M&Aにおける企業価値評価の指針!取引事例法(マーケットアプローチ)を徹底解説

はじめに:取引事例法とは何か?

M&A(企業の合併・買収)を検討する際、最も重要なステップの一つが、対象となる会社の価値を適切に評価することです。

企業価値評価にはいくつかの手法がありますが、その中でも取引事例法(マーケットアプローチ)は、特に中小企業のM&Aにおいて重要な役割を果たします。

取引事例法とは、過去に類似する企業のM&A取引がどのような価格で行われたかという実績データに基づき、評価対象企業の価値を算定する手法です。

市場には、同じ商品でも、売る場所や状況によって価格が大きく変動する例があります。価格というのは不思議なもので、冷静になれば高すぎる!と思えるのに、その瞬間にはそれが当然だと思えるものもあり、妙な納得感があります。

たとえば、コンビニで買う500mlのペットボトル飲料は通常200円程度ですが、砂漠のど真ん中で喉の渇きに耐えかねている人にとっては、5万円でも買いたいと思うかもしれません。

築地の場外に年末年始に行けば、丼ものが5000円とかします。普通のときなら絶対買わないけれど、年末年始のあの喧騒、雰囲気、特別感がそれを心で許し、納得するのです。

これは、その時々の状況が商品の価値を大きく左右するためです。
感覚の中にある、この商品は「このぐらいの値段だろう」というものが、シチュエーションによって揺るがされるのですが、しかし納得してしまうという不思議です。

ものの値段ひとつとってもこのようなことが日常茶飯事で起こるのですから、大きな買い物の場合は、数百万、数千万という単位での変動があるかもしれません。

M&Aにおいても同様に、企業の価値は「絶対的なもの」ではなく、その会社の将来性や買収後のシナジー効果、市場環境などによって変動します。

取引事例法は、この「相場感」を客観的なデータに基づいて把握するためのものです。

取引事例法がM&Aにもたらすメリット

取引事例法を用いることで、売り手と買い手は以下のようなメリットを享受できます。

1. 客観的で納得感のある価格算定

過去の取引実績という客観的なデータに基づいて評価するため、売り手と買い手の双方が納得しやすい価格を導き出すことができます。交渉のスタート地点となる価格設定が明確になることで、その後のプロセスをスムーズに進められます。

2. スムーズな交渉の実現

売り手は、自社の価値が客観的に見てどの程度なのかを事前に把握できるため、過剰な期待を抱くことなく、現実的な価格交渉に臨めます。一方、買い手は、相場から大きくかけ離れた価格を提示することなく、適正な価格で交渉を開始できます。これにより、無駄な駆け引きを減らし、早期の合意形成につながります。

3. 「のれん」の適正な評価

企業評価において、財務諸表上の純資産額(貸借対照表上の資産から負債を差し引いた額)だけでは計れない価値のことをのれんと呼びます。取引事例法は、この「のれん」の評価にも有効です。

たとえば、過去に類似する企業が純資産額の3倍の価格で売却されていたとします。これは、その企業のブランド力や顧客基盤、優秀な人材、技術力といった「のれん」に、純資産の2倍の価値があったと評価されたことを意味します。取引事例法は、こうした「のれん」の価値を具体的に数値化する手助けとなるのです。

評価手法概要主な適用場面
コストアプローチ会社の純資産額を基準に評価する解散・清算が前提となる場合など
インカムアプローチ将来生み出すであろう収益やキャッシュフローを基準に評価する独自の技術や将来性が重要な企業など
マーケットアプローチ市場での取引価格や類似企業の評価額を基準に評価する上場企業や取引事例が豊富な業種など


中小企業のM&Aにおける取引事例法の課題と「CROSS M&A」の強み

取引事例法は非常に有効な手法ですが、中小企業のM&Aにおいては大きな課題があります。

それは、取引事例の情報が公開されることが非常に少ないことです。特に、非上場企業同士のM&Aでは、その取引内容や価格が外部に知られることはほとんどありません。

このため、一般的な企業評価会社では、公開されているごく一部のデータや、広範な業種・地域のデータをざっくりとまとめることしかできません。

しかし、私たち「CROSS M&A」は、この課題を乗り越え、より精度の高い企業評価を可能にしています。


業界の特殊性を読み解く「CROSS M&A」独自の評価手法

一般的な評価会社が参照するデータは、主に財務諸表と、その会社が所属する「業界」や「地域」といった大枠の要素です。もちろんこれらは重要な情報ですが、これだけでは企業の真の価値を捉えきれません。

私たちは、学習塾・習い事教室という特定の分野に特化することで、一般的な評価会社にはない、より深い視点での企業評価を実現しています。

そして、学習塾・習いごと教室の運営キャリアがあり、現在も「現役」であるということです。およそ取引業者のこともよく知っていますし、学費と生徒数と講師数、そして講習実績などを見れば、総体的な売り上げ規模と次年度予測が出来ます。

業界内部をよく知っているからこそではありますが、これはかえって売り手、買い手の交渉がスムーズに進む要因になっております。

たとえば、一般的な評価では、財務データに基づいて「この学習塾は収益性が高い」と判断するかもしれません。しかし、私たちはさらに深く踏み込み、以下のようなポイントも考慮して評価を行います。

  • 地域ごとの特性:東京都心と地方の学習塾では、生徒の学力レベルやニーズ、保護者の期待値が大きく異なります。これにより、同じ収益でも価値が変わってくる場合があります。私たちは、独自のネットワークにより、地域ごとのマーケットを熟知しているため、その特殊性を踏まえた上で評価を行います。

  • 講師の質と年齢構成:学習塾の事業価値は、講師の質に大きく左右されます。ベテラン講師が多く在籍しているか、若手講師の育成は進んでいるか、といった人的資本の評価も不可欠です。また、優秀な講師が何歳くらいで、いつまで働けそうかといった観点も、将来の収益性を判断する上で重要になります。

  • カリキュラムや教材の独自性:生徒の学力向上に直結するカリキュラムや教材が、どれだけ独自性を持っているか、他社にはない強みがあるかを評価します。これは、顧客満足度やブランド力といった無形資産の評価に直結します。

  • 生徒の年齢層や学力分布:どの学年の生徒が多いのか、また進学実績や成績の向上率はどうか、といった詳細な生徒データを分析します。これにより、将来の収益をより正確に予測できます。

このように、私たちは財務データだけでなく、学習塾・習い事教室事業の「内情」を深く読み解くことで、より精度の高い企業価値評価を可能にしています。


今後の展望:より詳細なデータベース利用

上述のCROSS M&A(通称:クロスマ)独自のネットワークデータと、BATONZの支援専門家登録をしていることによる、BATONZのデータ利用により、1万件以上の簡易的な評価を含む多くのM&A評価実績が情報として得られます。

この膨大なデータに、さらに業界特有の要素(例えば学習塾であれば、講師の平均年齢、資格者の有無、生徒一人あたりの売上など)を組み込むことで、より精度の高い企業価値評価データベースを構築しています。

このデータベースが完成すれば、M&Aを検討する皆様は、以下のことが可能になります。

  • 自社の価値をより正確に把握できる
  • 交渉の「叩き台」を客観的なデータに基づいて設定できる
  • 納得のいくM&Aを実現できる可能性が高まる

私たちは、中小企業のM&Aにおいても、買い手と売り手の双方が納得できる、公正な取引が実現できるよう、日々データ収集と分析に取り組んでいます。皆様がM&Aという重要な決断をする際の、頼れるパートナーとなれるよう、今後も進化し続けます。

ご自身の学習塾や教室の価値を、専門的な視点から知りたいとお考えですか?いつでもお気軽にご相談ください。

BATONZ×CROSS M&A

学習塾・習いごと専門M&AサービスCROSS M&A(通称:クロスマ)は、業界ナンバー1の成約数を誇るBATONZの専門アドバイザーです。BATONZの私の詳細プロフィールはこちらからご確認ください。
また、弊社は、中小企業庁のM&A支援機関です。

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