合格実績よりも重要。保護者の心を掴む学習塾面談の秘訣

2025年08月12日

開校2年目以降

保護者との面談、本当に伝えるべきことは何でしょうか?多くの学習塾が、パンフレットを片手に自慢の合格実績や指導カリキュラムを滔々と説明しているかもしれません。

しかし、60分の面談を終えた後、保護者の心に響くのは、たった2つか3つの強い印象だけです。

「未来の」ことや「将来の」成功を約束するような言葉は、もはや保護者には響きません。なぜなら、彼らが求めているのは、我が子が今抱えている具体的な悩みを解決してくれる、信頼できるパートナーだからです。

この記事では、合格実績や指導実績といった表面的な情報よりもはるかに重要な、「保護者からのヒアリング」「生徒一人ひとりに合わせた指導」の二点に焦点を当て、保護者の心を掴み、信頼を勝ち取るための面談術を徹底解説します。


1. パンフレットは脇役で良い。主役は「保護者からのヒアリング」

面談の席についたとき、まず手に取るのはパンフレットではありません。あなたが手に取るべきは、ペンとメモ帳です。そして、口を開くべきはあなたではなく、保護者です。保護者は、不安や期待、そして我が子に対する悩みを抱えてあなたの目の前にいます。その悩みを聞き出すことこそが、面談の最初の、そして最も重要な仕事なのです。

なぜヒアリングが最も重要なのか

多くの営業担当者は、自塾の強みや指導方針を熱心に語ることに集中しがちです。しかし、保護者が本当に知りたいのは、「我が子がこの塾でどう変わるのか」という一点に尽きます。

  • 勉強嫌いの本当の理由は何?
  • なぜ成績が伸び悩んでいるのだろう?
  • 他の塾ではダメだったのはなぜだろう?

こうした本質的な悩みを解決するには、まず「聞く」ことから始めるしかありません。表面的な情報(学校名、学年、部活)だけでなく、

・「お子さんはどんなことに興味を持っていますか?」
・「最近、どんな時に楽しそうにしていますか?」


といった、生徒の個性や興味関心を引き出す質問を投げかけましょう。これにより、保護者は「この人は、うちの子のことを真剣に理解しようとしてくれている」と感じ、あなたへの信頼感が一気に高まります。

具体的なヒアリングのテクニック

「はい」「いいえ」で終わらせない質問

「お子さんは勉強が好きですか?」という質問は、「はい」か「いいえ」で終わってしまいます。そうではなく、「お子さんが勉強について最近どんなことを言っていましたか?」といったオープンな質問を投げかけましょう。保護者が自由に話せる雰囲気を作ることで、より多くの情報、そして本音を引き出すことができます。

相槌とメモが信頼を築く

保護者の話には、うなずきや「そうなんですね」「それは大変でしたね」といった相槌を挟み、共感を示しましょう。そして、話の重要なポイントは必ずメモを取ります。このメモは、面談の終わりに「今お伺いしたことをまとめますね」と再確認する際に使えます。保護者は、自分の話がきちんと受け止められ、記録されていることを実感し、安心感を覚えるはずです。


事例(実話)コーナー

【実例(実話)】

多くの同僚、教室長たちの面談実例を見聞きすると、10人中9人はパンフレットの説明はしていません。
最後に、説明した資料とともに渡すことはあっても・・・または資料発送時に発送することはあっても、それが説明のためのメイン資料にはなっていないようです。

かく言う、CROSS M&A(クロスマ)のアドバイザーも「パンフレットを使わない派」です。

何故か?

例えば、全国展開している学習塾や習いごと教室の場合は、パンフレットの作成は、汎用できるように作成されているからです。

オーソドックスな内容で綺麗な写真を多用したものですから、使ったほうがいいのでは?と思われるかもしれませんが、これは現場で使ってみて、またはロールプレイングなどをやってみると、よくわかります。

ちょっと使いにくい・・・そんな声が多く寄せられます。

使えなくはないですが、地域性の部分がどうしても汎用パンフレットには盛り込まれていません。

それはある意味仕方ないことです。もし、本部とか会社が地域ごとに印刷していたら、莫大なコストがかかります。

具体的には

その都道府県独特の入試制度、大学受験の制度や仕組み、内申点や評定平均値の仕組み、中学受験の動向、学校の定期テストの概要、学校ごとに試験日程などの情報資料は独自で作成したものを使うことになります。

また、それらの地域性重視の資料を作成し、説明時に使った方がパンフレット使用よりもインパクトを与えられます。

そして数多くの実地実験とケースを分析した結果、以下のことが明確にわかりました。少々驚きの結果ですが、事実です。

①プロより素人
わかりやすく言えば、慣れ過ぎた教室長よりも不慣れな教室長のほうが結果が出ます。よって、あまりに頭でっかちになるような研修を細かくやることは、逆効果です。
必要最低限の研修にとどめ、〇〇について工夫してみてください、で終わったほうが新教室長が自分で考える時間が持てます。
営業においてもプロを育てようとせずに、その教室長の持ち味を活かしてあげたほうが良いようです。

②しゃべる量を極限まで減らたほうが好結果
これは、とても簡単です。
人は緊張すると、黙り込むか、べらべらと話し始めるかですが、後者になってしまうと拍車がかかり、言葉そのものが速射砲のように出てきてしまうので、相手が逆にストレスを感じてしまいます。
あごを引き、保護者の話を徹底して聞くようにした方が断然好結果になります。
保護者は、「自分の子供の状況を知ってほしい」のです。

しかし、中には、保護者があまり話をしない場合もあります。その際は、「はい、いいえ」で答えられる簡単な質問から入り、徐々に「今のお話しをもうちょっと具体的に教えて頂けますか?」と話しやすいような質問内容にしていくと良いでしょう。


③入試の話をしないほうが良い

これは意外に思うかもしれませんが、中学受験を考えている小4~6年、高校受験を迎える中3、(中2)、大学受験を迎える高3(高2)以外のいわゆる非受験、またはもっと大きな括りでいえば、「受験よりも今のこと」にフォーカスがあてられている保護者、生徒には入試の話はしないほうがいいです。
そもそも、そこには「まだニーズがない」のですから、相手が安心できるポイントというものが遠ざかってしまうどころか、一気に心が覚めてしまいます。

例えば、自分の車からエアコンの冷気が出なくなったので車屋さんに修理依頼をしたとします。行く場所は、行きつけの修理工場、オートバックス、スーパーオートバックスなどでしょうか。
多くの場合は電話での相談では見積もり金額などは出してくれません。「みてみないと何とも言えない」という回答でしょう。
そして、いざ約束の日に行ってみると、エアコン冷気だけを何とかしてほしかったのに、あちこち車検まがいのことをされ、タイヤが・・・電気系統が・・・という話になれば、
少々うんざりしませんか?
相手は親切で言ってくれているのかもしれません。
しかし、ユーザー側はそうは受け取らないです。

それと一緒です。

④とにかくメモしまくりが良い

こちらのサイトでも何度か書いていますが、保護者の話をメモすることが重要です。最初のうちは、聞くことに精一杯でメモが出来ない、相槌で精いっぱいになってしまう・・などでうまく出来ないかもしれません。
しかし、とても有効なので是非やってみてください。
その際、もっとたくさんのことをしゃべってほしいからと、尋問的な質問になってしまう人もいるのですが、その点は気を付けましょう。

あくまでも自然に保護者が会話してくれる流れ、つまり相手からも緊張感がとれる状態が一番いいです。
そのためには、かっこつけず、素直に言えばいいのです。

「では、はじめにお母様が今お困りのことを教えて頂けますか。細かいことも把握しておきたいので、メモさせてください」

「なるほど、小学校5年生から算数が苦手になってしまったのですね。お母様、具体的にはどんな内容が苦手かわかる範囲で教えて頂けますか」

こんな感じです。

そして、このヒヤリング方式で重要なのは、いくつかの質問で回答をお話ししてくれたら、その内容を自分の言葉でまとめて、保護者に伝えてあげるということです。

つまり、

「お母様、では今の内容をまとめると、太郎君は小5の夏ぐらいから算数が苦手になって、特に文章題とか、分数の計算が怪しいという見立てですね。そして夏休みが終わったあたりから、勉強に対しての意欲が減退してしまったということですね。

よく理解致しました。ではお母様が特にご心配されているのは、算数ということですが、他の教科についてはいかがですか?」

こんな感じです。

自分の言葉でメモをしっかりと見ながらまとめて、次の質問に向かう要領です。

⑤体験設定時に、お子さんの性格を聞くと信頼度UP

これは、ちょっとした心理における安心感をさらにUPさせる方法です。


「ところでお母様、今日お話しいただいた内容を元に体験授業を組み立てていきたいのですが、花子さんは、お母様からご覧になってどんな性格ですか?
たとえば・・とても元気だとか、ちょっと人見知りするとか・・」

すでに体験授業日程が決まっている場合はいいですが、まずは話を聞いてからというパターンの場合に、しっかりと上記の①~④に留意して話を進めていき、体験授業の設定がこの場におけるクロージングだとします。
その際の最も有効なトークがこれです。

実はこのときに、今までよりももっとセンシティブな内容が保護者から出てくることがあります。

「・・ええと実はですね、うちの子は若干、発達障害と言われているんですね」

とか
「出来れば女性講師のほうがいいかもしれません。というのは・・」

こんな話が出てくる可能性があります。

これは、保護者が心を開いてくれたから伝えてくれる内容ですので、しっかりと受け止め、メモをしながら、聞くようにしてください。

「お母様、教えて頂きありがとうございます。
実は・・・今は5年前、10年前と比較しても多くなりましたよ。全部を聞いたわけではないですが、私が懇意にしている教室には必ずどの教室にも、いらっしゃいます。
でもご安心ください。講師たちともしっかりと共有して花子さんが傷つくことがないように配慮をしてまいりますので」


このように安心の言葉を心から伝えてあげるといいでしょう。


どちらかと言うと、上記の【実例(実話)】コーナーをご覧頂ければ、なるほどと思っていただけるリアルなことがわかるとおもいますが、以下も付け加えておきます。

それは「合格実績」とか「うちは成績上がりますよトーク」についてです。

2. 合格実績は語らない。一人ひとりに合わせた「個別の指導プラン」

パンフレットに載っている有名校の合格実績は、確かに目を引くかもしれません。しかし、それはあくまで「過去の成功例」です。保護者が本当に聞きたいのは、「我が子専用の成功プラン」です。

世の中、顔を1度傾けるだけでも、とんでもない数の広告にぶち当たります。実は広告の渦の中で日々の暮らしがあるようなものです。

でも今は、昔と違って広告を鵜呑みにするひとは減っています。


・広告を信じない
・電話はでない
・訪問者が来ても出ない

当然ですね、広告の多さと相まって、SNS利用も増えて、尚且つそこには数多くの詐欺も含まれているのですから。

なぜ合格実績は「語らない」のか

合格実績が輝かしい塾はたくさんあります。しかし、保護者は「多くの生徒が成功した」という事実よりも、「自分の子どもが成功できるか」という一点に強い関心があります。合格実績は、塾の指導力が確かな証拠ではありますが、それが我が子に当てはまるかは別問題だと考えているのです。

だからこそ、合格実績を声高に語るのではなく、ヒアリングで得た情報に基づき、生徒一人ひとりの特性に合わせた「指導プラン」を提案することが何よりも重要になります。

ですが、広告の魔力とは恐ろしいもので、その言い回しとか、数字によるインパクトでコロッとなってしまう事例もまた多いです。

例えば、美容関連。

ダイエット

これは美容関連の永遠のテーマでとんでもないビッグキーワードだと言われています。ここで登場するのは、3か月で〇キロ痩せた!
ここに言葉だけじゃなくて、ビフォーアフターの写真などがあったりすると、その強烈なインパクトで、コロリです。

「どうして?これはあなたのことじゃないでしょう?事例でしょう?お金もらってる芸能人の特殊な事例でしょう?」

そう真の声が囁かれても、もはや聞く耳持たず、

「私もこれで美の追求が出来る!」と夢の中に突入するのです。

学習塾における合格実績とか成績上がる!広告は、日本全国どこでも謳っていますいます。日本全国の塾で謳っている内容を合計すると、受験で失敗する人など絶対に出ない計算になります。
そして重要なのは、

それって・・・・

100%全部、過去の話ですよね?・・ということです。
ここに気付いている保護者は最近は多いです。ですから、合格実績とか成績上がりますよ広告で、

「ハッ!」となって はい、あなたの塾に子どもを入れます!というのは、そうそうないです。

学校の特性、受験の特性や生徒状況に合わせた指導

日本の学校教育や入試制度は、非常に多様です。

  • 「A高校の定期テストは、教科書の本文から細かく出題されることが多い」
  • 「B大学の入試問題は、英語の長文読解に毎年、記述問題が含まれている」

こうした具体的な情報を、あなたの口から語ることで、保護者はテスト対策に対しての不安が払しょくされます。これは、一般的な指導方針を説明するよりもはるかに強い説得力と信頼感を生み出します。

また、

「花子さんの英語の状況を伺いますと、確かに読解も多く練習に取り入れたほうがいいのですが、単語と熟語の定期的なチェックを入れたほうがいいかもしれませんね」

このように、具体的な提案を伝えてもいいでしょう。

また、ヒアリングしていきますと、「勉強嫌い」という悩みは意外と多いです。これに対しては、「まずは、比較的得意な計算問題のチェックを兼ねて、計算分野をスピーディにチェックしていきましょう。そして小さな成功体験を積み重ねていきましょう」と具体的に提案してみてください。
「勉強嫌い」というキーワードはちょっと違ったアプローチが必要かと思います。

成績不振の原因が実は・・・「計算ミス」にあると分かれば、「毎日5分、基礎計算ドリルを続けることから始めましょう」と、実行可能な解決策を提示することができます。

こうした「具体的な解決策」こそが、保護者が最も求めているものなのです。

そして、合格実績を声高に語る必要などない理由は次に書かれています。


3. 教室の壁が語る!合格実績の最適な見せ方

では、合格実績や指導実績は全く意味がないのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。重要なのは、その「見せ方」です。面談の会話の中で語るのではなく、視覚的な情報として提示するのです。

「教室内の壁」は、あなたの塾の歴史と成果を語る、無言の営業マンです。

合格者の名前と学校名を単に並べるだけでなく、生徒が書いたメッセージや、講師とのツーショット写真、合格までのストーリーを短い文章で添えることで、掲示物には命が宿ります。

保護者は面談の前後、無意識のうちに教室の掲示物を見ています。

そこで「〇〇高校に合格した先輩は、苦手な数学を克服するために毎日自習室に通っていたんだな」といった具体的なストーリーに触れることで、「うちの子も、この塾で頑張れば、この壁に名前を貼ってもらえるかもしれない」という、前向きなイメージを抱くのです。


この具体的なイメージを抱くことができるか否かです。
言葉で補足する場面もあるかもしれませんが、やはり目で見てもらうのが一番です。目から得た情報はもっともインパクトが大きいからです。


4. 信頼を築く学習塾の営業とは?

学習塾の営業とは、単に「契約」を取ることではありません。それは、保護者との間に「信頼関係」を築くことです。

60分の面談は、その信頼を築くための最初のステップにすぎません。

こうした地道な努力が、「この塾なら、うちの子を任せられる」という確信に変わっていきます。


まとめ

学習塾の面談で本当に重視すべきは、パンフレットの説明でも、合格実績の羅列でもありません。

  1. 徹底的なヒアリングで、保護者の真の悩みを引き出すこと
  2. その悩みに対し、生徒一人ひとりに合わせた具体的な指導プランを提示すること

この2点を徹底するだけで、あなたの面談は劇的に変わり、保護者からの信頼を勝ち取ることができます。そして、教室の壁に掲げられた実績は、あなたの言葉を補強する、力強い証拠となるでしょう。

さあ、次の面談からは、ペンとメモ帳を片手に、まずは保護者の声に耳を傾けることから始めてみませんか。

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