学習塾オーナーは、利益をとることも考えていきましょう!

「良い人」であることと、「良い経営者」であることのバランス
学習塾のオーナー、特に個人や少人数で運営されている方々は、総じて「人がいい」方が多いのが実情です。仕事柄今まで何人ものオーナーさんとお会いしてきていますが、誰一人として腹黒い印象は持ちませんでした。
優しい方が多いです。さらに突っ込んでお話をしていくと、オーナーさんたちはそれぞれ全く別の場所で運営して、全くつながりがないのに、お伝え頂くことが似つかわしいという事実がわかってまいりました。
- 「なんとかして生徒の成績を上げたい」
- 「この子の未来のために力になりたい」
- 「困っている家庭の経済的な事情を考えると、これ以上は請求しにくい」
多かったのが、この3つのお考えです。
当然、ここまでの・・・特に最後の本音部分を聞き出せているということは、それなりの長い談話をしていると想像してみてください。
いろいろとお話を伺ううちに、このような売り上げに直結するような話題であったり、その中の困りごとなどをお話いただけるのです。
こうした教育者としての純粋な情熱や、生徒・保護者に対する献身的な姿勢は、素晴らしい資質であり、塾の信頼を築く上で最も重要な要素です。
しかし、経営という視点から見ると、この「人の良さ」が、時に収益を圧迫する最大の要因となってしまうことがあります。
「生徒のため」
恐らく、この言葉がオーナーや塾長、教室長の行動をけっこう縛り付けてしまっているように感じることがあります。
この言葉を言い訳に(・・と言うと少し言い過ぎかもしれませんが)、自らの時間や労力に対する正当な対価(手間賃料)を請求できていない、あるいは、本来のサービス範囲を超えた無償のサービス(ボランティア指導や過度な相談対応など)を提供し続けているケースが散見されます。
小さくてもしっかりと手間賃料をいただく:成功事例に学ぶ値付けの技術
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【実例(実話)】
ここのサブタイトルでは、いきなり事例から入ります。異業種と同業者の事例です。
事例:小さくてもしっかりと線引きをしているバイク屋さん
私は普段の移動でバイクを使います。そのほうが機動性が良いからです。またコストパフォーマンスも車よりいいです。
一年中バイクですので、故障もありますので必然バイクショップへの出入りも多くなります。
「このねじを締めていけばダイジョブです。もし自分がその作業をやると500円とか余計にかかってしまいますから、良かったらご自分でやりますか」
という内容でした。
少し奥まったところのねじで、尚且つ作業をやれば自分の手が真っ黒になるので、面倒だから、
「いや、すまんがねじ締めもやってくれるか?」
ということで、最後まで作業をやってもらいました。きちんとプラス550円で請求されていました。正直な意見としては、(こんな程度のことで工賃取るのか)だったのですが、いやいや、これが商人精神であろうという風に感心する気持ちに自分の心を強引にもっていきました。
そして、違うバイクショップ2件でも、シチュエーションは全く異なりますが、(ここで工賃とるのか)という事態がありました。
つまり、自分の手が動くこと=手間賃なのです。
そして最初のお店が特別なのではなく、手間をかけている以上、そこには手間賃が発生することが普通なのです。
事例:時間外の補習・質問対応を「見える化」する
ある地域密着型の個人塾のオーナーは、熱心なあまり、授業時間外に生徒からの質問や補習を無償で受け入れていました。
実際、この個人塾だけでなく、チェーン系統塾であっても、FC系統塾であっても、大方の塾は時間外が無償サービスが必ずと言っていいほどあります。
これは良いのか悪いのかの議論はさておき、こちらのオーナーの話に戻ります。
その結果、ほぼ毎日、定時を大幅に超えて残業し、精神的にも肉体的にも疲弊してしまっていたようです。そのため働きすぎでもあるのですが、体調不良もあって経営も安定しませんでした。
そこで彼は、いろいろと考えて、以下の施策を実行しました。「最初は不評を買うかもしれないがやってみよう」という思いつきだったみたいです。
- 「質問・補習チケット制」の導入:
- 月謝内に「月〇時間の無料質問・補習枠」を組み込み、その時間を超える場合は、1時間あたり〇〇〇〇円の「学習サポート料」が発生することを明記しました。
- (ただし、定期テスト前の週末など、特別な時期にはサービスとして無料解放する日も設けることで、保護者への配慮も示しました。)
 
- 保護者への「付加価値」としての説明:
- このサポート料は「先生が夜遅くまで、確実にお子様の疑問を解消し、学習習慣を維持するための専用の時間確保料です」と説明しました。
- 無料だったものを有料化するのではなく、「無制限だったサービスに、より質の高い保証を付ける」というポジティブな説明に切り替えました。
 
結果として、無制限だった時よりも生徒は質問の質を考えてくるようになり、オーナーの労働時間は適正化され、年間で約100万円以上の追加収益を得ることができました。
これは、「良いサービスには正当な対価が必要である」という原則を、遠慮なく保護者に伝えることができた成功例です。
どちらの事例も私の実際に経験と実際に伺ったリアルなお話です。
特に同業者さんの質問チケット・補習チケットは、反発ありそうな内容ですがしっかりと、説明をすることで保護者の理解を促し、尚且つ生徒の前向きな学習姿勢をさらに前向きにしていく効果があったのだろうと推測しました。
有料なのですから、その質は保護者が満足するものでなくてはなりませんが、それが機能したことで有料でも納得のサービスとなったのです。
思考を転換する:対価は「生徒のため」でもある
正当な利益を確保することは、オーナー自身を助けるだけでなく、最終的に生徒のためになります。
利益がなければ、新しい教材への投資、設備の改善、質の高い講師の採用・育成、そしてオーナー自身の心身の健康維持ができず、サービスの質は必ず低下します。
利益を追求することは、教育の質を維持・向上させるための前提条件
と言っても過言ではありません。
課題を乗り越えるための「経営者マインド」の確立
多くの学習塾オーナーが抱える課題は、教育スキルとビジネススキルのアンバランスさにあります。学習塾を仕事に選ぼうとされる方は、子どもたちの教育に対しての自分の理念を持っている方が多いです。また、以前、関連の職務についていた方が多いのも実態です。
いろいろとリサーチしてケースとして多いものを以下に示してまいります。
課題1:教科指導は得意だが、営業が苦手なオーナーが多い
「モノ(知識や技術)はいいんだから、勝手に生徒は集まるはず」という考えは、残念ながら現代の競争社会では通用しません。どれだけ指導力が高くても、その価値を的確に伝え、保護者に選んでもらう「営業」と「マーケティング」が必要です。
また、オーナーや兼任教室長、兼任塾長、つまり自分自身が教科指導に入ることによるメリットは人件費軽減になるかもしれませんが、長い目で見た場合はかなりきつくなると思います。
教科指導を得意とするがゆえに学習塾経営という、何となくの道筋を頼りに動いてしまった方のほとんどが営業が苦手です。
このことが一番多くオーナーの悩みになっています。
課題2:子供の扱いはうまいが、保護者との面談は引いてしまう、できない約束をしてしまう
生徒との関係構築は完璧でも、保護者との面談になると「クレーム対応になるのではないか」「値引き交渉をされるのではないか」といった不安から、一方的な説明に終始したり、逆に言葉を濁してしまったりするオーナーがいます。
さらにかなりの割合で発生するのが「できない約束をしてしまう」ケースが散見されます。
例えば
・振替の規定があるにも関わらず「振替は出来ます」と言ってしまう
・わからないところは教室長に質問できますか?という問いに対して「いつでも大丈夫ですよ」と答えてしまう
・習っている教科以外でもみてくれますか?という質問につい「もちろん全教科大丈夫です」と回答しててしまう。
・毎回授業「前」に単語の小テストをやってほしいという要望にYESの返事でこたえてしまう
いかがでしょう。
「アッ」と思い浮かぶことはありませんか。
保護者面談は、塾の教育理念や成果を再確認してもらい、信頼を深め、継続的な関係(=継続的な収益)を築くための最高の営業機会です。それが最初の面談であっても季節講習実施前の面談であってもです。
もし、上記のような課題があるものの、なかなか克服できていない・・・という場合には、教育者であると同時に「経営者」としてのスキルを磨き、意図的に収益を生み出すための仕組み作りが必要です。
利益体質への転換:今日から始める「4つの仕組み化」
ご提示いただいたように、「そういえば・・・」と感じるポイントが見つかったら、一度立ち止まり、時間を割いて以下の「仕組み化」を練り直してみましょう。
これが、感情論ではない、安定的な利益を生み出すための土台となります。
さて、まずはいろいろと整理したり構築するために、以下のことがオススメ作業です。一日では出来ないと思います。仕事の合間でやることになりますので、一か月ぐらいはかかる計画としてコツコツとテーマを決めて取り組んでみましょう。
① 一日のルーティンワークを再構築する
オーナーの時間が、無計画な雑務や無償サービスで削られていないか確認します。
- 「非生産的タスク」の排除・自動化: 事務作業やスケジュール調整、問い合わせ対応の一部を、ITツール(予約システム、自動応答メールなど)に任せられないか検討します。
- 「生産的タスク」の優先順位付け: 最も収益につながる「指導計画の作成」「営業資料のブラッシュアップ」「保護者面談の準備」の時間を、必ずルーティンに組み込みます。
 例:「午前中の10時~11時は、どんなことがあっても営業・企画の時間とする」など。
最初から肩肘張って、細かいルーティンを書き込んでしまうと、一つのほころびが全体に影響を与えることになってしまいますので、多少の時間のずれ込みがあっても大丈夫なように、ザクっとしたルーティンスケジュールのほうが良いです。
経営者ですから、考える時間も必要ですし、運営以外に時間を要する(資本戦略とか、出店戦略など)場合もあるわけですから、その点は臨機応援で進んでいきましょう。
② 突然来塾した場合の対応方法を形式化する
突然の入塾相談やクレーム対応は、準備不足だと時間がかかり、精神的疲労も大きくなります。対応を形式化(マニュアル化)することで、時間と労力の浪費を防ぎ、常に一貫した高いサービス水準を提供できるようになります。
- 「3ステップ対応」の用意:
- ヒアリング(現状把握): 困っていること、成績、志望校などを迅速に聴取する統一シート。
- 問題提起と価値提案: 聴取した内容に基づき、「当塾でなければ解決できない理由」と「具体的な指導ステップ」を提示するトークスクリプト。
- クロージング(次への誘導): その場で契約を迫るのは突然来塾の場合は通常は無理があります。次の流れとしては、必ず「次回、体験授業と個別説明会の日程を調整しましょう」と具体的なネクストアクションに誘導する!ということです。
 これは、よくある「ではご検討ください」ではNGであることを何度も何度も自分自身にくぎを刺して意地でも「検討ください」Wordは言わないことを徹底して、次への誘導をするための練習になります。
 従って、必ずトークスプリプとやクロージングトークは自分で言いやすいようにつくりあげていき、ブラッシュアップしていくべきです。
 
③ アプローチブックを作成する
「営業が苦手」なオーナーこそ、アプローチブック(営業資料)が必要です。これは単なるパンフレットではなく、保護者面談でオーナーの代わりに価値を語ってくれる最強のツールです。
| 対象・目的別 | 訴求ポイント(提示すべき価値) | 
| 小学生 | 「学習習慣の定着」「好奇心の育成」「中学受験(目標達成への明確なロードマップ)」 | 
| 中学生 | 「内申点対策」「高校受験(志望校合格への戦略的な指導カリキュラム)」 | 
| 高校生 | 「大学受験(共通テスト対策、個別試験対策の専門性)」「進路相談・目標設定のサポート」 | 
| 中学受験 | 「地域・学校別の対策データ」「少数精鋭だからできるきめ細やかなサポート体制」 | 
これらを体系的に整理し、どの生徒・保護者が来ても、迷わず最適な資料を見せて、自信を持って説明できる状態を作ります。アプローチブックがあることで、オーナーは指導者としての自信を持って営業に臨めます。
アプローチブックは、最初はつくるのがとても面倒です。それこそ、いざ作ろうと思っても、どんな順番で、どんな資料を入れて、どのように作り上げるのか見当もつかない方は多いでしょう。
アプローチブック作成のコツは、
①マクロからミクロ
②ストーリーテリング
この2つです。
完全回答をお望みの方は是非お問合せください。
CROSS M&A(通称クロスマ)のサービスご利用の際には、必ずや「ここまでやってくれるのか!」という感動とともに成果をお約束いたします。
最後に、アプローチブック作成時の注意点は、新しい内容を維持する!という点です。アプローチブックは一度作ったら、はい完成!ではありません。
そこから使っていくうちにきっと気づきがあります。
・この資料は古くなってしまったなぁ
・この資料の説明はやりにくいので飛ばしてしまうことがある
その場合は、やはりアプローチブックの中身をupdateしていく必要があるのです。特に学習塾や習いごとの場合には、周りを取り巻く教育状況の変化がありますし、年度によって、教科書採択も変わる場合がありますし、大元の学習指導要領などが変更されることがあります。
2年、3年と同じ資料で説明できるということはないでしょう。
④ 各種資料を整理して用意しておく
資料の整備は、信頼性の確保と時間の節約に直結します。
- 料金体系一覧: 明朗会計が信頼を生みます。オプション費用、教材費、季節講習費まで、すべて一覧で示せる資料を用意。
- 合格実績・生徒の声: 客観的な実績(数字)と感情的な訴求(声)の両輪で信頼を担保します。
- 入会申込書一式: 申し込みがあった際に、その場ですぐに手続きが完了できる状態にしておく(スムーズなクロージング)。
利益は「より良い教育」への再投資である
繰り返しますが、利益を追求することは、より良い教育サービスを提供し続けるための責務です。学習塾オーナーとしてのあなたが、正当な対価を受け取り、心身ともに健康で余裕を持つことができれば、生徒に対する愛情や情熱はさらに増し、指導の質は向上します。
「良い人」であることは、素晴らしい教育者であるための第一歩です。 しかし、「良い経営者」であることこそが、その「良い教育」を持続可能にし、より多くの生徒の未来に貢献するための、最も重要な土台となります。
まずは今日から、ご自身の「時間」と「専門知識」に、正当な価格を付け、上記4つの仕組み化に着手し、利益を意識した経営へと舵を切りましょう。それが、地域社会への貢献を最大化する道に繋がるはずです。

学習塾・習いごと専門M&AサービスCROSS M&A(通称:クロスマ)は、業界ナンバー1の成約数を誇るBATONZの専門アドバイザーです。BATONZの私の詳細プロフィールはこちらからご確認ください。
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