフラの一部です。譲渡によって、その教育の場が消滅することを避け、地域社会に貢献することができます。
さて!

1は経営者・オーナー目線です。2,3,4は周り目線です。
ここでカッコつけたことを感覚的に持つのであれば、2,3,4を前面に出していいのですが、やはり私はまず自分の胸に手を当ててみて自分自身のことを考えてほしいというのが本音です。
2,3,4は実際に「譲渡する」「売る」となったときの、表向き、よそ行きの言葉としてしっかりと準備しておけばいいでしょう。
このサイトは本音サイトです。
もし、経営者の方やオーナさんとお話しする機会があれば、本音トークです。オブラートに包んでも仕方ないですし、
自分が生きることを考えるのは当然です。
なので、恥ずかしいとか、後ろめたいとか、全くそういうのは関係なく、本音でどうしたいですか?という部分を全部ドロッと出してお話し合いしたほうが絶対にスムーズだと思います。
ですから、上記「1」の感覚を起点に考えていくといいでしょう。
学習塾が持つ「売却可能な価値」とは?
「うちのような小さな塾でも売れるのか?」
と疑問に思う方もいるかもしれません。
しかし、学習塾は多くの買い手にとって魅力的な事業です。その価値は、単なる資産(備品など)の合計ではありません。
学習塾が持つ主な売却価値は、以下の点に集約されます。
- 安定した顧客基盤(生徒数・在籍期間):
- 毎月の月謝という安定した収益源があること。
- 特に、質の高い生徒や**地域での高い評判(ブランド力)**は、非常に価値が高いと見なされます。
- 優秀な人材(講師・社員):
- 指導ノウハウを持つプロ講師や社員は、買収後の運営をスムーズにする重要な資産です。
- 立地と賃貸借契約:
- 駅前や住宅地の中といった良い立地は、集客に直結するため大きな強みです。
- 独自の教育ノウハウとシステム:
- オリジナルの教材、カリキュラム、進路指導システムなど、他社が模倣しにくい無形資産です。
- 地域の教育ニーズとの適合:
- 少子化が進む中でも、特定の地域やニッチな分野(例:医学部専門、個別指導特化)で高いニーズを満たしている塾は、特に評価されます。
買い手となるのは、事業拡大を目指す大手・中堅の学習塾や、教育分野への参入を目指す異業種の企業が中心です。
彼らは、ゼロから開校するよりも、実績のある塾を買収する方が時間とリスクを大幅に削減できると考えます。
この章の最初に書いた
「うちのような小さな塾でも売れるのか?」
に、ついてですが、売れます!
箱物が大きいから良い塾とは言えません。箱物が大きい場合は、通常は家賃が高いです。その高い家賃に見合った生徒数が残存していればいいですが、そうじゃない場合には、家賃の重みがあります(固定費)ので、逆に敬遠される可能性のほうがあるのです。
箱物は小さいけれど、しっかりと地域密着で顧客がついている!そういう塾のほうが運営はしやすいですし、実際に講師、生徒にもバッチリ目が届きます。
事業譲渡・売却の具体的なステップ
事業譲渡は、一般的に以下のようなステップで進められます。自力で行うには専門知識が必要なため、M&A仲介会社や専門家(税理士、弁護士)のサポートを受けることが成功の鍵となります。
この点は強くお伝えしたいです。
まず、ご自身で行うことも可能ですが、チャットでのやり取りでもメールでもzoomでも、実際に会ってでも、そこには「交渉」が伴います。この交渉に長けている人とそうではない人では全く結果が変わってしまうのです。
M&Aや事業譲渡、株式譲渡、持分譲渡の場合には、基本はよほど慣れた人じゃなければ仲介会社を入れたほうが無難です。
ちなみに
宣伝ですが、
CROSS M&A(通称クロスマ)は、売り手の手数料は0円です。
無料です。
世の中に「ただほど怖いものはない」とかいう人も居ます。私も実際言います。しかし、誤解は
なされないでください。
本来、
売り手様、買い手様双方から頂いている手数料を買い手様から頂いているのです。だから
売り手様からはいただいておりません。ということです。
Step 1: 譲渡の意思決定と準備
- 譲渡目的の明確化: 「いつまでに、いくらで」譲渡したいのか、目的を明確にします。
- 専門家への相談: M&A仲介会社やフィナンシャルアドバイザー(FA)に相談し、サポートを依頼します。
- 資料の準備: 過去数年分の財務諸表、生徒数・推移、講師の雇用条件、塾の強みや教育システムをまとめた事業概要書を作成します。
Step 2: 企業価値の評価(バリュエーション)
- 株価算定: 専門家が、財務状況、無形資産(ブランド力、ノウハウ)、将来の収益予測などに基づき、客観的な企業価値(売却価格の目安)を算定します。
Step 3: 買い手候補の探索(マッチング)
- 候補選定: 仲介会社が、機密保持契約(NDA)を結んだ上で、事業内容に興味を持ちそうな買い手候補を探します。
- トップ面談: 候補を絞り込んだ後、売り手(現経営者)と買い手候補の経営者間で、経営理念や事業への考え方について直接面談します。
Step 4: 基本合意の締結
- 売却価格や譲渡の範囲(何を売るか、何を売らないか)など、大まかな条件について合意し、基本合意書を締結します。この段階で、独占交渉権を買い手に付与することが一般的です。
Step 5: デューデリジェンス(買収監査)
- 買い手側が、弁護士や公認会計士などの専門家を使い、事業内容、財務、法務など、事業全体のリスクを詳細に調査します。この結果によって、最終的な売却価格や条件が調整されることがあります。
Step 6: 最終契約の締結とクロージング
- デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終的な条件について合意し、最終譲渡契約書を締結します。
- 代金の決済と、事業の引き渡し(生徒名簿、契約書類、鍵など)を行い、M&Aが完了(クロージング)となります。
成功のための重要なポイント
学習塾の譲渡・売却を成功させるためには、特に以下の点に注意が必要です。
- 事業の「見える化」と「整理」:
- 日頃から財務状況を明確にし、契約書や規約が整備されているか確認しておきましょう。グレーな部分があると、デューデリジェンスで問題視され、評価が下がる原因となります。
- 情報管理の徹底:
- M&Aの情報は、極秘情報です。外部に漏れると、生徒や講師に動揺を与え、事業価値を損なう可能性があります。専門家と連携し、クロージングまで情報管理を徹底する必要があります。
- 承継への配慮:
- 買い手は、生徒と講師が残ることを重視します。譲渡後も一定期間、現経営者が引き継ぎに協力する(例:数ヶ月間は顧問として残る)ことで、譲渡価格が上がる可能性があります。
- 信頼できる専門家の選定:
- 学習塾のM&Aに知見と実績を持つ仲介会社を選ぶことが、最も重要です。彼らは、適正な価格算定、優良な買い手とのマッチング、複雑な交渉や手続きのサポートを一手に引き受けてくれます。
結び
学習塾の閉鎖は、過去の努力を水に流し、多くの人々に負担をかける、「もったいない」選択です。
長年培ってきた教育のノウハウと、生徒との信頼関係を次世代に託すこと。それが、事業譲渡・売却というM&Aの本質です。閉鎖に伴う金銭的・心理的なマイナスを回避し、逆にまとまった資金を得るチャンスに変えることができます。
売上高とか生徒数がけっこうダウンしてしまっていて、仮に赤字だったとします。それでも時期とか希望売値を間違えなければ売れます。
最悪の最悪は0円譲渡という方法もあります。
その場合、物件解約時の原状回復費用は通常かかりませんし、不動産契約時に預けた保証金または敷金が戻ってきます。さまざまな処分費用もかかりません。
これだけでも大きいです。
もし今、塾の将来についてお悩みであれば、閉鎖の手続きに入る前に、まずは事業譲渡の可能性について専門家にご相談されることを強くお勧めします。それは、経営者としての最後の「賢明な一手」となるでしょう。

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