序章：なぜ「今」英検を取るべきなのか？

日本の学校教育や多くの大学入試における英語の評価軸は、長らく「文法理解」「単語力」、そして「読解力（リーディング）」に重点が置かれてきました。そして今もその状態は継続中であると言えます。

発音やアクセント、流暢な会話力といったスキルは、学校の定期テストでも、入試の合否を分ける要素としても、ほとんど問われてこなかったのが現状です。

これは、日本の英語教育が「読む・書く」を中心とする知識習得型から、「聞く・話す」を加えたコミュニケーション能力重視型へと本格的に移行する過渡期にあることを示しています。

そして、この「移行期間」こそが、

従来の学習スタイルで培った力、つまり「文法と単語と読解」を最大限に活かし、有利に英検（実用英語技能検定）を取得できる、またとない「戦略的チャンス」なのです。

主題は、これから「スピーキングもしっかりやらなくてはいけない」という部分でもあるのですが、実際には、スピーキング技能が評価される時代になる前に、今のうちに英検をとっておいたほうがいい！という内容です。

これを学習塾運営上の大きなヒントにできればという思いで記事を書いています。

↑　こちらのグラフは【出典】公益財団法人　日本英語検定協会です。

Ⅰ. 今の英検に通用する「日本の英語力」の正体

現行の英検の構造、特に一次試験（筆記・リスニング）と二次試験（スピーキング）のうち、多くの中高生が集中して対策できるのは、やはり知識が問われるセクションです。

1. 確固たる基盤：「文法力」と「語彙力」

学校の授業で習う文法事項は、英検の筆記試験（穴埋め、並び替え、長文読解）の土台です。

複雑な構文を正確に読み解く力、適切な語形を選ぶ力は、日本の英語教育で鍛えられた「強み」です。さらに、教科書や単語帳で培った「単語のスペルと意味を一致させる力」は、リーディングセクションの速度と精度を劇的に向上させます。

2. 最大の得点源：「読解力（リーディング）」

日本の入試英語は、時に専門的な内容を含む複雑な長文が出題される傾向があります。

この「複雑な文章を精読し、必要な情報を抽出する能力」は、英検のリーディングセクションで、他の技能に比べて圧倒的に高得点を狙えるスキルです。

じっくりと時間をかけて文章の構造を理解し、設問の意図を正確に捉える、この「日本式」の読解力は、今も英検突破の最大の武器となり得ます。

3. 軽度で十分：「軽いリスニング力」

英検のリスニングセクションは、TOEICやTOEFLに比べると、問題の構造やスクリプトの内容が比較的シンプルで、設問のパターンもある程度予測可能です。基本的な単語や表現を聞き取れ、要点を把握できる「軽いリスニング力」があれば、筆記試験での高得点と合わせて、一次試験の合格ラインを十分に超えることが可能です。

文法と単語で押さえた知識が、耳からの情報と結びつけば、さらに効果は高まります。

Ⅱ. 「今」この戦略が通用する理由：現行英検の構造的有利性

なぜ、発音や流暢さが完璧でなくても英検が取れるのか。

それは、英検の合格基準が各技能の「総合点」で決まるからです。

1. リーディングで貯金が可能: リーディングセクションで満点に近い点数を取れば、リスニングで多少失敗してもカバーできます。前述の通り、日本の教育で培った読解力は、ここで最大限に活きます。
2. スピーキングは「最低限の準備」でOK: 英検の二次試験（面接）は、もちろん会話力が必要ですが、ある程度「型」があります。問題カードの音読、質疑応答、自分の意見を述べるパートなど、定型的な応答パターンを準備し、文法的に正しい文章で回答する練習を徹底すれば、ネイティブのような流暢さがなくても合格点は取れます。要は、「正しい知識をアウトプットする」準備が、今の英検ではまだ通用するのです。

つまり、この戦略は「知識」という日本の英語教育の強みを最大限に活かし、合格に必要な「コミュニケーション能力」を最低限の準備でクリアする、非常に効率的な方法論です。

Ⅲ. 将来への警鐘：確実に「会話力」が問われる時代へ

しかし、この「知識型英語」で英検が取れる状況は、そう長くは続きません。

1. 2020年代後半、英語教育はさらに変化する

大学入試改革や、小学校からの英語必修化の流れは、確実に「話すこと（スピーキング）」と「やり取り（インタラクション）」を重視する方向へと進んでいます。

• 入試への導入: 将来的に、大学入試や公的な検定試験において、AIによる自動採点システムなどを活用した、より本格的なスピーキングテストが導入される可能性は極めて高いです。
• グローバル化の現実: 社会に出れば、メールのやり取りだけでなく、オンライン会議、プレゼンテーション、交渉など、リアルタイムでの会話力が必須となります。知識があっても、口から言葉が出てこない「サイレント・イングリッシュ・スピーカー」は、仕事の現場で通用しません。

2. 今の「英検」が持つ本当の価値

だからこそ

今のうちに英検を取得し、「知識ベースの学習」を一段落させることが重要なのです。

• 資格としての有効活用: 英検は、高校・大学入試における優遇措置や、内申点加算、留学時の語学力証明など、その後の進路選択において非常に強力なパスポートになります。
• 「次のステージ」への移行: 英検取得という「目に見える成功」を収めた後で、初めて「知識をアウトプットする練習」に心置きなく時間を割けるようになります。資格取得で得た自信と時間を使って、将来的に必須となるスピーキングやディスカッションの訓練に集中できるのです。

結論：知識を活かして、未来に備える

「文法と単語、そして読解力」という、日本の教育で培った確かな基盤は、現行の英検を突破するための極めて有効な戦略です。

「今はまだ通用する英語戦略」を最大限に活用し、英検という確かな実績を手にしましょう。

もっとわかりやすく言えば、

今のうちに・・・スピーキングや会話が点数化される時代が来る前に英検を取ってしまおう！というお話です。

それは、単なる資格取得にとどまらず、将来確実に求められる「スピーキング・会話力」のトレーニングにシフトするための、賢明で戦略的な「時間と自信の貯金」となるはずです。

英検という目標を「知識」で突破し、次のステップで「会話」という未来のスキルを磨く。これが、あなたが今取るべき、最も合理的で成功に繋がる英語戦略です。

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